月記帳


 技巧の伴わない芸術は、時として自然に敗北する



2005/10/21
 テレビをぼんやり見ていると、イベント情報は結構入って来る。
 大概、開催が明日、とか今日とか、結構ギリギリだったりするのだが、時間は自由になるのが盗人とフリーの良いところ。
 今日も今日とて「横浜トリエンナーレ」の宣伝や記事を目にし、そぞろの虫が騒ぎ出した。
 二週間ぐらい前に。
 ……前フリの意味は?
 さて、今回の『遠くへ行きたい……って訳でもないんだが』は、横浜トリエンナーレです。

 ちなみにトリエンナーレとは、イタリア語で「三年に一度」の意味で、三年一度のペースで行われる大型の国際美術展の事――と、オフィシャルホームページに書いてあった。
 「別にトルエンとは関係ない」というネタを絡めようとしたら、微妙に関係あるな、これ。

 当日、午前中からついと行って、手ごろな場所で昼飯を――と、考えていたら。
 起きたのが十時。
 出発したのが十一時過ぎ。
 図書館に寄って、横浜に到着したのが、一時前。
 予定より大分遅れたが、まあいいや。
 リオでカレーを食べた後、みなとみらい線で、元町・中華街駅へ。
 駅から降りると。
 柱が、横浜トリエンナーレの広告でラッピングしてある。
 少なくとも、駅は間違えてないな。
 間違えてないけど。
 出口どっちだ?
 矢印の一つも書いておけばいーのに。
 少し進むと、昇りエスカレーターの脇も広告があり、出口も書かれていた。
 なんか、もう、一色だな。
 エスカレーターを昇りきったところで、なんだか青いイボイボしたブースが作られていた。
 正しく、チケット売り場。
 改札の内側にあるとはねぇ。
 大人一枚1800円。安くはないが、無茶に高くもない。
 それから広告を辿るように、地上へ出ると、青い等身大コーンが道案内をしていた。
 コーンってのはあの工事用の、普通は赤いアレだ。
 どうもこの青いコーンが、マスコット(?)のようなものらしく、よくよく思い出せば、青いイボイボブースも、これを組み合わせたものだった。

 マリンタワーの脇を通り、山下公園に入ると、なんかでっかいオブジェが。
 あれ? こんなんあったっけ? でも、根本ガッチリコンクリで固めてあるし、古ぼけてるし、何か見覚えあるし――と、思って、近くに寄って見ると、やっぱり作品だった。
 中古のコンテナを四つこう、アーチ型にくっつけた代物なので、古びて見えたのだ。
 でかいな、しかし。
 ともかく、会場(正確にはメイン会場か)の埠頭に入る。
 いつもは関係者以外立入禁止っぽいとこなので、興味深い。
 しかし通路をコンテナで作っているのは、流石倉庫街というか何というか。
 会場の倉庫へは、歩くと十分ぐらいかかり、無料シャトルバスが出ているとの話だったのだが、会場までのルートにも作品が一つ二つあるので、歩く事にした。
 あの宣伝でよく見せていた、紅白縞の三角の旗が無数に連なった道だ。
 これも作品と言うだけあって、この旗が風に吹かれる様は、波のようもであり、数百メートルをずぃっと眺めるとなかなか壮観である。
 途中、倉庫で働く人たちなんかもちらちら見ながら、会場へ到着した。

 中に入ると、まずパイプを組んで作った階段が目につく。
 まあ、何か作品らしい。
 登っても良さそうだったので、登って見ると、少々揺れて、ちょい怖かった。
 会場は倉庫二つと、周辺となっており、主に現代アートというヤツが飾られている。
 導線らしい導線がないので、適当にウロウロする。
 絵画や彫刻だけでなく、映像展示や、映像機器を使った作品や、建造物そのものが作品みたいなものやら、一言で表現しづらいものが多い。
 印象に残ったものを挙げると、ipodが大量にぶら下がった一角。一つ一つは単調な音を出しているらしいのだが、立ち位置で倍音の乗り方が違ったりするのがなかなか愉快。
 ビールケースで作られた展望台(全部ではないが)というのもあった。これは普通に見晴らしが良いのが大きい。横浜の勝利。
 他に、なんか暗い部屋で、子守唄のような調子の歌が聞こえる中で、ジオラマみたいなものの上を光がうじゃうじゃ動くもの(本当に分かりづらいな)。
 電話ボックスがいくつも置かれていて、受話器を取ると「母親から息子へのメッセージ」が流れるもの。ひょっとしたら、別の電話は、違うものが流れていたのかも知れないが。
 真っ白い高い壁の隙間に入っていくと、奥で映像が流れるもの。映像はともかく、壁の圧迫感が良し。
 赤ちゃん人形をぎっしりと詰めた壁に囲まれた部屋。気色悪い。
 廃物の家具や電化製品を白っぽい泥一色で塗ったもの。廃墟になった未来世界みたいでイカス。
 一見、地面に鎖が置いてあるだけなのだが、よく見ると高い高い天井から吊るされて着地しているもの。床に顔を寄せたくなる。
 と、こんなとこだろうか。
 さして芸術を解するでもないのだが、この手のものは何となく面白く感じる。
 さほど論じる気もないのだが、あんまり既存の工業製品を使ったものは興醒める。
 何となれば、そこでは美は消え失せ、意味ばかりが現れるからだ。
 美も追究しているというのならば問うが、例えばトイレットペーパーの意味以上に形状に美を見出したとして、何故スーパーで売っている製品をそのまま使ったか。美を追究するならば、己の手で理想のトイレットペーパーを作り上げてこそだろう。それを怠るのならば、単に意味を拾った、美の抜け落ちた、ただの演説に成り果てる。
 それは、絵を描く時に、自ら納得のいく色を混色する事もせず、ただチューブから出した絵の具を、ベタベタと塗りたくる行為に等しい。意味は通じる、だが、美はない。

 一通り見終えた後は、随分と疲れていた上に、丁度シャトルバスもやって来たところだったので、帰りはバスに乗った。
 乗るほどの距離でもないのだが、どうかな、と、思ったら。
 埠頭の倉庫街(?)の中の道をぐるりと回ってくれたお陰で、中の様子がとても良く分かった。
 普段入れないところだけに、貴重であった。
 フォークリフトの荷物を積む台がやたらとあったっけなぁ。
 これから行こうと考えていて、しかも商業港の内部に興味のある人は、シャトルバスには乗るのがお勧め。十二月十八日まで開催中。



2005/10/20
 靖国神社参拝の話。
 首相は二十四時間首相であって、私人として見られる訳ないじゃん。
 中国、韓国、北朝鮮との関係を軽視する、紛争解決手段として武力を使えるようにする、愛国心とやらを教育に盛り込もうとする、軍人ばかりを祀った神社に詣でる。
 これで、他国侵略の意図がないとか言っても、信用されんぜ。

 新アニメの『BLOOD+』が、子供と見てショックだった、てな読者投稿が朝日新聞に載っていた。
 まあ、あの時間帯に流血沙汰を持って来るTBSのセンスは当然、ダメな感じで、テレビ東京でアニメの放送の仕方を十年ぐらい修行をしろ、というところだが。それはそれとして親、こら親。タイトル見て気付けよ。日本人ならある種のアニメが、子供向けに作られていない事は知っているだろうに。

 漫画『魔法先生ネギま!』を読みつつふと気付いたが、小中学生ぐらいの男子にとって、これの存在はひょっとして……我々の時代のルナ先生とかと一緒か?
 そう考えると、また趣深い。



2005/10/8
 駅前にショッピングモールの分館が出来たので、覗いてみた。
 まあ、結局見たのは漫画喫茶だけだったのだが。
 普通の個室型の漫画喫茶であったが、基本料金が三十分二百五十円、十分ごとに八〇円課金というのはどうだろう。
 新宿相場と比較するのも大人げないが……。
 ネギま四冊読んで二時間ちょいになってしまったところをみると、何か読みたいもんがある時は、三時間パックを選ぶのが普通って感じだなぁ。

 下の階では、携帯電話屋がオープニングセールをやっていた。でも、あんまり「わあ、安売りしてる、買っちゃおう」みたいな流れで電話を買わないと思うんだが、そうでもないのか。



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