思い立ったが随筆
日々思う由無事を書き連ねています。
月記帳 バックナンバー
2006
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
2007
1月
2月
3月
2007/4/22 『ひげき、かんげき』
ちょっと前の話になるが、ベスト版になっていたのでPS2版『AIR』を買ってプレイした。
いわゆる、PCエロゲー発の恋愛アドベンチャーというヤツである。
ちなみに「恋愛」と付く場合、「プレイヤーのプレイ中の選択が、主人公と他キャラとのカップリングに影響を及ぼす」と定義すると、それなりに正しい。割とラブラブしているが、プレイヤーが何をしても同じ結果にしかならないFF9などは、これに当たらない。逆に、DQ5なんかは、割とそう。アトリエシリーズ(マナ除く)は、微妙な部分はあるが友情なのでちょっと違う。スパロボは主人公選択の時点で決まるのでプレイ中とは言えないので違う。EXで、サフィーネを死なせればどうか、という考え方はあるが、カップリングと呼ぶには浅いし、そもそもシュウの本命は緑の髪の人な気がするので却下、等々。
脱線はともかく。
泣きゲーと言われているだけあり、泣かせるシナリオ展開……と言えなくもないのだが、「不幸になるように呪いをかけられた人が不幸になりましたが、すごくすごくすごく苦しんだ末に、ちょっと希望が持てました」というのは、趣味じゃないなぁ。
で、給料日後にもう一本。
PS2版『乙女はお姉様(ぼく)に恋してる』。
まあその筋の人には、特に説明する必要のない『マリアさまがみてる』を、大きな男の子向けに良い感じにパクった、PCエロゲー発、恋愛アドベンチャー。
アニメ版がえらく面白かったので、チェックしていたのだが、ベスト版が出る気配もなく、品薄で、全然値下がりしないという状況が続いたので、ついに痺れを切らせていつぞやに秋葉原に行った時に買ってしまった。5000円超、発売後1年以上経っているゲームにしては、大層な持続力。
話としては、男の主人公が女装してお嬢様学校の生徒として編入、ちやほやされるという、むしろエロゲーとかエロマンガとかの(よーするに、実写以外)古典に類するネタなのだが、コメディタッチに徹したのが功を奏した感じで、良い。
主人公は、男なのだが、容姿、体力、知力、財力、権力を備えた完璧超人のため、女装後の立ち居振る舞いも女性として上手く出来てしまっている。しかも、結構ノリノリのところもあったりするのだが、時々「はっ、僕は今何を!」という風にガーンと落ち込む。
この辺のバランスの取り方が良い。あり得ないぐらい完璧な主人公に、唯一の弛み弱みを付けるという手法は、ネギま! なんかでもやっているが(ネギま! の場合は、主人公が周囲で最年少の子供である事)、魅力的な主人公描写の有力なやり方なんだろうなぁ。
で、そういう風に主人公を描写されてしまうと、主人公のする事に嫌味がなくなる。財力にモノを言わせて事態を力業で解決しても、良し、と思えてしまう。つまり、紫苑シナリオで思った訳だ、「なるほど、彼はお伽噺の王子様の、洗練された形なのだ」と。
んな訳で、全シナリオ終えましたとさ、と。
一言言うなら、一子(幽霊)エンド――というか、シナリオが、ちょっと薄味で寂しいんだけどもねぇ。ある意味バッドエンド扱いなんだろうから仕方ないと言えば仕方ないけど、でも、せめてオマケシナリオ辺りでフォローして欲しかったなぁ。一番好感持たれそうなキャラじゃん。勿論、そう思わせようと狙ってやったんだろうけど。
で、後者の方が断然楽しめた、という話なのだが。
要するに、自分が悲劇が好きじゃないんだよねぇ。
作り事でも、可哀想な人を見るのって辛いし、後味の悪さが抜けないんだよねぇ。
2007/4/10 『遠くへ行きたい……って訳でもないんだが ぐるり日本ひとり旅』
青春18きっぷも残すところ後1回分。
今まで行った場所は、伊勢、銚子、両国。
JRしか使わないものだから、無駄に長時間列車に乗って来たような気がする。まあ、列車が嫌いって訳でもないけど――好きレベルで言うと、松屋の豚丼ぐらいかな。毎月1回ぐらいならおいしくいただけるけど、毎週だと飽きる。
んで、飽き飽きした最後の締めはどうしよう、と、ぼんやりと考えた。
考えたが、イマイチ考えがまとまらないままズルズル来てしまい、有効期限の4月10日を迎える羽目になった。
――まあ、バイト休みなので、ある程度折り込み済みではあったのだけど。
JR東日本のホームページで、ぢっと首都圏の路線図を見る。
んー、ひと回り、するか。
一度やろうと思って、延び延びになっていたひと回りを。
ふむ。
ひと回りとは、久里浜から浜金谷へ東京湾フェリーで渡り、陸路を通って帰る「お前やっぱり乗り鉄の初期症状出てるんじゃね?」という無駄な列車の乗り方である!
JR東海の路線検索で調べたところ、茅ヶ崎、大船と来て久里浜までは、1時間半もあれば着く。まあ、私鉄で行けば、それより200円以上安いし、早いんだけども、そこらは言っても詮無いこと。
そして帰りは、浜金谷から千葉、東京と来て中央線で八王子まで抜けてから海老名へ戻る、という一筆書きっぽいルートが面白い。こっちは4時間。
よじかん。
……まあ、東京の中通るんだから、途中下車して気晴らしも出来るんだけどもね。これが、東海道線の沿線とかだと本数がアレだったりなんたり、色々差し障りがあるし。
そして当日。
前日に酒を飲んだ関係で、二日酔いまでは行かないが酔い疲れ。
10時過ぎ頃に起きる。
ともかく朝飯を食べて列車の時刻を確認した。
うむ、茅ヶ崎行きの11時17分発、こいつを狙おう。
少々飛ばし気味に、海老名駅まで自転車を走らせる。
かなり急いで改札を通と、ホームに降りたと同時ぐらいに、「電車が来ます」のアナウンスがあった。
やれやれ、間に合った。
相模線に揺られながら向田邦子の掌編集『男どき 女どき』を読む。
うわー、『鮒』とか、今の時代だったら、主人公のリアクションはまず「怖がる」だよなー。父親が娘を殴るのは当たり前であるとか、女は自己主張はしないで控えめなのが良いとか、総じて昔の価値観や常識が見え隠れする。やはり今の時代の作品は、今の時代の人にしか書けないんだよな、だからモノカキは絶滅せずにしぶとく生き残っている訳で。「時代を超える名作」が、本当に時代を超えているのならどうして「現代語訳」をしなければならんのか、という辺りか。
茅ヶ崎に到着して、トイレに寄る。
これで一本電車を乗り過ごしがかな、と思ったが、乗り換え時間が9分ぐらい空いていたお陰で間に合った。
東海道線で大船へ。大船観音の頭を窓の外に見ながら、逗子行きの横須賀線に乗る。
そっか、今さらだけど、鎌倉とか通るんだな。
鎌倉と言うと、高校入試の滑り止めに鎌倉学園を受けて「随分と遠い場所だなぁ」と思ったっけ。もしも、こっちへ来ていたら、随分違った人生歩んだかも知れない。何しろ、往復3時間以上を通学に費やす訳だし。ちなみに、実際に通った厚木高校は自転車で30分、往復で1時間って事になる。
鎌倉で多めに乗客が降りて、逗子で久里浜行きに乗り換え。
確かこの列車自体は、一度横須賀までは乗った事がある。
久里浜まで行く時は、京急を使っていたけど。
程なく、久里浜駅に到着した。
野ざらし部分の多いホームに直結した改札出たらそのままお外、の地上駅。どうもこの構造の駅は、ローカルな田舎駅のイメージが強い。銚子もそうだったし、稚内や室蘭もそうだったなぁ。
さて、さっさと東京湾フェリー乗り場へ行こう。
京急久里浜駅まで行けば道は分かるから、さっさかさっさか。
歩くと、すぐの所に京急久里浜駅発見。
よし、んじゃ、こっちの方向へ、と。
京急久里浜の裏手の道を通っていると、古本屋があった。
ちょっと覗いて行くか。
『AQUA』の2巻ないかなー。
入ってみると、漫画が主体で、妙に品揃えが良い。巻が飛ばずに揃っているものが多い気がする。『夫婦な生活』の巻が飛んでない古本屋初めて見た。んー、新品の本屋じゃ、ないよな。古本価格だ。
おや、『よつばと!』も5巻まで揃ってる。いつか買おうと思って先延べにしてたけど、これは何かの縁だろう。少々荷物にはなるが、気にせずまとめて5冊購入1750円也。
あまりモタモタもしていられない、さっさかフェリー乗り場へと歩く。
途中、街路樹のソメイヨシノがほとんど散りかけて、実と新芽ばかりになっていた。緑を赤が引き立て、これはこれで綺麗なものだ。右手の花壇は、菜の花が一杯植えられており、既に花が落ちて実ばかりになっていた。再認識するけど、この花は本当に大量の実が出来るんだなぁ……地力とか凄く奪いそう。
海の近くまでやって来ると、昆布が干してあった。こんなとこでも取れるのか。してみると、生息域広いなぁ、昆布。それともワカメか?
歩くうちに、ようやくフェリー乗り場に――。
うわ、船来てる!
ヤバい、これを逃すと次は40分後だ、正直待つのはめんどい。
以前、目の前で出て行かれた事があるし。
急ぎで近くのコンビニで昼飯のおにぎりとビールを買ってから、乗り場へ駆け込む。
「そろそろ出ますよー」
と、係員の人に急かされつつ、切符を買い、乗船。
やれやれ、間に合った。
東京湾フェリーに乗ったらやる事は1つ。
まずは、空が見えるデッキに出る。
そして、適当な場所に座って。
ぼんやり座っていると、船がゆっくりと動き出す。
陸地が遠ざかってから――。
空を肴にビールを飲む。
これです。
海の真ん中、見上げれば空しか見えない。陸地では味わえない感覚というヤツ。これが好きで、ただ、船に乗るためだけにここへ来た事もあったぐらい。
でも、時期的にまだちょっと寒い。
気温はともかく、海風か、船が動いているせいか、猛烈な風が吹き付ける。
真夏がやっぱりベストかな。
ヱビスの新しい緑のヤツを飲み干し、おにぎりを開ける。
でも、風が強いせいで、ビニールが飛んで行ってしまいそうだ。
ゴミを海洋投棄なんて絶対したくないし、少々残念ではあったが、おかかおにぎりを1つ食べた時点で断念し、船室に行った。
船室(と言っても、個室ではなく、テーブルと椅子があるだけ)で、残りのおにぎり2つを食べる。ツナマヨと、塩昆布。酔った日の翌日の昼食というのは、猛烈な空腹感に襲われるので、ことのほか旨い。
船室のでっかい窓から、外を見ながら、子供の相手をしている母親の声を聞いたりするうちに、フェリーは金谷港に到着した。
金谷港付属の土産物屋では、団体客が来ていた。船に乗っていた訳ではなさそうだから、バス旅行か何かかしらん。「房総の旅、一泊二日海の幸食べ放題!」とか何とか。
土産物を買う予定は全くないので、金谷港の外へ出る。
この前に来た時とさほど変わらない風景の中、浜金谷駅へ歩く。
観光地図によると、駅前大通りがあるらしいけれど、なんかそういう賑やかなものと無縁な場所の筈なんだけどな、金谷ってとこは。
あ、干物作ってる。
土産物屋、か。
なるほどこの店を皮切りに土産物屋街が浜金谷駅まで続いて――ないね。
店らしきものはあるが、入り口のこの土産物屋以外は、すっかりシャッターが閉まっている。
閑散期だからか、それとも昔は賑やかだったのか。
数十メートルぐらい進むと、浜金谷駅が見えて来た。
んー、なんか、列車の来る音がするけど、ええと?
駅の時刻表を見る。
――14時26分発。
今、丁度14時25分ぐらい。
そして次の列車は、15時32分……って。
乗る、すぐ乗る、すっごい乗る!
乗車成功。正直、今回は運が良い。
1時間に1本とはまた、久々に見たなぁ、こんな列車。
不動産屋に数百万円の一軒家とかが売られてるも道理か。
海を見ながら、列車に揺られる。青い空と海と水平線と。
んー、やっぱり海が好きなんだろうな、自分は。山と海なら海派。雪原も好きだから、要するに広々したものが好きなのかも知れない。
そのまま列車に乗り続け、千葉へ到着。
千葉から、総武線快速で錦糸町へ行き、総武線へ乗り換えて秋葉原へ16時39分の到着となった。
ふー、ここまで来ると、大分戻って来た感じがする。
……本当は、あと同じぐらいの時間乗るんだけども。
まあ秋葉原でちょっと骨休めしよう。
当方、世に言うヲタクで二次元萌えの人なので、それ系の店に入るだけで心が落ち着くのだ。
とらのあなだの、アニメイトだのをぶらぶらと見ていると、ふと、ビルの壁に「古本市場」の文字を見つけた。あー、古本屋あったのか。ノーチェックだったなぁ。
入ってみよう。
と、ビルの6階へエレベーターで上る。
蔵書はそこそこありそうだが、巻が欠けているものが大半。
まあ、これが普通だよなー、久里浜の古本屋は何か裏ルートでも持ってるんだろうか。
そんな事を思いながら、ビルから出ると。
足元に黒いものが。
つか、小銭入れだ。
現代人的事なかれ主義で、放っておこうかとも思ったが、思い直して拾ってみた。
合皮と思しき小銭入れ。
ファスナーを開ける、と。
小銭と……鍵だな、これは。
まあ、そこそこ大事そうな物で助かった。半端にどーでも良いものだと(20円しか入ってないとか、レシートしか詰まってないとか)扱いに迷うところだ。
さて、当方衣食は足りているので、礼節は一応は心得ている。これをネコババするという選択肢はあり得ない。小銭と罪悪感では取引にもならない。
じゃ、交番へ行こう。
歩きながら考える。
しかし、秋葉原に交番ってあったっけ?
駅前に交番があるのは定番というものだが、果たしてどうだったか、思い出せないまま、駅に到着。
……やっぱり、ないな、交番。
駅の周囲を廻ったが、ない。
駅員の人にでも聞いてみるかなぁ――あ、駅の周辺地図ある。
設置されていた駅の周辺地図を確認すると、万世橋警察署を発見。
……いや、発見つーかさ。
そこの前、自分何度も何度も何度も何度も通った事あるじゃん。
いやぁ、意識しないものというのは、見えないもんだねぇ。
人間の認知能力の不思議に驚きつつも警察署へ入る。
「用事があれば、まずは受付へ行きやがれ」(意訳)
という立て札が立っていたので、ウロウロせずに受付へ。
「あー、チミ、落とし物を拾ったのだがね」
「何を拾ったんです?」
「この財布じゃよ」
「ありがとうございます、持ち主が見つかった暁にはお礼を――」
「いやいや、礼が欲しくて届けた訳ではない、本当の持ち主の所に帰ってくれればそれで良いのだよ」(ここで、背景がパァっと点描に)
まあ脚色するとそういう感じのやり取りがあり、届け物は無事に警察に引き渡し、権利放棄をしておいた。
一応中の小銭は500円ぐらいあったが、万一持ち主が見つからなかった時に、鍵や財布を渡されても困るし処分するのも嫌な感じだし、そもそも受け取りに秋葉原まで来いとか言われたら足出るし面倒だし、と、色々考えるところがあっての権利放棄である。これが、3,000円ぐらいあったら――お礼はいらんけど、持ち主が出なかった時は欲しいかな。
何しろ、この平穏で凡庸な旅に、ちょっとだけ色を添えてくれた、それだけで充分に利益は得ていると思うのだよ(ポマードで固めたチョビ髭を撫でながら)。
その後、新宿で再び途中下車して晩ご飯を食べる事にした。
のだが。
何だか気分が宜しくない。
でもめげずに、西口のどんどんへ行く。
カツ丼の食券を買って椅子に座り、出された冷たいお茶を。
一気飲みした。
あ、空腹のせいか。
水分も、ビール一本しか飲んでなかったし。
カツ丼は、しっかり煮て出汁の染みこんだカツで、いつも思うのだけれど、昔に食べたような味がした。
腹も納まり、気分も回復したので、ラストスパートとばかりに、中央線で八王子へ。
身動きし辛いラッシュの列車に辟易しつつも、八王子に到着。何となく駅蕎麦とかを食べたくなる気持ちを抑え込み、橋本へ。そこで、水分補給にポカリスエットを買ってしのぎ、海老名へと戻った。
これで完全にひと回り、一筆書き。
家に着いたのは、21時前だった。
これで、青春18きっぷには5つのスタンプが着いた訳だ。
と、言うと、何となくそのスタンプが、慕情をかき立てる各地の代物になっている印象があるかも知れないが――日帰りの出発地点は海老名なので、海老名のスタンプが4つの、名古屋が1つあるだけで、僅かに日付が旅の情報になっているに過ぎないのであった。
<出費>
・列車運賃:0円(1,600円相当)
・フェリー運賃:600円
・昼食:640円(おにぎり105*2 115*1、ヱビス・ザ・ホップ315)
・夕食:550円(カツ丼)
・ポカリスエット:150円
・駐輪場:100円
・計:1,400円(3,000円)
思い立ったが随筆 トップへ
トップへ