思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



 月記帳 バックナンバー

2006  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2007  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月
2007/9/24 『遠くへ行きたい……って訳でもないんだが 新木場に展示場を求める会:東京ゲームショウ』
 内緒にしていたのだが、当方、割とテレビゲームの類をやる。
 ここだけの話だけど(嘘 <どこからが?)。

 ファミ通だの電プレだの、その手の雑誌やら何やらを見ていると、よく見かけるのが「東京ゲームショウ」の名である。
 いわゆる家庭用ゲームの見本市(で、合ってるのかなぁ)で、専ら各メーカーの新作発表の場になっているらしい。
 ゲームの発展と学生時代がリンクしたファミッ子世代としては、一度行っておきたいなぁ、と常々思っていた。しかし、ゲームショウの名を目にする機会というのは「東京ゲームショウで、発表された云々」「東京ゲームショウで見かけたコンパニオンが云々」「東京ゲームショウで迷子の子犬に不良が笠をさしかけたところ、大晦日の晩に笠をかぶった子犬の一団がやって来て、新巻鮭や鯛など正月に必要な食物を置いて行った。但し、全部ちょっと食いかけ、犬だけに」等々、事後の話ばかりだった。
 ところが、今年は違う。東京ゲームショウが始まったとのニュースを、偶然テレビで見かけたのだ!
 ……なんかこのパターン、前もあったな。

 開催は20〜23日。20、21日は業者日なので、業者や関係者しか入れない。
 まあ拡大解釈すれば、ゲームのシナリオライターを名乗れなくもないのだが、割合に人気のイベントのようであるし、入場有料だし、いい加減な職業を騙ってもぐり込むヤツに対するチェックも厳しそうなので一般で参加する方が無難だろう。ということで、バイトのない23日の日曜日に決定した。
 さて、場所は幕張メッセだから、最寄り駅はお馴染みの海浜幕張。
 ええと、交通費は幾らだったっけなぁ(馴染んでない)。
 駅すぱーと検索をしてみる。
 海老名から海浜幕張は――代々木上原から東京メトロを使って1050円、新宿から東京経由で1100円。
 うーむ、高いなぁ。
 この東京湾沿いは、新木場までなら安いのに、そこから東西ずれると途端に高くなっていけない。いっそ、新木場に展示場があれば良いのに。
 まあないものをねだっても、道端で引っこ抜いたコスモスか何かでごまかされるのがオチなので、建設的に別のルートを考えよう。
 考える。
 考える。
 そうだ、JRで一日パスあったよな。
 JR東海のページで調べると――あった、都区内パス、730円。都区内のJR線乗り放題!
 これを使えば――往復2450円。
 あれ?
 高くなる?
 って、千葉じゃん!
 美浜区っていう、天才っぽい地名の千葉市内じゃん!
 幕張って千葉じゃん! むしろ千葉ゲームショウじゃん!
 全然都区内じゃないじゃん!
 米国文化を代表する何かが建っている土地と同じぐらい千葉じゃん!
 ……いいです、分かりました。
 東京メトロ使いますから。

 さて、行くとなると、何時頃に行くのが良いのかなぁ。
情報1:片道で2時間かかる。
情報2:開催時間は10:00〜17:00
情報3:入場料1200円
 以上総合して。

 起きた時に適当に出発する事に決定。

 早めに行くって選択は多分ないのだよ。
 例えどんなに簡単なものでも、早い者勝ちの要素がある場所には、大挙して押し寄せるのが小人。
 君子たるもの、ピークを避けゆるゆるのんびり行くべきであると、孔子も言っていた。
 なに、言ってない?
 それじゃあなた、孔子がそれを言っていないという証拠を見せて下さい(反証不能の仮説は無意味であるという顕著な例)!

 そして当日。
 前日、PS版『SDガンダム Gジェネレーション・ゼロ』をやって、微妙に寝不足だが、8:30頃に起きた。このゲーム、マップ一枚クリアして、次のマップに出撃したタイミングで終わらせるのが丁度良いのだが(セーブできるタイミングが限られている為)、出撃前の編成だけでああでもないこうでもないやっていると、3、40分すぐに経ってしまう。
 準備諸々済ませて、9時半頃に出発した。
 ついでがあったし、駐輪場代も惜しかったので、図書館に寄って本を借り直し、自転車は図書館に置きっぱなしで海老名駅へ。
 目の前で準急が出発してしまったが、気にしない気にしない。
 次に来た急行に乗った。
 代々木上原、表参道、永田町と来て、新木場へ到着したのが11時半。
 さて、ここでJRに乗り換えだが……。
 どうしようかな。
 なんかこう、人が多いんだよ。
 JR京葉線に乗り換える人が。
 これは、やっぱり。
 新木場で食事を済ませよう。

 食事に金をかける気はないので、近くの吉野家にでも入ろうかと思ったのだが、出口すぐの場所にコンビニがめり込んでいたし、ターミナルに座る場所も多かったので、何とはなしに発泡酒とおにぎり2個で済ませる事にした。値段はほとんど変わらない。
 ベンチに腰掛け、250ミリリットル缶の発泡酒を飲む。
 午前中はこれぐらいの量が適当だわな。安いし。
 それから、唐揚げおにぎりと、鮭マヨおにぎりを食べる。
 朝食をたっぷり食べたせいか、それ程腹は減っていないのだが、それなりうまい。食べられる時に食べておかないと、どうせ後で手頃な店がなくてぐったりする事になるのだ。

 食事を終え、新木場駅から京葉線に乗り込んだ。
 混んでるなぁ、列車。
 舞浜で少々減り、それから海浜幕張に到着した。
 どっと降りる客。
 うわ、やっぱりゲームショウ狙いか。
 はっきり人の流れが出来ている。
 改札から出て左へ曲がると、ゲームショウ客狙いのメイドの人がチラシを配っていた。
 流れに沿って、迷う事もなく歩く。
 何度か来た事があったのは、手前の方のホールだったけれど、今回は奥のホールらしい(どうせ迷いやしないだろうと、公式サイトの地図とかをよく見ていない)。
 ふと気づいたけれど、外国の人がちらほら見受けられる。コミケよりも比率高い気がするなぁ。
 10分ばかし歩いて、幕張メッセに到着した。
 展示場の外に、まずはずらりとSNKののぼりが立っていて、いかにもな感じ。
 間違えて別の展示会に来ている、という線はこれでなくなったな。
 案内に従って、チケット売り場へ向かう。
 チケット売り場の前にはどこも20人かそこらの列が出来ていた。
 これを多いと見るか、少ないと見るかだが、ピークを超えた時間帯にしては結構な人数だろう。
 1200円払って、ペラペラで粗末な感じのチケットを受け取り、誘導されるまま展示場の中へ。

 暗い。
 暗いところに、電光の門そして「TOKYO GAME SHOW2007」の文字が。
 派手な入り口だな。
 チケットを丸ごと渡して、中へ入る。暗い会場に、ブースが浮かび上がっている感じ。
 TVゲーム類は、明るいところでは色が綺麗に見えないからだとは思うが、なかなか無茶をする。
 コーエイだのカプコンだのコナミだのナムコだのスクエニだの、見知ったメーカーのブースが出来ており、新作ゲームの絵の付いたブースやら、ステージやら、空から吊り下げる風船やら色々。
 一つ一つのブースはでかいが、何分数が少ないせいで通路をたっぷり取ってあり、通行が滞るという事はほとんどない。
 混雑具合は、コミケ比0.6ってとこだろうか。
 ブースを一つ一つ覗いていく。
 ああ、ここはゲーム大賞の投票とかをするブースか。アマチュア部門のゲームの試遊台もある。こういうとこの投票で決めてるのか、あの大賞ってのは。
 各企業のブースでは、それぞれ工夫を凝らした感じで、ステージで踊ったり、演奏してるとこもあった。鳴り物OKなのね。
 コンパニオンのおねーさん方も、チラシ配ったり、ゲームの説明をしたり、ステージで踊ったり(恐らく服が一緒なだけで、位置づけは違うと思われるが)している。写真撮影にも応じているようで、コスプレ広場のそれと似ていると言えば似ている。
 世の常として、ヘソが出てたり、乳が強調されたりしているコンパニオン衣裳も多々ある。どこだかのコンパニオンの人は、衣装に細工があり全員に谷間が出来ていたが……流石にそれは、ある程度のボリュームがないと無理があるだろう。
 盗撮の類は良く言われる事だが、どこぞのブースでは「コンパニオンさんの写真コンテスト」みたいな事をやって矛先を逸らしていた。「顔を中心に撮って下さい」とか注意書きがあるのが、微妙に笑えなくもない。

 新作のゲームと言ってもプロモーションビデオの類が多いので、実際の内容は想像し難い。
 しかも、もっぱらWii、PS3、X360なので、PS2しかない我が身にはそれほど「これ!」というタイトルも目に付かない。
 もっとも、当方初物買いをあんまりやらない、中古中心のプレイヤーなのでそもそもお呼びでないのだろうが。
 それでもちょっと足を止めたのは、Gジェネレーション・スピリッツのプロモ。あー、閃光のハサウェイまで参戦か。ちなみに、一発変換で「線香」と出た。まあ、意味的には間違ってはいない。
 しかし、色んなブースがあるよなー。
 あそこなんか提灯付けて、お祭り風だ。
 写真の一枚も撮っておこう。
 で、どこのメーカーだ?

 ……スペランカーのアイレムでした。

 なんか、一癖あるよな、このメーカーは。

 歩いていると、ふと、日本人が通常普段着にしないタイプの衣装の人を見かけた。
 ん?
 コスプレイヤー?
 改めて目を凝らすと、あちこちにちらほらと、コスプレの人の姿が見える。
 メーカーの社員らしい人(市販品的衣装)や、単なるコスプレイヤーと思しき人が混在している気がする。
 なんだ、いるんだ。
 気づかなかったな、どうしてだろう?
 コミケなんかだと、相当目立つんだけど?
 疑問に思いつつ、隣のホールへ移る。
 一度明るい通路に出て隣りのホールへ――行くところで、疑問が氷解した。
 通路に出た途端、目立つ目立つ。暗いから、色が分からなかったんだ。
 なるほど、コスプレ衣装は色で見分けてるんだねぇ。
 ちなみに、一目でどのゲームだ、と分かったコスプレはいなかった。この辺、中古が流通するゲームと、基本的に平等に新作に触れられるテレビアニメとが違うとこだな。

 隣のホールも概ね同じ構成だったが、隅っこの方に試遊台がぎっしりと並んでいた。
 それ用のブースなのかな、と思ったのだが、よく見るとSCEのブースだった。
 考えてみれば各ブースにも試遊台はあったし、上の電光掲示のところにプレイステーションとか書いてあったし(そこで気付け)。
 SCEに限らず、試遊台は色々あり、新作が遊べるところもあるようだったが。
 どれも行列だらけ。
 行列の出来る試遊台か(行列の出来る法律の相談所とかけようとして失敗)!
 30分待ちとか、60分待ちとか、プレートが出ている。
 どれほどの期待の新作であっても、わざわざ何十分も待ってワンプレイぽっちやる気にならないなぁ(この時点で、ここへ来るべきでない人間である事が露呈している)。
 結局触ったコントローラーは、「ゲームのしくみ」みたいな展示のシステム説明用Wiiリモコンだけだった。

 一番奥のホールは、物販とキッズコーナー。
 キッズコーナーには、カメラのレンズを向けただけで、恐らく社会的に抹殺されるご時世なので、興味を持つ事すら許されない訳であるが、さて、物販は……。
 ホールに入るなり、縁日の匂いが。
 あ、食べ物の屋台がずらりと並んでる。
 そうか、物販か。
 当然、混んでる。新木場で食事しといて正解だな、やっぱし。
 他に、コンピュータ系やゲーム系学校のブースがひとかたまり出来ている。このブースは、各企業のそれと異なり、とても小さいのがぎっしり並んでいた。福祉機器展とか、水素電池展とかで見かけたのと同じサイズ。
 それから、物販という事で、ゲームメーカーのグッズ販売。
 本やら、ポスターやら、抱き枕カバーやら何やら。
 これはもう、コミケの企業スペースの縮小版みたいなもの。
 いーのかなぁ、ファミリーも来るところに、半裸の抱き枕カバーとかぶら下げてて。
 ……まあ、コミケだって、ファミリーで来る事を拒んではおらんのだから、許容範囲内なんだろうけど。そもそも、これがダメだったら、熱海秘宝館の外観はどうなるのか、という話だ。
 しかし、展示ブースよりもこういう物販の場の方が和むのは、自分だけなんかなぁ。
 あ。
 アイレムの物販だ。
 うわ、手拭いかな? ふるさと4コマ(HPで連載している4コマ漫画)の猫じゃないか、あれ。とすると。
 やっぱりあった。

 スペランカー先生のトートバック。

 うあー、こういうグッズ展開をしていたとは知らなかった。
 面白いなぁ。
 無論、買わないけど(グッズ類を買う事に対して、意味を見出せなくなった32歳)。
 こういうのは、存在する事を自分の目で確認して「うぁぁーーー」と思う事に意義があるのだ。

 スペランカー先生も確認し、何かをやり遂げた感じになったので、外に出ようとエスカレーターを上がる。
 出口のところで、再入場予定のある人の手にスタンプを捺すサービスをやっていたが、遠慮しといた。

 帰りはJR一本で新宿まで戻り、とらのあなや、トレーダーを覗いて帰った。
 トレーダーでペルソナフェスが6000円を切っていたが、今は別のゲームをやっている最中なので保留。意外とGジェネが面白いし、これが終わってもFF12があるのだ。ちなみに、今、センチネルが終わってダブルゼータの時代。

<出費>
交通費:2150円(海老名―440―代々木上原―230―新木場―380―海浜幕張―620―新宿―480―海老名)
昼食:335円(発泡酒:105円 おにぎり:115円×2)
入場料:1200円
計:3585円



2007/9/17 『ジムに乗れ!』
 ちょっと前だが、友達からDVDでガンダムの08小隊と、0083と、逆襲のシャアを借りた。
 なかなか観る機会がなかったのだが、少し前に全部観た。
 これで、ガンダム作品に関する知識の欠けた部分がかなり埋まった。
 感謝。

 で。
 逆襲のシャアは、二度ぐらい観た事のあったものだったが、改めて観てもやはり。
 クェス・パラヤがロクな娘に見えないなぁ……。
 見えないんだけど、ひょっとすると。
 設定年齢を10歳ぐらいにしたら、しっくり来るんじゃあるまいか。
 あの行動様式は、ロリキャラとか幼女キャラのそれではあるまいか。
 そういう見方で絵柄を替えたりしたら、逆に大人気になる可能性があり得る。
 まあ、トミノは観客に好かれたいと思ってパラ子を作ったんじゃないだろうけども。

 08小隊は、筋は何となく知っていたけれど、初見。
 超兵器を作って何とかしようとする男のプロジェクトX的なお話(違う)。
 熱血、友情、勝利みたいな話はなかなかではあるのだが。
 ……シロー、何の裏付けもなく強すぎだろう。過去の話はあるが、恨みの理由しかないし。
「ジオンへの怒りの力が野生のパワーを生み出し、陸戦ガンダムビーストモードに云々」
 とかの設定は確か無かった筈。いや、人乗りロボットの初代パイロットの弟と同じ名前だからか?
 まあ、コロニー生まれだし、ひょっとしたら明言されていないものの、実はニュータイプだったって事なのかも知れないけど。後日譚で、強化人間かニュータイプのジャリん子にやたら懐かれてたし。
 しかし、一兵士感を出すなら、主人公達が乗るのはジムであって欲しかったなぁ。んで、ザクとかに苦戦しつつ、急造の量産故のパーツの狂いとか、OSの不良とかを地味に直していく訳だ。戦法はケチな不意打ちだまし討ち、仕掛け罠などなど。
 そんなところに、品質管理で落ちこぼれたガンダムパーツが流れて来る。これが、ビームライフル一丁と、些末な関節部辺りのパーツ程度。
 ジムのボディでは扱い切れない火器管制システムを騙し騙し組み直し、僚機一体無駄にしてジェネレーターをエネルギーCAPのチャージャーにして、ついに巨大な敵と対峙する。
 今までさんざ手こずったザク一撃で破壊するビームの威力は、巨大なMAにも通用する。ド派手な撃ち合いで双方ガタガタになるが、仲間との連携と、手足のように馴染んだ機体への信頼が紙一重の差になって、最後の一発は敵の急所を捉える。
 ――とか、ねぇ?
 それはジムじゃなきゃ。ザクの鹵獲機でも良い。
 なんか、弱いヤツが凄く色々やって勝つ、強いヤツが圧倒的な感じで勝つ、そういう両極端なところに、血が騒ぐとは思わんかね、青年?

 そういう点では、0083は強いヤツの圧倒的感がそれなりに出ていて良かった。「突貫します!」とか。シーマ版「連邦のモビルスーツは化け物か?」(別名、固いよガンダムさん)とか。
 デンドロビウムは、もっと破壊の限りを尽くして欲しかったが、まああんまりやっちゃうと「実際に配備されている数よりも、破壊されたMSが多い」とかつっこまれるんだろうけど。
 この話一番引っかかってしまったのは、デラーズもガトーも、どう頑張ってもただのテロリストにしか見えないところ。GP02の核もだけど、コロニー落としが致命的。911テロ以降の世界では、受け容れられにくいわなぁ。
 ニナは、世間で言われる程酷いヤツという感じはせず、物語の中で居場所がなくてウロウロしていただけの印象。もっとマッドサイエンティスト方向にすれば好感を持たれたろうに。明らかに悪役の筈のシーマが、何だかんだで愛されているのと好対照と言える。



2007/9/10 『遠くへ行きたい……って訳でもないんだが 雑多! 偕楽園』
 青春18きっぷを買い、この夏は、成田山新勝寺、さいたま新都心、伊東、名古屋、と出かけ、最後の一回分をどうしよう、と、路線図を見ながら考えた。
 乗り放題の切符なので、出来るだけ遠い方がお得な感じがするのだが、はてさて。西の方は名古屋とか行ってるし、北の方は奥多摩には既に行っているし案外近いので元が取れないし、となると東の方――あ、水戸か。
 水戸と言えば……水戸光圀と、水戸納豆。
 後は、知らない。
 えーと、茨城県の県庁所在地? あれ? 茨木市ってのがあったけどあれは……大阪か。いいんだ、県庁所在地で(大変に地理に疎い)。
 近くに見所は、というと。
 偕楽園というのがあるな。
 名前だけは聞いた事がある。
 駅も近くにあるみたいだし、その辺狙って行こう。
 水戸までは、八王子から中央線で上野へ抜け、常磐線で行ける。さほど難しくはない行程と言えるが、まあ、難しい行程なんて使った事ないし。片道で4時間以上かかるので、朝は早めに出よう。

 当日、5時過ぎに目覚まし時計で起きる。
 この目覚ましの音は本当に嫌な音がする。
 引き笑いのようなでかい電子音。
 ギョッとする音。
 実に嫌いだ。
 こんな音で目が覚めたら、一日不快だ。
 誰だ、こんなの買ったの?
 ……自分だけど。
 壊れたら買い換えようと思うけど、時計なんてものは、そうそう壊れないんだよねぇ。まあ、一度踏んづけて、デジタルの文字盤にヒビが入り、時間がよく見えなくなっている状態は、「壊れている」と呼ぶべきなのかも知れないけど。
 昨日作った夏野菜カレーの残りで朝食を済ませ、出発。
 降水確率が40パーセントぐらいあるので、荷物にはなるがモンベルのレインスーツをバッグに詰め込みいざ、出発。

 元ダイエーの東側駐輪場に自転車を停め、海老名駅へ。
 このルートが一番駅に行くには楽なのだが、何故だかいつも駐輪場がガラガラ。ビナウォークばかりが混雑しているのは、何故だろう。
 JR海老名駅の改札に行くと、駅員室は開いており、呼び出しブザーを押す事もなく、日付の判を貰えた。おや、わざわざ余分なスタンプインクを拭き取る心遣いまで。珍しい。
 6:20発の八王子直通の相模線に乗り込む。
 日曜の早朝、混雑もしない。環境は快適だが、自身の体調自体が寝不足のせいでぼんやりと過ごす。
 八王子で中央線に乗り換え、上野へ。
 ここでもまたぼんやりしたり、うつらうつらしたり。
 上野で乗り換え時間が10分程度あるので、トイレに寄った後、常磐線に乗り込んだ。
 ではでは、出発!
 茨城方面は、ほとんど行く事がないよなぁ。
 前に行ったのは、つくばエクスプレスでつくば市だ。
 地図を確認すると――あー、随分水戸の方が遠い。
 そうなのか。
 居眠りを続けて少し元気になったので、『夫婦善哉』なんぞを読む。
 妻が小金を貯めるのを、夫が台無しにしまくる話。あー、こういう夫婦が「微笑ましい」とか「人間臭い」とか好意的に受け取られていたのかな、腐れた時代があったものだ。いや、作品を云々する訳じゃない、読ませる腕はあるのだからして。時代が嫌だと言っている。
 周囲の景色は田んぼがちになるが、これは首都圏から離れるとよくある光景なので、さほど珍しくはない。まあ、見える人家が一軒だけ、とかいうのは割と珍レベル高めだが。
 思い起こすと、青春18きっぷで列車に乗る場合、ほぼ確実に座れているのだが、これは一体どういう事だろう。列車というのは、本来座れる程度の乗車率で運用されているのが普通、なのだろうか。してみると、小田急線、相鉄線、山手線、そういう列車は特殊な部類なのか。それとも単に、自分が乗る時間が通勤客のそれと根本的に違うというだけか。
 列車は2時間ほどして、水戸に到着した。10:27なり。
 結構な距離には違いないが、割と最近に名古屋まで行っているので、さほどダメージはない。名古屋行く場合は、これに2時間プラスされるからなぁ。

 水戸駅からまずは外に出ると!
 助さん、格さん、御老公像発見!
 うあー、ベタベタだぁ……。
 ベタベタなところで、納豆ののぼりや、看板、横断幕なんかがいっぱい――は、ないな。
 駅前を少し歩くと、居酒屋兼食べ物屋で、ネバネバ丼とかを出している程度。
 納豆の町のイメージを払拭しようとし始めている?
 あんた、水戸から納豆取ったら何が残るってんですか(途轍もなく無礼な言い草)!
 ……て、と。
 錯乱したところで、食事をしたいな。
 朝が早かったし、行動の前に腹ごしらえをしないと、疲労がどんと出るのだ。
 駅前に松屋はあるのだが、今月はチムニーの配当が入ったので、それほど金銭的に足りない、という事がない。それに、ここしばらく取材の食事で松屋ばかり使っていたので、食傷気味である。
 なんかないかなー。
 吉野家、サイゼリヤ、その他。
 んー、なんか、こう、これ、って感じのものがないな。
 名物ものも、正直高いだけだろうしなー。
 そもそも、店がまばらな印象が。
 これは、コンビニでおにぎりでも買って、安く上げるかなぁ。
 等と思いつつ歩いていると、鳥居が。
 「東照宮」とある。
 あ、そうだった、水戸にも東照宮があるんだよな。
 事前に調べた時に、そんなのを見かけた気がする。
 なんだ、こんなに近くにあったのか。
 道を渡って、門前の参道である宮下銀座に入る。
 ……のだが、なんだろうなぁ、あまり営業してないってのは。
 お昼か夕方にならないと開かないのか、それとも、それとも。

 日曜日は営業しないのか?

 言いたかないけど、それ、相当な田舎ルールだぞ。

 坂を少し登って、東照宮を見る。
 日光のそれを想像してはいけないが、赤をベースにした新しめの社。そこらのしょぼくれた神社よりは色鮮やか。日光のそれを想像してはいけないが。
 野口雨情の碑が建っていたが、書かれていた詩には見覚えがなかった。
 ガラス窓の付いた宝物殿に、幕末頃の戦車が展示されているらしかった。らしかった、というのは、中が暗くてほとんど見えなかったから。スダレの中を覗くのと変わらん。
 広さはどうという事もなく、校庭一枚分にもならない。

 東照宮を後にし、ひとまず偕楽園方向へ歩く事にする。
 食事は、もう少し探してみよう。
 歩いていると、どんどんひとけのない道に。
 大きい道と交差しているが、これでは……あ、上の道に登れる階段あった、良かった良かった。
 登ると、橋の上に出た。
 おっ、湖に森的なものが。
 これか? 偕楽園?
 橋を渡り、近付いてみる。
 入り口付近に案内図があった。
 えーと、ここは千波公園で、偕楽園は……北側に隣接している。
 よっしゃ、じゃあ、ここを横切れば良いんだ。
 まずは腹ごしらえ。
 近くのローソンで、おにぎりと発泡酒を買い、水辺の木陰にあるベンチに座る。
 木陰。
 そう、木陰。
 えーと。
 この木は、桜、かな?
 ぢっと葉を見る。
 虫食いの痕が。
 更にぢっと見る。
 ……一応、いない、みたいだが。
 桜の木陰にベンチを設置するというのは、良くないと思います。
 大変良くないと思います。
 ダメ出しをしたところで、発泡酒を飲む。アサヒの本生クリアブラック、黒ビール系。汗はかいている筈なのだが、まだ朝に属する時間のせいかあんまり旨くない。うむ。
 気を取り直して、おにぎりを食べる。ツナマヨ、わかめ、辛子高菜、ツナマヨ。んまい。
 食べていると。
 近くの水草が切れたところから、鴨が上がって来た。
 何羽も。
 手を伸ばせば届く距離を、のたのた歩いている。なんか、凄く人慣れしているぞ?
 餌代わりに飯のひとつまみも投げてみたくなったが、勿体ないし、こういうものに餌付けするのは無責任な行為であるから、止めておいた。
 改めて水面に目を向けると、鴨だけではなく、黒鳥も泳いでいる。
 へー、黒鳥なんてあんまり見ないなぁ。
 食事を終え、偕楽園に向けて、千波湖を周回する形で作られている道を歩く。
 すると、いるいる。
 鴨に黒鳥に鳩。
 鳩に至っては、足のすぐ側を通って行く。
 警戒心の薄い生物達だな、しかし。
 湖にスワンボートが出てるけど、白鳥は――いた。
 結構普通に、いっぱいいるぞ。
 なんだここ?
 こういうもんだっけ? 白鳥とかって? それとも別の種類の何かなのか? 少なくとも、これだけいると、別に有難くないな。
 鳥を放置して、湖の水に目をやる。

 うわー、鮮やかな抹茶色!

 ……アオコでいっぱいだぁ。
 確かに、近くの川が緑色してたよ。
 今日は相当暑いけど、絶対入りたくないな。

 湖を半周したところで、スワンボートの乗り場や、土産物屋のある場所に到着した。
 独りで来ているし、スワンボートに乗るという選択肢はあり得ないが、それ以上にあのアオコを見て、どうして船に乗る気になる人がいるんだろう……怖いもの見たさか。
 白鳥にあやかってか何か、スワンボートしかなく、普通のオールのボートがない。偏ってるなぁ。
 湖から反対側に目を向けると、水戸光圀像が。

 でかい!

 平等院の本尊ぐらいある(分かり難い)。
 でかい。
 そうか、大人物とは聞いていたが、これ程か(全く違う)。

 見るべきは見終わったので、偕楽園へ続く橋を渡る事にする。
 お、橋の下に線路と、偕楽園駅が見える。
 見える……けど。
 誰一人人間がいない。
 あー、確かに書いてあったけど、「偕楽園駅(臨時)」って。
 でも、駅だよなぁ?
 それに、これなかったら、偕楽園まで来た人どうやって帰らせるのさ? 結構距離あったよ?
 降りて近くまで行ってみると、やはり立入禁止の標識が出ていた。
 一体いつ使われるんだ、この駅?
 偕楽園が極端に混雑する時期って?
 ウィキで調べたところ、行楽時期とある。
 夏休み中だったら、使えたんだろうか……しかしそれも怪しい気がしなくもない。

 駅を後にし、常磐神社の階段を上がり、偕楽園へ入った。
 おお、延々続く梅林。
 花の時期は見事なのか、それとも鬱陶しいのか。
 三大名園と言われるだけの事はある感じだ。
 奥へ進み、土産物屋の前を通過して脇へ入ると。
 今度は杉林。
 ふうむ、またがらりと趣が違うな。
 進むと、次に雑木林のような雑多な木々。
 それから、庭園。
 一つ上がって、孟宗竹林。
 統一性ねーーー!
 ……いや、この広さが全部同じだったら飽きる、というかそれはただの畑だ。
 はー、江戸時代に作られたものとは言え、人工感が漂うな。やはりここは森でも林でもなく、庭園なんだなぁ。
 しかし「偕楽園」というのは、下々の者も含めてみんなで楽しめる園というような意味らしいのだが、実際のところどのように楽しんだんだろう。
 いやさ、梅林の下で酒盛りとかバーベキューとかしたら楽しげだなぁ、とは思う。竹林でタケノコ掘りとかやったら面白げだ。でも、そういう庶民的な楽しみ方をする場ではなかったんじゃなかろーか、所詮は権力者の独りよがりになってんじゃねーかなぁ、とか、ちょっと思った。
 さて、いい加減疲れて来たし、駅へ戻ろう。
 水戸駅からは随分離れてしまっているし、偕楽園駅はデクノボウだ、となると、赤塚駅が近そうなのだが。
 それでいいのか? それでいいのだ。
 まずは、偕楽園の西から出る場所があるかどうかだが……。
 案内図がイマイチなんだよな、ここ。
 ひとまず西沿いに歩いていると、出口の門を発見した。

 よし、住宅地に出たぞ。
 後は西へ西へと歩けば良いだけだ。
 ――ん、県立歴史館って敷地にぶつかってしまった。
 このまま線路沿いに行きたいだけなんだけどなぁ。
 まあ、抜けられ……ずにドツボにはまりそうな気がするけど、行ってみよう。
 玩具のピストルを犬がくわえて離さない時は、逆に「あげちゃってもいいさ」と考える。溺れそうになったら、逆に底まで沈んでみる。ジョースター家の教えである。
 蓮池の前を通り過ぎ、奥へと進む。
 あー、やっぱりフェンスがある。
 門が閉まっててやっぱり――あ、通用門が開いてて、先へ進める。
 よし、行こう。
 なんか、轍はあるけど舗装道路じゃないけど。
 脇は草むらだけど。
 道が隠れてしまいそうに思えて仕方がないけど。
 行ってみよう。
 左手に線路は見える。方向は間違っていない筈だ。

 進むうちに、どんどん草原の中の一本道という風情になっていく。
 ただの草原ではなく、湿地帯のようなものもある様子。
 でもまあ、道はある。
 それに、それほど人里離れた、という感じでもない。
 ぼちぼち進むうちに、住宅地が近付いて来た。
 なんか、断崖みたいに見えなくもないけど……あ、良かった、道が繋がっている。
 振り返ってみると。
 一面の草むら。
 うわー、こういう風景が手近にあるんだな、この辺は。
 アスファルトの道に辿り着いたので、一路赤塚駅へ。
 要は線路沿いに西へ西へ。
 西へ……。
 あ、また行き止まり。
 北へ抜けるか。
 国道50号線?
 これで問題ない、のかな?
 うーむ、案内図だとすぐのような印象だったんだが、あれは略図の縮尺歪みだったんだろうか。
 ん、結構距離あるな。
 あっ、バス停だ。
 ええと、停車する場所を確認すると、赤塚駅が……あった。よし、距離は分からんけど、このバス路線沿いだ。
 歩く。
 歩く。
 歩く。
 うー、相当歩いてる気がする。
 水分補給にコンビニでも入るか。
 ……向こうの車線にはあるのに、こっちにないぞ。
 せめて自販機でも……。
 ねえ!
 全然!
 んなバカな。
 人家のある国道沿いに歩いて、一つも自販機がないって、あーた。
 暑さにやられつつも、ようやく「赤塚駅」の道路案内を見つけた。
 のと同時に、酒屋の脇に自販機が何台も。

 ……まばらに配置すれば良いのに。

 アクエリアスの500ミリリットルボトルを買おうとしたけれど、売り切れだったので、300ミリリットル缶を買った。
 ふぅ。
 それから程なく、赤塚駅に到着した。
 ホームへ降り、時刻を確認すると14:10発の後は、14:37発だとか。
 丁度良いタイミングで、14:10発がやって来た。
 乗り込んでみると。
 小山駅行き。
 友部駅で降りる事になった。14:20。
 友部駅で上野行きに待ち合わせかな? かな? 次の列車は……。

「上野行き:14:46発」

 同じだ! 赤塚駅で待ってるのと同じだ!
 どうして、1時間に3本しかない列車のうちの1本に、こんなのを仕込んでおくのか……。
 仕方がないので、友部駅で改札を出て時間をつぶす。
 駅前らしい愛嬌のあるものは何もないので、駅の写真を少し撮って、後は駅コンビニで氷結果汁のグレープフルーツと、ポカリスエットのイオンウォーターを買い、飲みつつ時間を潰した。
 列車に乗り込み、揺られること100分超、ようやく上野駅に到着した。
 その後、秋葉原をぶらぶらと歩いた。いつになく混んでいる気がしたが、まあ、日曜ならあんなものか。それとも、青春18きっぷを残した連中が底上げしていたのか?
 新宿まで戻った時点で、どんどんでカツ丼を食べ、八王子へ抜けて帰った。
 これにて、青春18きっぷに引導が渡せた訳である。

 あー、結局、雨は降らなかったなぁ。
 まあ、雨具は晴天のお守りみたいなとこあるからな。

<費用>
交通費:2300円(青春18きっぷ 1回分)
昼食:577円(おにぎり105*3、110、アサヒ本生152)
飲み物:415円(アクエリアス120、ポカリスエット147、氷結果汁148)
夕食:550円(カツ丼)
駐輪料金:100円
計:3942円




トップへ