思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2007/10/22 『往生際は悪い』
 講談社『小説現代』十一月号にて、拙作『平和ボケ』掲載。ご用とお急ぎでない方は、ご一読を。目次見ないと見つけにくいので。
 コバルトには比較的コンスタントに掲載されていたが、こいつは載らなかった。いやー、載らなかった。
 投稿記録を確認すると、87ヶ月投稿とある。一回当たりの郵送料が80円ないしは120円。封筒代諸々ひっくるめて、平均150円で計算してみると、13,050円。掲載謝礼2万なので、元は取れてる。うむ。
 掲載率は辛うじて1パーセント超、と。
 まあともかく、載る事は分かった。自分のショートショートは、コバルト以外では全く通用しない、という訳でもない事は分かった。後は、確率を上げるだけである。こちとら往生際は悪いのである。


『とりあえず、みとけ』

 『みなみけ』がアニメになったので、観てみた。
 ――いやー、面白いわ、これ。今期では一番。
 割と原作に忠実なイメージだ。元々、線がすっきりした絵なので、下手なアレンジを入れると画面がうるさくなりかねない。作り方としては正解な感じ。
 カナの傍若無人っぷりも動きが付いて一層迷惑な感じだし、オープニング・エンディングのテロップにチアキを起用するのも適材と言える。次回が楽しみになる一作。
 放送時間がちょこまか動かないのも良い。これ、録画で観るしかない深夜枠には最重要な事なのだが――イマイチ、理解している局が少ない。
 お陰で、カイジは予約外しました。ええ、外しましたとも。視聴者を舐めるな、と。



2007/10/9 『遠くへ行きたい……って訳でもないんだが 帝国の切り札探訪:お台場』
 国際福祉機器展が、今年も開かれるという情報を掴んだ――まあ介護施設にいると、当たり前にポスターなんか貼られるので、気づかない方がおかしい訳だが。
 少し迷ったが、電池の展示会や、質流れフェア、万博なんかよりは面白い展示会だし、初めてではないけれど見物に行く事に決めた。
 えーと、公式サイトを確認しておいて、と。
 場所は相変わらずのビッグサイト。あー、意識してなかったけど、中は撮影禁止なのね。
 んー、この辺が社会的なノーマライゼーションが進んでないとこなのかも知れないなぁ。

 そして前日に、ふと考えた。

 どうせだから、ついでにどっか初めてなところに行ってみようじゃないか、と。
 何しろ、今月は祖母の葬式に香典、親戚の結婚式に祝電と、想定外の出費がでんでんあったので、あまり余裕がないのだ。ついでで済ませられるものは済ましておきたい。
 そもそも、お台場近辺は、ほとんどビッグサイトに行って帰るという動きしかしていない。
 よし、だったら、お台場を徹底的に見物――する程に余力はない(観光地は一日一箇所、観光名所は半日に一箇所にしましょう。疲れるから)と思われるので、ひとまずお台場でかなり有名なフジテレビに目星を付けた。
 交通費は、結構かかるが、ここは一つ旅慣れたところで交通費が安くなる方法を探してみる。
 と、「お台場・有明ぐるりきっぷ」という900円の一日乗車券があった。りんかい線、ゆりかもめ、水上バスが乗り放題の切符。
 国際展示場を往復するだけで640円、ゆりかもめで行って帰ってで360円はかかるのだから、お手頃お手頃。

 当日。
 細々とした事を片付け、出発したのは十時前だった。
 横浜、大井町と来て、りんかい線の切符売り場。自動券売機には、一日券が出てないので、窓口へ。
「すみません、一日券下さい」
「700円のですか?」
「いえ、900円のです」
 りんかい線限定の切符が、700円であったわな、確かに。
 しかし、一日券というのは値段設定が絶妙だよなぁ。往復するより、ほんのちょっぴりだけ高い。元々、元は取れる計画で買うが、実際に使ってみるとそんなにイメージほど得をしていなかったりする。実際に買わなければ、降りる事がないんじゃないか、なんて駅で降りたりしてるだけだったりとか。
 テレカのような一日券を受け取り、自動改札を通り、列車に乗り込む。
 フジテレビのりんかい線最寄り駅は、東京テレポートだな。
 テレポートという響きから、瞬間移動と関わりがありそうなのだが、ウィキで調べてみても、よく分からなかった。
 りんかい線に揺られ、間もなく東京テレポートに到着した。

 出口は、フジテレビ方面――こっちか。もう一方の出口は、パレットタウン方面だそうで、要するにお台場の向こうとこっち、両方に行ける感じ。やっぱり結構狭いな。
 何やら金属のこすれるような異音のするエスカレーターをのぼって外に出ると。
 おっ、向こうに見える、丸い物体の付いた建物は、かの有名なフジテレビ社屋!

 ……でかい。
 これだけでかいと、和田アキコいみねーな(テレビ局だけに、芸能人とかけたギャグ。元ネタはあずまきよひこだが、それを説明しなければいけない人間に説明する意味は全くない)。
 ううむ、映像で見る時には、画面に全景入れられてるせいで、なんか十階建てぐらいの建物に見えたんだが、実際にはやたらでかくて威圧感がある。なんだ、こんなにでかい代物なのか。
 近くまで寄って、通用口のような入り口から中へ入った。
 直通エレベーターで七階の屋上庭園へ。
 屋上庭園に出ると。
 ……あの、全然屋上じゃないんですけど。
 上ーーーの方に、丸い物体が見えるし、中間ですらない。
 屋上庭園には、土産物屋とレストランへの入り口と、上へのエレベーター、下へのエスカレーターがあった。それと、オプションとして、学生服の集団があちこちにいる。
 修学旅行の人気スポットになってるんだな。
 通常の観光地は、誰かが楽しくて、誰かが楽しくないって事があろうけれど、テレビ局の場合はまあ、余程のポリシーでもない限り、一つや二つ贔屓の番組はあって、見て面白い箇所もあろう。最大多数の最大幸福を追求すべき団体行動には適切と言える。少なくとも、ビッグサイトを見て、「おー、ここが有名なコミケ会場!」みたいな反応をするヤツらばかりの班よりは多数派だろう。
 そこかしこに、青い犬のマスコットがあるが、笑う犬の子のラフ君とか言うらしい。あんまり馴染みがないんだが、まあ思い起こせば他の局でも印象的なマスコットなんてのはないような……ああ、日テレの豚みたいなのは覚えてるな。

 フジテレビ本社と言えば、「はちたま」こと、丸い物体である。
 変形したときの顔の部分になるとか、毒電波を発しているとか、脱出装置になっているとか、視聴率によって大きさが常に変化するとか、様々な憶測が飛び交っているが、百聞は一見に如かず、いざ、行ってみよう。
 入場チケットを屋外チケット売り場で500円で購入した。
 何となくテレビ局的な感じのラフな格好と微妙な腰の低さのある案内係の人が、エレベーターへ案内してくれた。
 エレベーターが動きはじめる。
 ん。
 窓ないんだなぁ。
 こういう高いところに上るエレベーターには、窓が付き物と思ってたけど。
 あー、でも思い起こすと、そういうのは塔だけだったか。ランドマークタワーのエレベーターとか、窓なかった気がするしな。
 程なく、エレベーターは二十五階に到着した。
 高いな、しかし。
 エレベーターから外に出ると、窓から丸い物体の一部が!
 おおっ。
 貼り合わせた感のある外装と溝、これは。

 帝国の切り札、デス・スターさんじゃありませんか!

 なるほど、そうだったか。
 丸い物体はデス・スターでした。
 先へ進むと、展望台になっており、有料望遠鏡が置かれ、それから、土産物屋と、スタジオが一つ設えてあった。
 んーと、とすると、これの存在意義は、スタジオって事で良いのかな?
 まさか、観光名所にすべく作った訳は――いや、まあ日本人全員来ると500億円、世界中の人が来ると3兆円ぐらい儲かるから、観光名所としての価値が全くない訳でもないけど。
 スタジオがあるせいで、展望台自体は狭く、大して見る場所もないので、さっさか降りた。途中、木村拓哉の『ヒーロー』絡みの展示があったので、ざっくり眺めた。あー、なんか警察とかそっち絡みの話なのね、これ。パイロットの話って何だっけ……グッドラックか。ごっちゃにしてた。

 エレベーターを降り、屋上庭園から土産物屋に入ってみる。
 様々な番組絡み、お台場絡みの土産物があるが、これと言って目を惹くものもなし。
 エスカレーターで下の階へ降りると、途中のところでスタジオを上から見学できるという「スタジオプロムナード」があったので入る。
 各番組にまつわる展示が並ぶ。
 コニーちゃんと一緒に写真撮影とか、合成写真とかのスペースがあり、修学旅行生がたむろしていた。その前を通り過ぎ、奥へ行ってみると、何やら写真の展示が。
 んー?
 おお!
 ガチャピン師匠の勇姿ではありませんか!
 バイクに乗ったり鞍馬をやったり、様々なチャレンジをしている写真がずらり。凄ぇや、ガチャピン師匠! 手に付いてるイボはエネルギーボールなんだね!
 他は、様々な番組で使用した物品やそのレプリカと、出演者マネキンとセットを模したジオラマのようなものだった。そうそう、ごきげんようのサイコロの本物だかレプリカだか分からないものも、透明なケースの中に展示されていた。
 スタジオは、見学窓が天井の照明と同じ高さにあるので、かなり遠くになってしまう上に、収録中のところもなかったが、「こういうところにセットを作るのか」なんてのは見えて、興味深い。
 ざっくりと見終わってから、外に出て再びエスカレーターを下がり、一階に到着した。
 ここが、正式な入り口って感じだな。
 中に入ってみる。
 喫茶店と、土産物屋と、サザエさんのお店と、ローソン。
 昼飯がてら、何か食べるかなぁ、と思いつつ、ローソンを覗いてみる。
 モニタと椅子が何故か店内に置かれ、ドラマだか劇場映画だかの宣伝をしていたが、それはスルーして、品物を確認。
 フジテレビならではのお弁当とかおにぎりとかは。
 ――ないね。
 土産物は何点か置いてあるが、いわゆるお弁当類には特別なものはなかった。
 どちらかというと社員用の側面が強いようで、やたらラフな格好をした人々が何人も買い物をしていた。そもそも、店を出てすぐそこのところに、関係者用の階段があり、入出証みたいなものチェックしてたっけ。
 ローソンはスルーしたが、お昼時でお腹が減っているのは確か。
 かといって、バカ高いものを買ったり喰ったりする気にもならない。
 で、サザエさんのお店を見ると、サザエさんソフトクリームと、サザエさん焼きを売っていた。
 当方いい大人なのでソフトクリームは論外として(論理的に繋がっていない気がする)、サザエさん焼きを一つぐらい買ってみるか。
 ええと、各キャラクタ毎に中身が違うのだな。
 サザエさんだけ二通り。
 一番安いのは、150円牛乳クリームのタマ焼き。

 ……タマ焼き。

 何となく鶴光辺りが食い付きそうな、ややこしい響きな気がするが、そういう名前なので仕方がない。
 サンプル写真を指さしながら、レジの娘さんに注文する。
「タマ焼きお願いします」
「タマちゃんですね!」
 ちょいと娘さん、よく聞けや。
 たまちゃんでは、別キャラでしょうが! 三十分前のキャラでしょうが!
 大体、タマがタマちゃんと呼ばれる場面が、ありましたか? え?
 ――商品のネーミングには気を付けろ、という主題。

 タマ焼きを無事に受け取り、椅子に腰掛ける。
 サザエさん一家の顔がプリントされた包み紙に、温かいタマ焼きが入れてある。
 中から出すと、今川焼き的な形だが、表面にアニメ版のタマの顔の絵が焼き付いている。
 再現性を高いと見るか低いと見るか、ともかく、耳の部分は出っ張っている。
 いつまで見ていても飽きないという程の形でもないので、ひとかじり。
 甘さ控えめの白いクリーム。生地はパリッとしているというよりも、ふんわりしている。なかなか旨い。もっとも、涼感を度外視するならば、温かい食物というのは概ね、冷たい食物の五割り増し旨く感じるものであるが。

 小腹を落ち着けたところで、フジテレビを後にし、ゆりかもめの台場駅へ。
 だいば、というと、ハーロックを思い出すんだが、皆さんはどう思うか。
 すぐさまやって来たゆりかもめに揺られ、船の科学館へ。
 ――近いな、船の科学館。
 船の科学館は、外観がそのまま船の形をしている科学館である。
 確か、ここは幼少期、一度来た事があるような気がする。
 ので、カウントにならないが、まあ折角一日パスなので、覗くだけ覗いてみる。
 入り口前に「船の科学館」の文字の入ったプレート――と、「笹川良一」のサイン。
 奥へ進むと、未来へ視線を向ける子供の像――を、おんぶしたりなんたりしている笹川良一の像。
 裏へ回ると、水の素晴らしさを称える――笹川良一の詩。
 その傍らには、母らしき人物をおぶる――笹川良一の像。
 ……笹川良一記念館だった様子。
 尚、入場料が700円かかるので、入りはしなかった。ちなみに、唯一入ったロビーには、シャンデリア的な照明がぶら下がっていた。
 まあ、つくづくなんかありそうな人だよなぁ。

 船の科学館の次は、パレットタウン最寄りの青海に向かった。
 ここから、いっちょ水上バスに乗って、国際展示場まで行こうという計画。
 ゆりかもめが青海に到着した。
「あおみー、あおみー」
 ……ん、あおみ?
 あー、さんずいか。
 木偏かと思ってた。
 まあ、それじゃあ別の駅名とかぶるしな。
 駅のすぐ近くにある船着き場へ向かう。
 しかし。
 近くまで来た時には、もう船は出発した後だった。
 後一歩ってとこだったのに……。
 古びたチケット売り場に掲示されている時刻表を確認する。
 ええと、今が14時過ぎだけど……。
「14:55」
 諦め決定。
 船の本数ってのはそりゃあ少ないもんだけどさぁ。あんまりだなぁ。
 駅に戻って、向かいのパレットタウンへ。
 まあなんつーか、商店街の類。
 埼玉新都心の近くにあったヤツに似てるな。
 入ってすぐのところに、トヨタのショールームがあるので、覗いてみる。
 だだっ広いスペースに、立体的にコースが作ってあって、無人自動車がのんびり走ってる。
 でもその他は別に見るべきものはないな。車が並んでるだけ。当方、博物的価値ないしは飛行能力、潜水能力等のない自動車には興味湧かないタイプの人なので、さっさと外に出る。
 外に出ると、階下の広場でやたら高くまで上がるトランポリンをやっている人がいた。
 ワンプレイ1000円、サポートにスタッフが付いているが、連続バンジージャンプみたいで、実に怖そうだ。
 カメラで撮影していたから、案外何かのテレビ番組か、私的な映画撮影だったのかも知れない。
 その後、誰も客は来ていなかったが、休みの日だったら賑わったりするんだろうか。修学旅行生がやってたとしたら、四割方いじめの構造かも知れん。

 それから、素直にゆりかもめに乗り、国際展示場の国際福祉機器展へ向かった。
 手続きを済ませ、中に入ると、相変わらずの人混み。
 様々なものをざっくりと眺めていると、ふと、セコムのブースで実演をしている道具に目が留まった。
 顎で操作するタイプの、マジックハンドのような食事介助機。
 操作して目標に狙いを定めると、掴んで、登録済みの口の位置まで持って来てくれる。かなり精密な動きもしており、大変に素晴らしい感じだ。
 あまり経験のない人は「ロボットに介助されるなんて」云々思いがちだが、それは大いなる勘違いというもの。
 どんなに「暖かい介護」も、「自立」と比較すれば利便性、経済性、そして何より自尊心を損なう。
 人との触れ合いが必要ならば、それは別の場面を設ければ良いのであって、敢えて身体介護という人間関係が非対等な場面で兼用させる必要はない。
 そんな訳で、当方、最先端技術には大変に期待をする者の一人である。
 今回、この介助機の他も含め、先端技術を集めたステージが設けられていた。
 雑踏ノイズに惑わされず音声認識で動く車椅子、筋肉の電流を読み取って動く義手、それから、出ました、パワーアシストスーツ!
 機械的にサポートして、介助者の力以上のものを持ち上げたり動かしたり出来るという、パワードスーツとか、強化服とか、モビルスーツとか、そういう系譜の大元となり得るものである。
 まだ、コードがわさわさ出ているし、エアで動く蛇腹も直結だったり、実用段階とは言い難いが、それでも、かなりコンパクトにまとまって来ており、来年にはどれほど発展しているのか興味深いところである。

 一通り見物した後、近くのコンビニでおにぎりと金麦を買って食べ、横浜に寄ってから帰った。
 やっぱりタマ焼き一つでは足りんわなぁ。

<出費>
交通費:(海老名―300―横浜―280―大井町―260―東京テレポート 台場―180―船の科学館―180―青海―180―国際展示場正門 国際展示場―320―大井町―280―横浜―300―海老名)
   :2060円 = 1160 + 900
入場料:500円
タマ焼き:150円
昼食:345円(金麦135円、ツナマヨおにぎり105円、鮭おにぎり105円)
計:3055円




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