思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



 月記帳 バックナンバー

2006  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2007  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月
2007/12/22 『強化してみた』

 何か仕掛けがあると中毒者が出るかも、というコメントに気を良くし、仕掛けをしてみた。
 ……耳とか、尻尾とか。
 古典的だね、やり方がどうも。
 でも、古典は通用するからこそ今も残っているのだと思いたい。
 どういう評価になるかは、後の歴史家が決める事。


『遠くへ行きたい……って訳でもないんだが 番外編 つりー目当てで湖へ』
 12月は、様々な場所でクリスマスイベントや、装飾が行われる。
 神奈川県に住んでいると、よく耳にするのが、クリスマスツリーの話である。
 すなわち、清川村宮ヶ瀬湖の、大きなクリスマスツリーの話。
 関東近辺の人でないとあまりピンと来ないかも知れないが、宮ヶ瀬ダムは自分が物心付いた頃にはまだなかった新しいダムで、小学校の社会の教科書でも触れられていた。そして、村の一部が水没するとか、「○○の地域は、ダム工事の関係で転居して来た人が集まってるんだよ」とか、そういう話が何となく耳に入っている、自分の中で最も身近なダムである。
 で、そのダムによって出来た宮ヶ瀬湖の湖畔で毎年、三十メートルぐらいある自然の樹をクリスマスツリーにするのだ。
 興味は湧かないでもなかった。
 が、しかし。
 正直行くのが面倒な場所である。
 一応バスは通っているのだが、バスはあまり好きではない。経由が色々ある割には案内表示もはっきりしていないし、料金は降りる時に急いで払わなければいけないし(都会のバスはともかく)、その関係で降車に時間がかかるし、本数は少ないし時間はずれるし、エンジンの不快な振動があるし、排気ガス臭いし、その割には移動距離当たりの値段は高いし、と。
 ――まあ鉄道と比べるのが間違っているのだが。
 そんな訳で、行くなら自転車で遠乗りがてらかな、と思っていたのだが、自分の自転車は安物で嫌な感じにガタが来ている。自転車の長距離移動で一番恐ろしいのが「壊れる事」であるから、これは致命的で、結局足が遠のいていたのだが。
 この度、誕生日プレゼントという名目で、親に自転車を買って貰ったので、急遽行ける状態になった。
 ちなみに自転車は、追加機能は何一つ付いていないくせに、30000円ぐらいするという、実にある種の男の子が好きそうな代物。色は赤で、イタリアの郵便局員が使っているのと同型(嘘)。

 まずは公式サイトを探す。
 キーワード、宮ヶ瀬、クリスマスツリーでぐぐったら、簡単に出て来た。
 のはいーんだけど。
 会場マップはあるのだけれど、アクセスマップはもの凄い略図で正直何だか分からん。周囲に他にも施設があったとしたら、間違える事必至。
 そもそも、クリスマスツリーがどこにあるのか、一見して分からない。よーーーーく見てやっと「もみの木広場」の箇所に付いている番号の説明に「ジャンボクリスマスツリー」の表記があるという始末。
 こういう場合はだな、宮ヶ瀬湖全体の、割と細かい略していない地図を一枚挟まなければならんのよ。うっかり別の方向から来たら、宮ヶ瀬湖ぐるりと一回りでしょうに。そんなんやられても、あんたら全然儲からんでしょーが。

 それはともかく、当日。
 前日にミクの歌をアップした関係で、寝たのが3時過ぎだったからかなぁ。
 起きてみると11時。
 うあー、どうかね、これは。
 そう無茶に時間はかからないと思うが、割ときわどいところだなぁ。
 迷いつつも、朝食を取ったりするうちに、12時になった。
 んー、でも、まあ、今をおいて他に行けるタイミングは恐らくないし。
 天気も晴れてるし。
 まあ、大丈夫だろう。
 出発!

 撮影したデジタル写真のタイムスタンプによると、出発時刻は12時14分。写真撮っておくと、こういう記録が出来るんだな、意外な効能。
 自転車でどんどこ進む。
 海老名から、相模大橋を通って厚木へ。このルートは、高校時代によく通った道だ。で、国道246に乗って、次に国道412号線へ。
 後は、道沿いに行くべし、行くべし、行くべし。
 宮ヶ瀬湖自体は、以前に一度親の車で行った事があるのだが、大体他人に案内されたり送って貰ったり、自分の意思で行っていない場所というのは、心的地図に全く入って来ない。途中のルートが完全に空白になってしまう。全行程が記憶に残り、そういう空白の入る余地がないのが、独り旅の利点の一つだとだと思う。
 記憶にあるうちの一番端っこであるところの泉バス停を過ぎたのが、13時14分。ぴったり1時間である。
 それから更に進む。
 そもそもこっちで合ってるのかなー、という漫然とした不安感が湧いて来たところで、「12/1〜12/25 宮ヶ瀬 クリスマス」の看板発見。
 あー、良かった、間違いじゃないや。
 ちゃんと地図を用意しとけ?
 ――ほとんど一本道だから、別に迷ってはいないんだよー。

 愛川町に入ってから、進むうちに、山越えの坂道に差し掛かる。こいで登ってみようとしたが、どうにも無理。んー、時間が変にかからなければいいが。
 冬という事もあり、当然寒さはあるのだが、動いていると汗ばむ。かと言って、脱ぐとすぐさま冷える。冷える時の勢いが強すぎるという感じか。寒さを重視する方向で少し暑いのは我慢して進む。寒いと体力を消耗するとか言うし。
 それから、下り坂を過ぎ、中津川の管理釣り場の脇を通る坂を上る。
 しばらく進み、13:54の時点で、国道64号線との交差点になった。
 えーと、案内標識には国道514号線方向が「宮ヶ瀬」、412号線で進むと「相模湖」「津久井」。
 とすると、国道514号線方向に行くのが正解のようなのだが……。
 が。
 案内看板に直進が宮ヶ瀬ダムで、左折が水とエネルギー館、とある。
 んー? どっちだ?
 よく分からん。
 でも、ダムはダムだろう。
 つことで、直進。
 こういうところで、ツリーはこちら、みたいなのが出てると良いのに(我が儘な都会人的発想)。
 不安なまま進んでいると、すぐに観光案内看板があった。「宮ヶ瀬ダム下流域観光案内図」とある。良かった、間違っている感じではない。
 えーと……でも、ツリーがあるのはどこやら皆目見当が付かない。近くに公園があるらしいのでひとまずそこへ行ってみようか。すぐ曲がっていくと駐車場がないようなので、ぐるりと回りこんで――あー、坂か、坂なのか。いーかげん疲れて来た。
 膝も少々痛いし、仮にその公園がハズレだったとしても、もうそのまま引き返しちまおうかなぁ。
 道に落ち葉が山ほど落ちてるなぁ。でっかい葉っぱは、朴葉かな。朴葉味噌とか言うけど、実際なんか効能というか、味とか香りとかあるんだろうか。当方現代人に付き、嗅覚がかなりダメなので分からん。後でウィキで調べたところ、「芳香があるので、朴葉寿司などに使われる」「落ち葉になっても燃えにくいから朴葉味噌とかに使われる」という風な記述があった。なるほど。
 さて、公園に至る交差点が見えて来た。
 んじゃ、最低限湖面でも眺めて――お?
「クリスマスツリー 直進」
 子供向けアニメだったら確実に悪役が仕掛けたような、完全手書きのぞんざいな看板が。
 さて……。
 どうしよう。
 結構疲れているのは確か。
 現在の時刻は、14:20。
 単純に言って、15:00を折り返しと考えたいので、もうこれ以上先へ進むと帰りに影響が出そう。
 沈思黙考。
 まあいーか。
 進んぢまえ。
 理由?
 もう少しぐらいなら、どうにかなりそうだし、本当にヤバかったら帰れば良いから。
 ――本当にヤバい時は、帰るどころではないんじゃないかというツッコミは無視して。

 進むと、注意表示があった。
「Hey! この道の先は19時に閉鎖されるZE! 夜になって通ろうと思ってもD☆A☆M☆EだZEEEEEEEE!(意訳)」
 そんな時間までいる気はないので、進む。
 落ち葉で半分以上埋まった歩道を進む。
 坂なので、自転車を押して進む。
 この自転車を押して進むという動作は、
・本来はもっと速い筈だ感に苛まれる
・目的地に到達する時間が増える
・帰りの時間が遅くなる
・疲れる
 等、人間にとってよろしくない要素が詰まっている。そもそも、古代ローマでは拷問に使われた程の作業なので、出来れば避けたいところである(嘘)。
 進んで行くと、開いた鉄格子の扉が付いたトンネルに差し掛かった。
 こう、道に扉が付いている光景って、たまに見るけどやっぱり凄く嫌な感じだな。これが閉じてるだけで、通れなくなって引き返さなければいけない。閉じているだけで、廃墟に辿り着いたのと同じ感じ。閉じているという事実で、向こう側が未知の領域になるという不安感。
 ともあれ、ここで臆しても仕方がないので先へ進む。
 自転車のライトを付けて、と。
 幅は狭いけど、歩行者用に段が上がっているから、割と安心だな。
 安心だな。
 だな……。

 暗っっ!

 暗いよ!
 えらい暗いよ!
 奥の方は明かり点いてるけど、今この場所は足元全く見えないぐらい暗いよ!
 あー、そうでした。
 自動車道のトンネルは、暗いとこかなり長いんでした。
 うわー、狭いせいもあって、うっかりすると落ちそうだからスピードは出しにくいけれど、動かないとライトが点かないから、一層見辛い。
 ノロノロと進み、ようやく明るい地点に出た。
 いやはや、自動車道のトンネルは本当嫌な感じのするところだ。
 かなり長いトンネルを抜けて、ようやく外に出てひと息――ん。
 目の前がパッと開けた。
 あ、何かダムの設備っぽい建造物が見える!
 水面は見えないけれど。
 もう一つトンネルを抜けると。
 おお、緑の濁り(うちの兄が昔に俳句か何かで使った、悪い水の表現)、宮ヶ瀬湖。
 おー。

 よし、もうひと息だ、多分。進もう。
 宮ヶ瀬湖沿いの道を走る。
 決して小さい湖ではないが、ほとんど平らなのでスピードを出して走れる。
 良きかな良きかな。
 進んでいると。
 山肌に面した部分に、何かがある。
 いや。
 いる。
 よくよく見ると。

 さる?

 うわ、さるだ。

 さるがいる。
 撮ろうとしたら動いてしまったが、3、4匹いる。
 とりあえずシャッターを切ってみた。
 保護色のせいで、もの凄く枯れ草に紛れて見辛いな。
 そうか、こんなところに、こんな感じにさるがいるのか。
 暗くなったら襲って来そうだ。危険だな。明るいうちに是非とも帰らねば。
 万一、さるとの戦闘になった場合はどうするの得策だろう。
 ヤツらは恐らくしがみつき、噛み付いて来ると思われる。
 ニホンザルであれば、人間の(少なくとも成人男子なら)方が腕力がある筈なので、これを利用して関節を破壊する方向で攻撃するか、もしくは我がデジカメ「ミュウ」(耐ショック100キログラム)でぶん殴るか。いずれにせよ向こうは殺す事に対して無頓着であるから、こちらもその気でやらないと与しやすしと見て一方的に襲われる。多少の負傷には動じない覚悟も必要であるな。動脈でも噛み切られない限り、とりあえず死なないだろうし。

 結局さるとの戦闘はなく、無事にその場を通過した。
 基本的に平らな道なので軽快に進む。
 が、何だか急激に疲れて来た。
 これはアレだ、空腹感だ。
 当方空腹を知らずに育った現代っ子なので、空腹感覚が乏しくて「あー、腹減った!」みたいなのはなく、活動能力の低下で空腹に気付くというややこしい手順を踏む。自覚した後は、流石に食べたくなるのだが。
 考えてみると、11時起きで朝食を食べただけなので、1食分少ないのだ。
 軽くでも何でも、どこか食べられる場所は――ある筈だ、ここは観光地、どこかしらある筈だ。
 引き返すのは全く無意味進め進め。
 進むうちに、公園かドライブインか道の駅的なものが見えて来た。
 よし、あれだあれだ。
 ちょっと教会っぽい形をした、「鳥居原ふれあいの館(いえ)」。
 さあて。
 自転車を停め――あれ?
 駐輪場はどこだろう。
 それらしいスペースはない。
 えーと。
 あ、駐車場の端っこに、バイクが置いてある。
 あの辺で良いか。
 走り屋の集団が何人かいて、若干怖いけど気にしない風を装って自転車を置く。
 ふれあいの館の前では、野菜が売られていて、中で特産品類が売られていた。食堂っぽいスペースがあるのだが、腹一杯だと先へ進めないし、時間もかかると困るし、金もかけたくないしで、結局クランキーチョコと、缶のお茶だけ買った。
 茶を飲んでから、クランキーチョコを食べる。
 サクサクもぐもぐ、サクサクもぐむぐ。
 あー、糖分!
 こういう時は糖分がことのほか旨く感じる。
 一気に全部食べるよりも、小分けの方が良いので、残そうと思ったが、何だかんだで食べ進め、残り2行分しか残らなかった。
 まあそれもまた良し。またよしいえす。

 血糖も上がって活動能力が戻ったので、更に進む。
 重かった足も、少しは軽くなった。
 少し進んだところで、橋に差し掛かった。
 橋には虹の絵が描かれている。
 あー、記憶の片隅に、「虹の大橋」とかいうのが、宮ヶ瀬近辺にあるってのを聞いた事があったような。それか。
 更に進むと、登り坂になり、それから下り坂になって――あ。
 なんか、開けた公園的なものが見えて来た。
 橋があるな。
 噴水が上がってる。
 で、よーく見ると、樹が一本だけ立っている。
 上に星付いてる。
 クリスマスツリーだ。
 おー、着いた、着いたよ!
 15:11に、宮ヶ瀬湖畔園地へ到着した。

 はー、やれやれ。
 ツリーの点灯は17時からという話だが、暗くなって自転車で山道を下るなんてのは、正気の沙汰ではないので、何枚か写真だけ撮って帰ろう。
 えーと、自転車はどこへ置けば……どこへ……。
 駐車場しかないな。
 食堂や露店が並んでいるのだけど、駐輪場は……ないな。
 どこかに自転車が何台か停まっているような場所も……ないな。
 仕方がないので、交通整理をやっている祭の実行委員会風の人訊いてみる。
「あー、チミチミ、駐輪場はないかね?(意訳)」
「ない(意訳)」
 ……終了。
 自転車なんかそこらに路駐でもすればいーじゃん、との事。
 まあ一昔前はどこでもそんなだった気はするけれど。そっか、何だかんだで都会の絵の具に染まっている、と、まあそーゆー事だな。
 適度な物陰に路駐をし、ツリーの近くまで行く。
 途中の道もかなりの量の発光ダイオードがぶら下がっていたが、まだ点灯していないのでむしろ景観は良くない。
 湖畔園地は、道路から随分下る構造になっている。あー、下り坂、膝ちょっと痛いな。これはなんか持病的なものなのか、それとも自転車の遠乗りをすれば誰でも当たり前に出て来る症状なのか。
 降り切ったところが芝生になっており、そして、ツリーがそびえ立っている。
 ああ、でかいね。
 でかいけど、何となく樹としては普通だね。
 その樹に、電飾が付いている。巻き付けるタイプではなく、ぴーっと縦に引っぱった電線に電球が並んでいる。プレゼントの箱とかサンタの人形とか、そういう電源を入れていなくても目に付くような飾りの類はなし。あくまで、17時以降に全てを賭けている風だ。
 大きさを表せられるかな、と、何枚か写真を撮ってみたが、真下は立入禁止なので今一つスケール感が出なかった。地面に寝っ転がったらもう少しいけたかなぁ。それにしても、幹ギリギリに近づけないと難しいよなー。

 ツリーを見て、残してたクランキーチョコも全て食べ、15:30頃に帰り始めた。
 ルートは、来た方向とは逆を通る事にした。
 案内図を見ると、明らかにそっちの方がすぐに帰れそうだったので。
 って事は、来る時のルートがそもそも遠回りだったのかなぁ。
 帰り道出発。
 どんどこ進む。
 どんどこ進む。
 どんどこ進む。
 あ、下り坂。
 下り坂長いなー。
 あんまりブレーキかけ過ぎるのも良くないかも知れない。適度に弛めて。
 ちなみに、こいつの後ろブレーキはグリースを入れるタイプの、鳴らないヤツ。これも嬉しいポイントである。
 と、下り坂と平地とちょっぴり登り坂というような取り合わせで、厚木、海老名へと戻った。
 家に帰ったのが17:30頃。
 山の方へ行ったのだから当たり前と言えば当たり前だが、行きが3時間の帰りが2時間、もの凄い差である。

<出費>
・クランキーチョコ 105円
・お茶 120円
・計 225円



2007/12/20 『みくみくにも程がある』
 つことで、歌も作ってみた。これは一から十まで全部ごんぱち作、となる。厳密に言えば、ミクの絵はミクを元にしたパロディだし、「のーない」という語句は、「はやや〆」さんの曲からの剽窃と言えなくもないけれど、まあオリジナルの範疇に入れていーんじゃなかろうか。
 生まれてこのかた作曲なんぞした事もないので、聞く人が聞けば色々と致命的なミスがあるのだろうが、まあ、自分には歌に聞こえる気がするので、良いかなぁ、と。
 しかし、最初に作った歌が、ヴォーカロイドのためというのは、なんか、人類ってのは面白いもんだなぁ……まあ、自作を売り込むネタの一環になれば良いなぁ、という側面もかなりある訳だが。




2007/12/11 『みっくみくにされているので』
 どっかで触れていたけれど、「ハジメテノオト」に感激し、本萌えモードに入ったので、初音ミクを買ってピトラの主題歌の動画をこさえた。その辺の経緯は追ってアップしようと画策中。
 で、動画は、「ピトラといっしょ」のトップを一つ入ったところと、そしてニコニコ動画に一つアップした。ちなみにニコニコの方が完成度が高い。

 尚、作曲とアレンジは三月さん、詞は日向さちさん、ピトラは千足さんとQさんに権利が、ミクのデータ・動画の原画・動画の作成が自分、と、いう感じ。
 ……作業量はともかく、創造的な部分実はあんまりないな、自分。
 念のため、動画作成は初。音関係も初。これで何か余計なスキルを手に入れたぞ、という感じ。好きでやる事には力を入れやすいやね。



2007/12/7 『遠くへ行きたい……って訳でもないんだが ぶらり放送ライブラリ』
 今月はどこに行くかなぁ、イベントは何かあるかなぁ、と、またしても例によって泥縄的にぐぐってみた。
 場所は横浜辺りが適当だな。近いし。
 で、横浜イベントカレンダーなるサイトがあったので、確認してみる。
 いくつかある中で、『ああ、懐かしの秘蔵TV・ラジオ脚本展』、か。
 んー、別に脚本の表紙見て興奮する趣味はないけどなぁ。
 入場無料は魅力的だけど……。
 そもそも会場はどこだ?
 放送ライブラリー?
 って、どこ?
 更にぐぐってみると、放送ライブラリーの公式サイトが見つかった。
 ――尚、これが入っているビルであるところの横浜情報文化センターの公式ページが存在しないせいか、テナントの放送ライブラリーのサイトと、日本新聞博物館のサイトへのアクセスが極端に面倒になっている。情報を頭に付けるぐらいなら、その程度の接続環境は整えなさいよ、もう。

 ほお、場所は関内で、放送資料が見られる図書館のようなもの、か。過去の番組などが視聴出来る、ふむ。
 しかも、利用料は無料。
 ほお。

 何とはなしに興味の湧く代物ではありませんか。
 無料だし(しつこい)。

 当日、図書館に寄って本を返し、また別の本を借り直す。
 と、端末の画面に返していない書名が一冊。
 あー。
 まあ、たまにある、たまにある。
 今度返す。
 相田みつを、今度返す。
 借りただけで、結局読んでないけど、そろそろ期限だし。

 図書館の駐輪場に自転車を置きっぱなしにしたまま、海老名駅へ。
 そこから、横浜へ出発。
 勝手知ったる相鉄線なのだが、最近ホームの拡張工事をしているので、ちょっと見慣れない風景になっている。相鉄名義でアップされている文書には「拡幅工事」とあり、今までの線路部分を潰して、留置線を使う事にしている、と。えー、相鉄の北側って線路二本あったっけ。今となっては思い出せないな。

 海老名から横浜、JRで関内へ。
 最寄りは日本大通駅だが、交通費が片道70円ばかし高く付くのでJRで。大して歩く訳でもないし。
 道中、読んでいた本に、「放送ライブラリーの資料では――」というくだりがあった。割とメジャーなものなのかな、なんかそんな気もするが。
 関内駅に到着すると、何となく人が多い。
 平日の11時30分前後、一体何かあったか?
 改札から出て、スタジアム方面へ進む。
 場所は、横浜地裁の裏手という事で、比較的土地勘があるので地図を用意する程の事もない。
 スタジアム脇を海へ向かってだらだらっと歩く。しばらく進んだところで、低い部分にほとんど窓のないビルが見えた。
 ん、これは、いわゆる裁判所造りだな。って事は、地裁の裏手に来たかな?
 通用口みたいな入り口があるぞ、文字が入ってるな。
「横浜情報文化センター」
 ……放送ライブラリーのビルでした。
 なんでそんなに窓ないかな、しかし。

 中に入ると、がらんとしたロビーに、何かのコンクールだったのか、子供の絵が飾られている。中央に新聞の印刷機らしきどでかい機械が飾られ、その脇をエスカレーターが通っている。
 とりあえずエスカレーターに乗ってみると、日本新聞博物館前のロビーで、丁度、新聞を使った工作が展示されていたので、ざっと眺める。よく作ったなぁと思うが、材料が新聞である事で、誤魔化されてしまう部分もありそうだ。
 階段を一つ上ると、貴賓室が公開されていたので覗く。
 うん、貴賓っぽい。調度品は一応あるが殺風景なので、漫画喫茶のブースとこことどっちが良いかと言われたら考えてしまうが。

 ここより上に上る手段がなくなったので、一旦1階のロビーまで降り、エレベーターへ。
 エレベーターは二基あるが、片方は荷物の運搬用で、人が乗るな、と、注意書きがあった。一見すると分からんな、これ。
 さて、エレベーターに乗り、目指すは8階。
 到着して出ると、「放送ライブラリー」の文字が。
 うむ、間違えてはいないな。
 えーと注意書きは――。
「館内撮影・録音禁止」
 まあ、ホームページにもそんな事書いてありましたよ、はい。

 エレベーターから出てすぐのところに警備員の人がいて、「いらっしゃいませ」と挨拶された。曖昧に応えつつ中に入るや、職員の人が「こんにちは、検索はそちらでどうぞ」と、端末の並ぶテーブルを指す。
 わあ、何だか礼儀正しいフレンドリーな施設だね!
 ……じゃなくて、下手な事するんじゃねえぞ、コノヤロウって意味ですよね。ええ、多少気持ちは分かります。映像資料はコピーされやすそうだし。
 ともかく犯罪者でない風を装いながら、検索用端末を操作する。
 名前と居住地域と年齢を入力すると、後は検索画面。操作は画面を触れるタッチパネル式で、ジャンル別とかキーワード検索とかでテレビ番組やラジオ番組が探せる。
 このタッチパネル方式というのは好きになれない。冷たく固い画面の感触がどうにも。3、4回程度の操作ならともかく、ページを何枚もめくるなんて事をやっていると、指先の皮がどうにかなってしまいそうだ。
 何か適当なものを見てさっさか帰るか、と、思いながらジャンル別の番組一覧を眺めていく。
 アニメが100件超、バラエティが400件超……って、少なっ!
 要するに、「本なら全部ここにあるぜ」の、国会図書館みたいな位置付けで考えるべきものではない、って事なんだな。しかし、これっぽっちで、根拠法令であるところの放送法第53条「放送の健全な発達を図る」という目的が果たせているんだろうか。むしろ、検閲的なものを感じてしまうのだが。
 まあ予算とか、労働力とかの問題もあるのかなぁ。
 で、何を観たものかな。連続アニメの一回だけ観ても食い足りないし、「うわぁ懐かしい!」という程のものもないし、本格的に観たいなら、それこそゲオ行けば良いだけの話だし――と、つらつら眺めていると、「音楽達人倶楽部 小田和正」の文字が。
 これで決定、と。
 あ、利用カードが出て来た。
 隣りにいた人の真似をして、受付に持って行く。
「はい、ブース28番で視聴出来ますので」
 受付の人に言われ、テレビブースの座席表を確認してから、28番の席へ行く。

 ――ん? 何故この番組を選んだか?
 小田和正だからですが、何か?

 テレビブースは、4つのテーブルがひとかたまりになったものが、ボコボコと配置されている感じ。
 椅子はリクライニングで、少々バネが弛め。テーブルは仕切りで仕切られていて、一つ一つにテレビとヘッドフォンと、やっぱりタッチ式の操作パネルがある。テレビには、ライン端子が付いているが、これを使って録画とかをするとその場で追い出される事請け合い。そもそも端子が生きているかどうか不明。
 んーと、テレビには何も映ってないけど、これは、再生が始まったら映るかな?
 操作パネルの案内に従い、利用者番号を入力すると、操作パネルが再生用のものに切り替わった。んじゃ、再生ボタンをピトッとな。
 あ、始まった。画面も点いた。
 まあ、いちいちテレビの電源消すって法はないわな。
 ヘッドフォンをつける。あー、しかし耳のとこのクッション暑いなぁ。自分の使ってるヘッドフォンは、クッション取れたままになってるけど、そうか、この暑さが避けられているという点では悪くないなぁ。
 しかしやはりいいねぇ、小田和正の歌声は。
 番組内容は、歌ばかりではなく、彼の監督した映画の話が本筋になっていた。別に映画には興味がないので、早送り。ぬるい早送りで画面が進む。
 操作ボタンは、再生と一時停止と早送りと終了だけ。巻き戻しはない。
 繰り返す。

 巻き戻しはない。

 利用カードの裏面を見ると、確かに「このカードに登録された番組は本日1回限り有効です」とある。
 席の占有防止――という訳でもないよなぁ。そんなのは時間制限でも付ければ良いだけだし。
 なんか、権利系の事とか色々考えた結果なんだろうけど、考えすぎてどっか行っちゃったみたいな感じだな。
 だって、録音も録画も禁止になっとるんよ? 巻き戻して同じソフトを2回観たからってどんな不都合が?
 そもそも、再び同じ手続きをすれば、2回観る事は出来なくはない訳だしなぁ。
 何か、こう、不自然な力の入り方を感じる。

 何だかんだで、番組を見終えた。
 テレビブースから出て、エスカレーターで9階に上がる。エスカレーターの傍らに、寄付箱があったけれど、敢えて気にしない。
 9階はエキシビションホールと銘打たれており、展示物などがある場所。件の『ああ、懐かしの秘蔵TV・ラジオ脚本展』が行われているのもここである。常設の展示物の脇を通って奥へ行くと、突然に小学生ぐらいの子供達の集団が、スタジオ風のコーナーでニュースキャスター体験をやっていた。なんだ、遠足か?
 そしてようやく、『ああ、懐かしの秘蔵TV・ラジオ脚本展』が行われている一角に辿り着いた。
 ふむ、台本、台本、台本、台本、それから、アニメの台本は、脇に単行本や絵コンテが置かれている場合もある。ルパン三世とか、鉄腕アトムとかあるな。ボトムズもある。アニメを離れると、ローマ法王が書いた台本とか、小沢彰一的ココロとか、ゲバゲバ90分とか、8時だよ全員集合とか、男はつらいよ(多分テレビ版)とか、あるある大辞典とか、誰ぞやの放送作家のお蔵入りした企画書の山とか。
 しかし、全部表紙しか見れない訳だが――と、見れるようになったものも2点ばかしある。台本じゃなくて設定資料だけど。まあ正直、こういうのはアニメイト辺りに行ったら複製が売られてそうだが。
 一つはガンダム。キャラ設定は――何だか見覚えのあるページだ。恐らくは、何かのタイミングで目にしているんだろう。ちょっと笑えるのが、アムロの設定の脇に描かれた「こうしてはいけない」の指示。「鼻を高く格好良くしない」「眉をきりりと太くしない」「アゴを割れさせない」という風に、悪い例でまとめた、キャプテンハーロックか、古代守みたいなアムロの絵付き。
 もう一つはアンパンマン。話のパターンや、キャラの特徴などがやはりかなり具体的に定められているのが分かる。これも「やってはいけない表情」とかがあって、あり得ないアンパンマンの顔が愉快。で、初めて気付いたのは、アンパンマンには歯がない、という設定。食べ物だから、だそうな。理屈に合っているかと問われるとほとんど合っていないが、何とはなしに納得出来る理由だ。
 見ているうちに職員の人が「太閤記の上映が始まります」と、声をかけていたが、太閤記(1965年)には何の思い出もなので放置した。

 一通り見終えたので、一階へと下りた。
 すると、ロビーで小学生達が並んで記念撮影をしていた。
 ああ、やっぱり遠足か何かだったんだな。
 ロビーが撮影可なら、1、2枚撮っておきたかったが、今の時代子供がいる空間で独りでカメラを出すのは自殺行為なので、止めておいた。

 その後、横浜へ戻り、リオでビールとポークカレーにコロッケをつけて食べた。のだが、店の人がうっかりしていたらしく、次回分のトッピングサービス券をくれなかった。要求しても良いのだろうがまあ正直言い辛いし、これも何かの流れの変わり目かも知れないので、次回は別の店を開拓してみよう。

<出費>
交通費:860円(海老名―300―横浜―130―関内)
昼食:980円(ポークカレー580、缶ビール400)
計:1,740円




思い立ったが随筆 トップへ トップへ