思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2009/8/30 『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第4回 ケントでもなく、アーサーでもなく:旧島松駅逓(てい)所
 ひけらかすようで恐縮だが、ごんぱちは『動物のお医者さん』の舞台であるH大に多分インスピレーションを受けて作られたと思われる、某H大学のOBである。証拠に、北十八条の通りの向こうに馬とかいた。
 ――尚、卒業証書は所持していない。卒業式をサボった(というか、部屋の明け渡しが2月一杯だったし、卒業式の為にまた行くのが面倒だった)し、受けとる手続きをする手間も惜しんだので。まあ、この前卒業証明書を請求したらくれたので、どうやら卒業はしていたようであるが。

 で。

 H大と言えば、クラーク先生である。

 新聞記者の傍ら執筆したSF小説がヒットし、その実績を買われて我が大学の前身である札幌農学校に教頭として八ヶ月赴任された。帰国後、映画『風と共に去りぬ』に主演し、大スターとなられた。決め台詞は「この老いぼれのようにな! カッカッカ!」で、これは国民的番組『水戸黄門』で「ラストの黄門様の高笑い」というシーンで真似されている。
 と、この程度の事は、誰でも知っている訳だが、その有名な言葉を仰られた場所というのが、旧松島駅逓所である。

 何故ここになったかというと、複雑な事情がある。
 コミケのスペースが取れていたので、コミケ当日に合わせて休みを取った。
 だが、航空機のチケットを買おうとしたら、片道で三万円以上もするので、やっぱりやめた。
 時間が空いたので、「じゃあ、どっか取材に行こう」と、ウィキで周辺の市をぼんやり調べていたら、北広島市の項で旧松島駅逓所の記述が見つかり、「行った事なかったなぁ」と思った次第。
 ――複雑はどこに?

 当日。
 キープしておいたペットボトルに水道水を入れ、出発。
 ぽすたで、北五条手稲通りを爆走。
 ん?

 自転車移動ですが、何か?

 まあ、実際のところ大した距離ではないので、心配する程のものでもないのだ。
 ……近くに公共の交通機関も通ってないし。北海道、自動車社会だから。

 札幌駅前までずぃっと走り、そこから国道36号線を南下。
 後は道なりに進むだけ。
 念のため、で、ロードマップを持って来て、時折確認しつつ走る。
 こいつは、大学時代に自転車旅行をするために買ったもの。雨の中を走った時のダメージでカビが生えていたり、形が崩れたりしている。とかいうと、どれだけ頻繁に行ったのか、てなもんだが、実際には3回ぐらいしか行ってない。
 体力以上に気力を使うんだよねぇ、長距離の自転車旅行ってのは。人間と会話できないし、助けのない場所でのトラブルを想像すると怖いし(誰か友達とかと行くという発想が根本から抜け落ちている)。

 すすきのを素通りし、豊平川を渡り、進めや進め。
 琴似からだと、案外時間がかからない。
 これが冬になると、お話しにならなくなるんだけどもねー。
 工事中のでこぼこの道を進み、更に進み、もっと進む。
 札幌の道は、舗装はされているし広いけれど、結構舗装が痛んでいる部分が多い気がする。
 不況による税収の少なさなのかな。

 あ、すき家だ。
 北海道にもあったんだな。
 琴似近辺にはなかったし、札幌駅周辺にもなかったからなぁ。
 それを言うと、王将がないんだよなー。
 どうせ店舗ないから、と、思って売り払ったら、その後1000円以上も上がるんだもんなぁ、株価。流石にちょっと惜しいと思ったさ。まあ、4、5万儲けは出てるから、贅沢言うなって話なんだけどもね。
 引っ越しやら何やらで、大量に出費があったし。

 交通量はそれなりにある。
 お盆だから空いているというのは、都心の話だが、札幌はどっちの位置付けなのかな。
 道内の人にしてみれば、首都圏と変わらない感じか?
 よく分からん。

 進むうち、札幌ドームまでの距離を示す掲示板を見かけた。
 そう、この道沿いに札幌ドームがあるんだよなー。
 大学時代はなかった代物だ。
 確かこの道は、遠乗りをした時に一度か二度か通っている道なんだよな。
 札幌ドーム自体は、この前同僚と野球観戦に行ったので、初めてという訳ではない。
 しばらく進むと、建物の間から銀色の円盤様の物体が。
 札幌ドームだ。
 凄い異様な絵だよな。
 ドームというと昔『DOME』っていうゲームがあったっけなぁ。
 ちょっと調べてみると、今のノベルゲーの源流とも言えるもの、だそうな。企画がそこでストップしなかったところをみると、案外評判が良かったのかな。自分としては食指は動かないけど、そもそもノベルゲー自体を全然やらないから、元々想定された客層ではないのだろう。
 札幌ドームから右へ進むと羊ヶ丘展望台へ行けるが、それは帰りに寄ってみる予定。

 進む。
 進む。
 進む。
 ちょっと辺りに目を向けると、だだっ広い地面が広がる。
 雲の形とかも、広い大地仕様なんだよな。
 道も広いから、なんかダイナミックな感じだ。
 大体平らなのだけれど、多少の凹凸はあるので、坂を上ったり下ったりしながら進む。
 札幌の中心街から遠く離れ、町並みが途切れ、木が多くなる。
 ええとぼちぼちだな。
 あ、ゴルフ場だ。
 地図で調べた時、確か近くにゴルフ場があった筈だ。
 お、案内看板。
 よしよし。
 ええと、脇道か。
 ぐぅっと下るのか。上るのが面倒そうだな。
 行くけど。
 進んで行くと、平屋の長い建物が見えて来た。
 これだこれだ、旧松島駅逓所。

 駐車場とトイレが道隔てた向こうにある。
 一応観光スポットとしての自覚はあるようだが、それ以外のものは別にないので、土産物を買うとかそういうのは全然ない。周りは木々が多く、旧来の「道の駅」とか峠の茶屋とかいうイメージがそのまま残っている感じ。
 駐車場の脇に自転車を停め、逓所の近くに行ってみる。
 お、「少年よ大志を抱け」の石碑が建ってる。
 これの言葉に続くのが「LIKE THIS OLD MAN」らしい。これを知って熟年ぐらいの芸能人だかが「少年を持ち上げている訳ではなく、年寄りを見習えと言ってるんだ」風の解釈をして喜んでいたが、「THIS」が付いているので、まあ「この私」といった意味合いなんじゃなかろうか。「志は大きく持てよ、この私を見習ってな。カッカッカ!」というような、ちょっと冗談交じりな雰囲気で。

 石碑の裏には、田んぼと蓮池があった。どうやら、ここを運営していた中山久蔵という人が、農業関係で業績を上げた人らしく、この田んぼは北海道で稲作を始めた最初の試験農園の再現らしい。
 新潟が米処だったりして忘れがちだが、そうなんだよな、米は元々暑い地方の作物だ。
 北海道で作るってのは本当、いかほどの苦労があったか。
 北海道の品種としては、以前はきらら397が筆頭だったが、最近はほしのゆめをよく目にする。
 目にするのは良いのだが、ほしのゆめのテーマソングが行きつけのマックスバリュでエンドレスで流れているのはどうにかならんのか。歌手が下手なのか、ミキサーが仕事をしていないのか知らないが、音がとんでもなく外れていて、聞いていて気持ち悪くなる。あれが聞こえている空間で、ほしのゆめのパッケージには手を触れたくない。

 外はざっと見たので、逓所の中に入る。
 上がりかまちにスリッパがあり、廊下を隔てて建物の部屋をそのまま利用した券売所がある。
 誰も客がいない。
 少々気後れはするが、迷う余地はないので券売所の職員の人に声をかけ、入場チケットを買う。大人200円也。
 撮影しても良いか確認すると、良いとの事。
 それから、見学の導線と立入禁止箇所(畳を直で踏まない事)の説明をして貰った。
 いざ、見学。
 道の駅という役割通り、そこに立ち寄る人の為の共有スペースらしきものがあり、囲炉裏が用意されている。
 資料類は、中山久蔵と、彼の関わった農作業関係のものが多い。
 念のため、クラーク先生に関するものは、ほぼゼロに等しい。
 そりゃあそうだわな、一度か二度か立ち寄っただけの利用客に過ぎないし。
 そういう意味では、一回宿泊しただけの明治天皇に対する展示スペースの割き方は大きいが、これはそういうもんだろう。
 共有スペースらしき囲炉裏の板の間の他は、建物をぐるりと回る廊下と、恐らくは宿泊用の部屋が9部屋。
 廊下が外に面して、雨戸一枚で隔てられている覆われている箇所もあるが、冬場は大変に寒そうだ。
 ともすると忘れがちだが、氷点下10度とかなるからなぁ、ここは。
 部屋に処々資料が展示してあるが、基本、中山久蔵に関する文書で、パッと見て面白いとか分かるというのは、囲炉裏の部屋だけだった。
 廊下を一回りして、これで、全部見終わった。
 見学者ノートがあったので、ちょっと開いてみる。初めて知りました、感激しました、色々書いてあるが、ページが進んでいる様子はない。寂れた場所の、地味な観光地、無理からぬところ。
 一通り見終わったので、旧島松駅逓所を後にした。

 昼食はどうしようかなぁ、と、迷いつつも、来た道を戻る。
 札幌駅近辺まで我慢するのは流石に無理っぽい。
 羊ヶ丘展望台に寄るのだとすれば、尚更だ。
 でも、行きにそれ程良さそうな食堂もなかったような――。
 思いつつ進むと、「かつてん」という食堂が目に留まった。ふむ、丼もの系か。安くて腹に溜まりそうだし、ここにするか。
 店に入り、テーブル席でぢっとメニューを見る。
 ガッツエビ天カレー?
 ガッツの部分は大盛りとかベルセルクとかそんなんだからまあともかくとして、カレーとエビ天って合うのか?
 ……まあ、みよしのでは、餃子カレーなんてのもあるが。
 カレーは確かに強くて、何かに簡単に負けたりはしないと思うが。
 つことで、エビ天カレーにミニ蕎麦をセットにして頼む。
 待つこと暫し。
 ふむ。
 エビフライに、カレー、そして冷たい汁蕎麦だ。
 喰うべし、喰うべし。
 お? なかなか蕎麦うまい。明らかに出来合いのめんつゆの味がするが、まあ、下手なものよりはマシ(消極的なうまさだな)。
 エビフライは、そのままカレーに混ぜてしまうのは勿体ない感じがするので、二本ぐらいはカレーではなくめんつゆを付けつつ食べる。
 これもなかなか。
 後はカレーを喰うべし、喰うべし。エビ天と合わせて喰うべし。
 エビ天とカレーの取り合わせ、喧嘩はしないが、相乗効果で旨くなるという事もない。エビが淡白な味だから、当然と言えば当然。
 エビ天も尽きたので、具のないカレーを喰うべし。
 外で食べるカレーは、ルー部分に何にも入ってないよなー、しかし(自分の入る店のグレードの方に問題があるのではないかと)。

 それなりに腹も膨れ、再び出発した。
 しばらく進むと、札幌ドームが見えて来た。
 行きに通った道なので、随分近い感じがする。
 じゃ、時間にも体力にも余裕があるので、羊ヶ丘展望台へ行ってみよう。
 札幌ドーム脇の道を上がる。
 地図の上では距離がありそうな感じがしたが、それ程でもなく、大して時間もかからず羊ヶ丘展望台の入り口に辿り着いた。

 それは良いんだが。
 入場券売場が、料金所型になってる。
 何だこれ、徒歩とか自転車で入れないとかじゃなかろうな?
 少し迷っていると、丁度徒歩で親子連れが来て、入って行くのが見えた。
 一応徒歩で良いらしい。
 展望台へ上がる舗装道路に自転車の走行車線や歩道が全く用意されていないので、とりあえずそこらに自転車を置いて(注:札幌は駐輪場文化未発達)入場券売場へ行きチケットを買い、そのまま徒歩で上がる事にする。

 車道沿いに、牧草地(多分)が続き、その牧草を少しだけ刈り込んで歩道にしてある。
 広いな、牧草地。
 牧草は、随分と深い。よく見ると花や実が付いている。
 これって、アレにそっくりだ。
 魔女の宅急便のファーストシーンで、キキがいた草原。
 ちょっと寝転がりたく――は、ならないな。草が本当に深いから。
 でも広々していて、なんか良い眺めだ。
 大体、観光地というのは「その部分だけ」のものだが、これは本当に広々と牧草地だ。
 のんびりと歩いて上っていく。
 と、丘の向こうから白い建物が見えて来た。
 ああ、あれが観光客向けのチャペルとか建物とかのひと群だ。いきなり俗っぽくなって、興醒めな事限りなしだな。
 もう少し草原の中を歩いてみる。
 羊囲いの柵と、赤とんぼ。そして、下の町並みまで見渡せる草原。
 これは見晴らしが良いや。
 中心部からこんなに近い場所でこの風景、大したものだ。
 もの凄い山という訳でもないのに、本当に見晴らしが良い。平らな地面の多い札幌ならではか。

 一通り草原を堪能したので、帰る――のはまあ流石に勿体ないので、建物のある方へ行く。
 土産物屋やチャペルや雪祭り博物館なんかがあるのを、ざっくりと眺めてから、クラーク先生の像を眺める。
 撮影サービスがあったが、特に利用はせず、脇から適当に撮った。
 尚、羊ヶ丘展望台から見える草原やら何やらは、農業研究センターのものである。

 その後、つつがなく琴似の我が家に戻った。
 なかなか距離を走った気がする。

<出費>
入場料:200円(旧島松駅逓所)
昼食:820円(ガッツカレー+そば(冷))
入場料:500円(羊ヶ丘展望台)
計:1,520円



2009/8/1 『酒ぶ詩人の怪』
 フリーランスから新入社員になって場当たり的に独立という根本的にお財布事情の悪い立場であるという事を差っ引いても、自分がケチな方である事は否めない。
 で、呑む酒も貧乏たらしいものになっている。
 ビールを控えて発泡酒、というのはまあ、基本のようなもので。
 行き着いたのが、ダイエーブランドのノイヴェルトである。
 ――と、言えば、ケチな酒飲みは「ああ、あれか」と、大体理解出来ると思うが、分からん人の為に言うと、こいつは並の清涼飲料水よりも安い350mlで80円台の発泡酒である。この影響か、7月に入ってから他のメーカーが超安価ビール風飲料を発売しているが、それでも価格は100円程度で、価格勝負という面では明らかに相手になっていない。しかも、このノイさん、対抗商品の発売に合わせて、79円まで値下げをするという暴挙っぷりである。
 実際の味は、というと、冷やしたものを一本だけ勢いで呑む分にはさほど気にならない。豆やら何やらを使う第三のビールとは違い、麦を使っているので違和感がないのも強みか。
 このように、毎日一本づつ呑んでも3,000円でお釣りが来る、大変リーズナブルな代物だが、当然、もっと安く呑む方法はないか、と、考え始めるのである。

 で、これが、ビール系から離れてみると、案外狙い目があったりするから面白い。
 一日一本適量のアルコール飲料、という観点で言うと、スピリッツ+清涼飲料水という選択肢もあるのだ。
「甘いの飲んで食べられますか」
 という諺もあるが(諺違う)、そういう時に無理して飲む訳ではなく、もう一杯とか、休日の昼間とか、なんかビール的な味でなくても良いタイミングというのはあるものだ。
 そのため、倹約メニューとして、ダイエーのアメリカ産の安売りコーラ(38円)と、何となく家にあるウイスキーという取り合わせをやっていたのだが。
 この度、マックスバリュが29円でコーラを売り出した。
 恐るべき価格破壊。
 で、飲んでみると。
 まずい。
 とてもまずい。
 なんだろう、コーラとは異なる味がする。
 味が何か足りない感じ。
 やっぱり安かろう悪かろうかなぁ……と、思っていたのだが。
 最近、家に残っていたリキュールを片付ける為に、ゴードンのドライジンを買った。
 ジンはカクテルベースに使われるので、癖が少ないと思われがちだが、ストレートで飲むと強いネズの実の香りがする。ネズというとピンと来ないかも知れないが、松葉を想像すれば大体外れていない。
 で、これを件のコーラと混ぜると意外と良い感じになる。
 コーラの「薬臭い」と言われる香りと、ネズの香りが割と同じ方向でジャマをしない。
 案外悪くないかも知れないなぁ、と思った次第。
 ただ、ゴードンのジンは700mlで1,500円ぐらいするので、ブラックニッカ辺りで割る方が経済的になる可能性は無きにしもあらず。
 研究の余地はある事だなぁ。



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