思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2009/9/25 『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第5回 フォールの立場なし:さっぽろオータムフェスト2009
 朝、外に出ると、秋だった。

 札幌の秋は、そんな感じにはっきりやって来る。

 元々、夏にやる気がないせいで、引き際がやたらと潔いのだ。
「あ、今日涼しい」
 と思った、次の日からは、暑さが盛り返す事もなく、ズルズルと寒くなって行くのだ。

 これからの長い冬を乗り切る為には、脂肪を蓄えなければならないのは、熊に限った事ではない。
 人間も、秋の収穫を祝いつつ、飲めや歌えのお祭り騒ぎでしっかりエネルギーを蓄えるのだ。
 これが、北に暮らす人々の知恵であり、また、娯楽の一つでもある。

 そんな意味合いから発したのが、さっぽろオータムフェストである。
 Since2008(伝統の欠片もナシ)。

 今月も今月で行き先を考えていたのだが、月に八日しかない休みのうちの半分ぐらいを合唱団の練習に占拠されている都合上、あんまりショボイ場所にすると心が折れてしまいそうなので、それなりの場所やイベントを――と、色々思案してぐぐっているうちに、さっぽろオータムフェストに行き当たった。
 その前の時点で、何となく見かけていたのだが、そもそも一体なんだ、これ?

 開催趣旨を読んでみると、北海道の食を見つめ直すとか何たらかんたら書いてあり、とどのつまりはイタリア辺りの収穫祭っぽいものをパクッたっぽい感じのお祭りである事を薄々察する事が出来た。
 ちなみに、イタリア国旗の書き方を覚える時には、ピッツァマルゲリータを想像して、右手に材料を持って「トマトソースを塗って、チーズを載せて、バジルを散らす」と覚えると良い(今日何となく思い付いた豆知識)。

 イベントの方向性としては、横須賀のカレーフェスタみたいなしょっぱさがなくはないのだが、北海道の食は割と根のある名物的な扱いを受けているし、自分自身が地産地消を割と心がけているしで、そんなにショボイ行き先でもなかろうと結論付けた。
 折良く、開会式に相当する日が、休みに当たっていたのも大きかった。

 さて、当日。
 会場の大通り公園へ向かう。
 琴似からだと何だかんだで近い。
 土地勘も割と付いて来たので、体感距離は一層近くなっている。

 ――雪が降るまでは。

 十時が開会式だったなー、と、思いつつ、会場の西6丁目に向かう。
 祭りっぽい様子、は、と。
 あ、いわゆるお祭りの露店よりもしっかりした屋台がずらずらと並んでいる。
 それから、野外ステージに開会式準備がされ、その前にテーブルが並んでいる。
 ステージ前には自衛隊の人の楽団がスタンバイし、その更に前には来賓の人がテーブルに着いている。
 テーブルにはワイングラスが置かれ、いかにも「見せつけてやるぜ、ふらりと立ち寄った庶民との圧倒的な差というヤツをな!」みたいな感じだ。
 ステージ上の脇には乾杯用のワイン樽が置かれているのも、いかにも「ヨーロッパの方の祭りをパクリました感」がある。
 到着してすぐに十時になり、楽団の演奏と共に開会式が始まった。
 ミスさっぽろの人達三人が何となく控えている中で、さっぽろ市長が開会の挨拶をする。
 北海道の食を見つめ直し云々。
 テレビ局も来ているようで、局のロゴが入ったカメラを担いだ人が何人かいた。
 しかし、未だに札幌のテレビ局の何がどれ系に相当するのかよく分からない。
 あんまりテレビを視ないせいもあるのだが。
 アニメとか、一度予約したらチャンネル動かして局を合わせるとかしないし、新聞も取ってないし、テレビブロスも買ってないし(ブロス限定なのか)。
 STVとHBCがあるのは何となく分かるのだが、それがTBS系列なのかフジテレビ系列なのか日本テレビ系列なのかテレビ朝日系列なのかテレビ東京系列なのかさっぱりだ。

 ステージ上では、北海道庁の代表者(の代理)やら、観光大使の俳優やらが挨拶をして、滞りなく開会式は進んでいる。
 そして、手前のテーブルにワインが注がれ始める。
 ちなみにテーブル席と我々一般ピープル(古い)の間に、特に仕切りのようなものはない。
 ステージ上では、ワイン樽から注がれたワインをミスさっぽろの人がステージ上の市長達に配っている。
 そして、オータムフェストの成功を祈っての乾杯。
 その後、報道陣の為に、グラスを構えた姿でポーズを取る市長達。

 やらせだ!
 やらせですぞ!

 ……いや、それ、突っ込むポイントと違う。

 開会式も終わり、早速会場の見物に移る。
 普通のお祭りは、何か祀る神様的なものへのお参りや奉納がメインにあって、屋台で食べ物を売りさばく訳だが。
 オータムフェストは、食べ物の屋台そのものがメインとなる。
 レストランやホテルの名を冠した屋台が、様々な料理を売っている。
 海鮮炊き込みご飯とか、ラーメンとか、ウニご飯とか、ジンギスカンとか、生ビールなんかも当然。
 ……しかし。
 想像通りに高いな。
 生ビールが500円に、料理が一品で700円とかしてる。
 コロッケが150円とか。
 付加価値を付けて高く売られるよりも、付加価値なしで安く売って欲しいな……。

 ステージ前の屋台から離れ、隣の会場へ移動する。
 こっちはラーメンが多い。
 当然の事ながら、一杯が650円とか700円とか、どうにも割高感が強い。
 ベンチのような椅子で、使い捨ての器に盛られたラーメンの値段としては如何なものか。
 これ、どう見ても観光客からぼったくる値段設定だろ!

 何か一つぐらいは食べたいと思っているのだけれど、どうもこの値段はいただけないなぁ。

 東方向は端っこまで来たので、折り返して西方向へ進む。
 大通公園を使うというから、テレビ塔のふもとまで会場が続いているのかと思ったけれど、別にそうではないのだな。

 開会式のあったステージのあるブロックを素通りして、更に西へ。

 んーと、ここは酒を飲ませるところか。
 おつまみ3種が選べるクーポンが1000円ぐらいで売っていたりする。
 やっぱりあんまり手を出す気にならないな。
 パスパス。

 次の区画は、と。
 各都市ののぼりを立てた屋台が並ぶ。
 野菜や海産物が売られていたり、料理が売られていたり、網でホタテ貝が焼かれていたり、ゆるキャラっぽい着ぐるみがいたり、萌えプリンが売られていたり。
 あ。
 ジャガバター100円とか、トウキビ250円とか、ウニご飯350円とか。
 売り声も威勢が良く賑やかだ。
 そう、こういう感じだ!

 なんつっても、値段がお手頃な感じが良い。
 一品づつでは物足りないかも知れないが、200円、300円で色々買える感じ、こういうのがお祭り的で良い。
 客も多く足を止めている。

 ジンギスカンを売っていたり、地ビールを売っていたり、ふむふむ。

 何か買おう。
 うむ。

 ビールは、北海道限定のサッポロクラシックの生ビールがやたらと売られているけれど、当然のように割高なので、さっき見かけたセブンイレブンで買っちまおうか。
 注ぐ注がないで差は出るけれど、中身は同じサッポロクラシックだし。
 で、食べ物だ。
 ビールに合うものというと……。

 じゃがバターは鉄板だろうけれど、もう少し目新しいものが欲しい気がする。
 んーと……。
 あ、トウキビ売ってるな。しかも、ピュアホワイトだ。
 この前鳥野さんがトウモロコシ旨い話をしてくれたし、自分で茹でるのは何となく億劫で敬遠していたし、何よりも大学時代から「大通公園でトウキビを食う」という行為を一度もしていなかった気がするので、ここは一つこいつにしよう。
 じゃあまずは――セブンイレブンでサッポロクラシックを買おう。
 前に貰ったビール券があるからこれで2本買って、と。
 茹でピュアホワイトを売っている屋台は幾つかあるけれど、端っこのここの屋台のは200円で一番安い。初日だからか質が違うからか知らないが、同じような品なのに屋台によって値段が違うんだな。よし、買った!

 ゆでたてを保温していたと思しき温かいピュアホワイトを受け取る。
 それから、目星を付けておいた、屋台から少し西側に外れた場所にある日除け付きテーブルに座る。
 まずはビールを一口。
 サッポロクラシックは、麦芽とホップだけで出来ているタイプの純粋なビール。
 当方細かな味の違いはよく分からんが旨い。
 涼やかな秋空、歩き回った軽い疲労感、発泡酒に飽きた舌、ビールの品質、休日の開放感、何が影響しているのかは知らないが、ともかく旨い。
 続いて、ピュアホワイトを一口。
 ピュアホワイトは、粒の白いトウモロコシで、糖度が相当高いのだとか。
 まあこまけぇこたぁ良いんだよ、ってヤツで。
 塩茹でされたピュアホワイトは、強めの塩味が甘みと相まってビールとの相性も悪くない。

 んまい。

 いや、うまいわ、これ。

 ピュアホワイトという品種だからか、それとも、商売用に茹でられたとうもろこしを食べるのが初めてに近いからかは知らんけれど。

 ピュアホワイトを無心に食べつつ、ビールを飲む。

 トウモロコシを食べるとき、手でむしるやり方と、かぶりつくやり方がある。
 かぶりつく方式は、粒の根本が切れて残ってしまうので、残った芯が見苦しく、また、歯に皮が挟まる。
 手でむしると、根本から粒は取れるが、かぶりつく「頬張り感」に乏しく、面白味がないし、見た目も何か気取っている風でイメージが良くない。
 自分は、歯で引っ掛けて引き抜く方式を取る。粒の境目を意識して歯を引っ掛ける。指でむしる動きを、歯にやらせる訳である。一列づつ少し意識して引っ掛けていけば、根本から綺麗に取れるし、丸ごとの頬張り感も味わえる。

 ピュアホワイトは芯だけの残骸となり、ビールも空いた。
 天気は晴天、時間はまだお昼前。
 のんびりするには持って来いである。
 オータムフェスタの雑踏やアナウンスを聞き流しながら、暫しぼんやりと過ごしたのであった。

<出費>
ビール:420円(サッポロクラシック×2)
ピュアホワイト:200円



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