思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



 月記帳 バックナンバー

2006  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2007  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2008  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2009  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2010  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2011/1/29 『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第21回 ムショーに行きたいこともある:札幌刑務所
 当連載を読んでいる方なら、ごんぱちが何となく刑務所に行く趣味のようなものがあるのはご存じだろう。
 ……って、前回と同じフリかよ。

 今月も今月とて、行く先について頭を捻っていた。
 細かく見て行けば、行った事のない場所なんてそれこそ無数にあるが、ある程度の面白味は出来れば欲しい。
 さて何があるか、何があるか、と、ぐーぐるマップを眺めていたところ。

「あー、刑務所とか札幌にあんのかな?」

 と、脈絡なく思い立ったのであった。
 検索してみると、札幌刑務所の名が出て来た。
 ついでに、刑務所全体の公式サイトがあって、「仕事請け負います」みたいな内容が掲載されていた。
 そういうもんだよなー、刑務所って「けーむしょ」っていう語句で認識するけど、「刑として務をおこなう所」なんだろうしなぁ。

 尚、語句をバラバラにして、成り立ちの意図と異なる、好き勝手な意味を当てはめて、もっともらしい事を言う行為をあたしは嫌います。「子供」にいちゃもんを付けるとかね。
 その理屈が通るならば、「子」だって、
“「ネズミ」を意味する上に、中心を槍で貫いている形をして、小さい人間を人間扱いせずに、串刺しにして焼いて喰うという、虐待そのものの過去を思い起こさせるから使ってはならない、仮に違うとしてもそのような印象を抱く人がいるから、いや、いないにしても、我々のこの説を鵜呑みにした人がもういるから、使ってはならんのだ!”
 とか、言えば言えるだろうに。

 刑務所は横浜で一度行ったけれど、差も多少は気になる。
 行ってみよう。
 場所を確認したところ、東豊線の環状通東から道なり。
 ストリートビューで確認すると、東京靴流通センターがあった。
 これをランドマークにすりゃあ良いやね。
 距離は地下鉄駅から2キロか3キロぐらい。毎日通勤で5キロぐらい歩いたり走ったりしているから、さして問題のない距離だろう。
 んで、次の休みに行こう。

 当日。
 前日に久々にギレンの野望をプレイし直していて、気がつけば午前6時近くになっていた。
 いっけねぇ、まあ、一眠りしてから行けばいっかー、とか思っていたら。

 ……同僚から電話が入り、体調が悪いから代わりに出勤してくれ、と。

 かくして二〇分後に家を出て、徹夜のまま勤務をする羽目になった。
 恐ろしい事に、こういうのは2度目で、しかも、本人はどうも「体調が悪かったんだから仕方ない」と思っている節がある。
 改善計画を文書で出せと言っておいたけど、嫌がらせをされたぐらいに思ってるんだろうなぁ。

 気を取り直して次の休みの日。
 何だかんだで10時頃に出発。
 しようとして、まだ雑紙を出せそうだったので、一度戻ってまとめてゴミステーションに出した。
 地下鉄駅までつらつらと歩き、昼割料金で乗車、車中の人となる。
 大通駅で大江戸線程ではないけれど、無駄に長い通路を歩き、東豊線へ乗り換え。環状通東駅へ到着した。
 じゃあ、地上に出て、と。
 ええと……。
 どっちへ歩けば良いんだ?

 環状通を東方向に進むだけなのだが、交差している道路の太さがあんまり変わらず、どちらが環状通かよく分からない。
 更に、設置されている地図が、何だか道路方向と合っていないような……?
 しばらく考え込んだり見比べたりしてから、どうにか歩き始めた。
 雪のそれなりにあったりなかったりする道を歩いたり走ったりしながら進む。
 この度、愛用のショルダーバッグがかなり傷んで来たせいで、新しいバッグを買ったのだが、リュック型にもなるので大変走りやすい。
 でもまあ、前のものも同じのがあれば買いたかったんだけどもね。自転車に乗るなら、背負う必要はないのだし。エースとサムソナイトの提携が終わったせいか、商品そのものがなくなったっぽいんだよなぁ。修理出せるかなぁ。

 あ、丘珠行きの道と交差してる。
 丘珠はずっと北の方だから、間違えてないな、良かった良かった。
 大学時代に借りていた部屋が、丁度環状通り沿いだった。
 東に向けて進んだ事もあったと思うのだが、記憶の中と合致する光景はないな。
 当時の自分にとって世界は大学だったから、東よりも西の方が記憶に刻み込まれているのだろう。

 あの頃は、講義とサークルと、サークル仲間とグダグダと遊ぶ事が生活の中心で、どこか遠くへ足を伸ばそう、なんて事はほとんどなかった。3年の冬にサークルを辞めた後は、それでも縁の切れなかった相手と飲んだり、卒論の為にゼミに行ったり、そうだ、あの頃から執筆を始めたんだ。就職活動間近で、やりたい事を考えるうちに、はっきりとやりたいと言えたのが文筆業だった。
 今思えば、決して上手い選択ではなかったけれど、良い選択ではあったと思っている。
 でも多分、他のどんな道を選んでも、36歳の自分は「良い選択をした」と、思いそうな気がする。
 自分にとっての大学時代というのは、そういう季節だったのだ。

 歩くうちに、オレンジの地に「靴」の看板を掲げた建物が見えて来た。
 おおアレだ、東京靴流通センター。あの先だ。
 ええと、どこからだ?
 あ、ここから左に入れる。
 と、進んで行くと立て札が。

「当所施設内での写真撮影を禁止します 札幌刑務所長」

 ここだここだ、よっしゃよっしゃ。
 道が続いて、入り口らしきものが見えるが、
「あー、チミチミ、何か御用かな?」
「物見遊山で来ました」
「出て行け!」
 という、コンボが成立する可能性が大変高いので、近寄らずに公道っぽいところを進む。
 左が刑務所と拘置所、右は恐らく職員の集合住宅か?
 横浜でもそうだったけれど、住宅を併設させる事に何か意味があるのだろうか。
 迷惑施設扱いをされていそうだから、クッション代わりにしているのかも知れないなぁ。
 左側は、複数の建物が放射状に配置され、中央の建物と連結されている。中央を通らなければ出る事が出来ない、いわゆる恵迪寮造りだな。
 しっかし、人も通らないからなんだろうけど、車道しかない。雪道で路側帯も分からないから、どうにも落ち着かない。
 もう少し進んだところで、『刑務所作業製品展示場』の看板が見えて来た。
 あ、お馴染みのアレだな。
 つか、これぐらいしか見るもんないよな、刑務所って。
 食べもの類を扱う売店が併設されているが、そっちはスルー。職員用かな? 差し入れ用って感じじゃないけど。
 ずいぶんくたびれた引き戸を開け、中に入る。
「いらっしゃいませー」
 割とフレンドリーだ。
 品物を一つ一つ眺める。
 麺やら、財布やら、前掛けやら、ゴミ袋掛けやら、色々と置かれている。
 質は悪くないのだろうけれど、も一つ使い処がなさそうだったり、値段が高めだったり。
 こういうのがストライクな人々ってのは、どの辺なんだろうなぁ。
 品数は何となくまばら。横浜の方がぎっちり置かれていた。
 それに、右側ががらんと空いていて、無駄スペースが出来ている感じ。
 ちょっと思ったけれど、ここで強盗をして有罪になって服役したら、ちょっとギャグっぽいよなぁ。
「刑務所に入りたくてやりました」
「最初から入ってるやん!」
 みたいな展開。
 展示場を出た後、更に先に進んだところ、関係者以外立入禁止の看板がどの道を指定するともなく立っていたので、ここいらが潮時と見なして、札幌刑務所を後にした。

 その後、ユニクロでTシャツと靴下を買ってから、すしおんどでアンキモ(っぽい何か)とか白子(だと思う何か)とか食べて帰った。
 帰りの列車でうっかりひと駅寝過ごした。
 寝不足だったかな。


<出費>
交通費:560円(琴似―280―環状通東―280―琴似)
昼食:1,470円(すしおんど 伏古店)
計:2,030円



トップへ