思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



 月記帳 バックナンバー

2006  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2007  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2008  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2009  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2010  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2011  1月  2月  3月
2011/4/29 『本屋さんで握手』
 2011年4月15日発売の講談社文庫『ショートショートの花束3 阿刀田高・編』に、拙作『平和ボケ』掲載。
 簡単に言えば、小説現代のショートショート・コンテストに載った奴の再録である。
 確か、小学校の時に、図書館でこのシリーズの前身である『ショートショートの広場』を読んだ覚えがある。
 そう考えれば感慨深いものはある。
 まあ、その当時は、「星新一の名前はあるけれど、編者なだけか。道理でつまらない」てな事を思って、1、2冊で見切りを付けた訳だが。
 ……御用とお急ぎでない方は、立ち読みなりともして頂ければ幸いです。最初から2本目、見つけやすいです。



2011/4/24 『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第24回 ぐるり札幌見下そう:JRタワー展望室 タワー・スリーエイト
 人には会っておけ、塔には上っておけ、というのは、今巷で大流行の標語である。
 もちろん、マッチポンプである。
 マッチポンプとは、自分でマッチで火を点け、自分でポンプで水をぶっかけて英雄呼ばわりされたがるという、心を病んだ消防士の行動に由来する故事成語である。自分としては、そこはかとなく響きと意味合いに乖離が見られ、何か上手い事を言おうとして言い切れていない気持ち悪い言葉の一つである。もっと、放火と消火を直接的にイメージ出来る単語はなかったのか。ブッチホンやスパコンやキラキラネーム並に造語感があって気持ち悪い。

 何故塔にこだわるかと言えば、それがその地域では最も高いものであり、つまり一番目に付くものだからである。
 観光で、ずっと目に付いていたものを、結局放置して帰るというのは心を残す事である。
 土地とて一期一会、心を残さずに去りたいもの。
 だからこそ、塔には上っておけ、なのだ。
 なに、興味がないから気にしてない?
 いやいや、常に見えているという事は、潜在意識に刷り込まれているのだ。
 表層になくても、深層心理に入りこんでいるのだ。
 仮に表層に現れていたとしたら、それはそれで刷り込まれているのだ(反証不能性はエセ科学の証左)。

 札幌には、かの有名なテレビ塔があり、それは既に見ていた。
 従って、札幌の塔は制覇したかと思ったのだが。
 実は、札幌にはテレビ塔よりも高い塔があったのである!
 そいつが、ごく当たり前に利用している札幌駅のJRタワーなのだ。
 何とはなしに名前を見かける事があったのだが、如何せん通常のビルと同じ形態で、駅前の商業ビル街に隣接しているので、極端に大きいイメージが湧かなかった。
 今月はあまり良い行き先も思い浮かばなかったし、行ってみよう。

 当日。
 合唱団の練習が昼に終わり、その足で札幌駅へ。
 練習場所が地下鉄北十八条駅近辺なのでかなり近い。
 あ、念のため、移動手段は自転車。
 北大沿いをダラダラと南下して、手頃な場所に駐輪、札幌駅へ。

 えーと、公式サイトのアクセス図には、無印良品の脇から入るとか書いてあったけど……。
 はなまるなんかが入っている食堂街を通ると、「JRタワー展望台」の案内が。

 おっ、ライオンと無印良品の間に通路が!
 ここ……か。
 なんだこれ。
 思いっ切り隙間。
 喩えるならば、非常口的な。
 トイレ的な。
 如何にもひとけのない方に行きますよ、という風情の通路だ。
 入って……曲がって、小綺麗だが誰もいない通路を進んで……そしてようやく券売機、土産物売り場。
 おかしい、その構造はおかしい。
 もっとこう、前に出ようよ、ガッと。
 受付をもっと手前に置くが良いじゃないか。
 どうにも人を呼ぶ意思が感じられない。

 気を取り直して券売機でチケットを買う。
 700円也。
 お釣りを300円取って……ん、なんかうるさいな。なんだ? ん?
「お客さん、お釣りお忘れです」
 ……万札入れてた。
 土産物屋の店員さん、感謝。イタリアなら絶対そのまま盗まれるところだ(イタリアつか、日本以外だと大抵そうだろう)。

 奥に進み、受付でチケットにスタンプを捺して貰い、エレベーターへ。
 普通のエレベーターで、自分でボタンを押す。
 賑わっている観光タワーと異なり、エレベーターガールみたいな人は配置されていないし、他の客もいない。
 さてさて、乗り込む。
 六階と三十八階の二つしかボタンがない。
 さて、押すと……上がる上がる。
 エレベーター内は、案内アナウンスが流れる事も、窓から外が見える事もなく、壁にパリと札幌、京都と札幌を重ねた地図が貼られ、天井に方位が書かれているだけ。観光資源としてはほとんど価値を見出されていないようだ。
 さあて、展望台に到着!
 エレベーターから外に出ると。

 パッと開ける札幌の街。
 おお、見晴らしが良い!
 窓が大きく広々として明るい。左右にも上下にも区切りが少ないのだ。
 やあ、なかなか良い眺望だ。
 曇り空だけれど、それなりに遠くまで見える。
 海が見えるな、あれは石狩湾なのか。どの辺が見えているのかが、平面図でも示されているから分かり易い。
 しかし、石狩湾がここから見えるのか。
 結構な距離があるイメージだけど、そうでもないのか。
 と、思ったら、水平線なら五十キロぐらい先まで見えるらしい。
 なるほど。
 近くに目をやると、真下の駅の屋根にアルファベットで観光名所名と矢印が書かれている。
 展望台の客用? それとも、ホテルの客用かな?
 上から、というと、パトカーなんか上から見ると数字が書いてあって、ちょっと面白いやね。
 道路真っ直ぐだなぁ。
 太くて真っ直ぐな札幌の道路は、この高さから見ると普通の幅の道路、という感じになる。
 つまり、もの凄く遠近感が狂って面白い。
 実際には自転車で二十分ぐらいかかる距離が五分小走りで行けそうに見える。
 おっ、テレビ塔も見えるぞ。
 ちょっと低いのが分かる。
 あれが桑園、競馬場で、その先にビルが見えるのが琴似だな。よく見える。

 展望室内は、他の客がちらほら。
 品物の少ない土産物屋が一つと、飲み物を売っているスタンドが一つ、物陰に隠れるように記念メダルの販売機と刻印機。
 他はトイレと、壁にパネル展示があり、それから椅子がいくつもある。
 ピアノが置かれていて、ツキイチでコンサートが行われるようだ。
 観光地の観光スポットのクセに、何とも商売気の薄いさっぱりした作りな事だ。
 けれど、このさっぱり感は悪くない。

 トイレに入ってみたところ、ガラス張りで展望トイレになっていた。更に、窓に北大の恵迪寮寮歌『都ぞ弥生』の二番の歌詞が書かれている。妙なところに凝ってるな。
 パネル展示は、札幌市について触れていた。

 もう一回りして、展望台から降りた。
 お釣り取り忘れのお礼がてら券売機そばの土産物屋で土産物でも買おうかと思ったが、ロハスっぽい小物系ばかりで、何一つ欲しくならなかったので恩知らずを決め込んでJRタワーを後にした。

 十三時を回っていたので、昼食を取るべくトリトンへ向かう。
 ここしばらく胃を悪くしていたのと、何となくタイミングが合わなかったのとで、寿司を食べる機会を逸していたのだ。
 寿司分が不足している。
 ごーごー、とりとん。
 で、店の前まで来ると。
 窓越しに人の頭が一つ二つ三つ。その窓の位置は知っている。待合い用のソファーの真後ろだ!
 あ……日曜か。
 うーむやはり、中心部から外れているとは言え人気店、気を抜くとこれだ。
 諦めて帰り、乾き物にビールや缶チューハイで間を繋いで、晩に作り置きのチキンとトマトのカレーを食べた。
 ちなみに寿司は翌日、魚米で目一杯食べたが、イマイチ満足感がなかった。
 こういうのは気分にもよるよなぁ。


<出費>
入場料:700円(JRタワー展望室)
計:700円



トップへ