思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



 月記帳 バックナンバー

2006  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2007  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2008  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2009  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2010  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2011  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月
2011/11/18 『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第31回 刑事だったらファンネル付き:新十津川〜滝川

 北海道の鉄道網は貧弱である。
 本数は少なく、いわゆる私鉄もなく、網羅している地域も絶望的に狭い。路線図を眺めると、膨大な空白が広がっていて、それは当然北海道の良さでもあるのだけれど、もう少しどうにかならんのかという気になって来る。
 さて、この貧弱な鉄道網であるから、大抵の線は乗り尽くしていそうなものだが。
 目と鼻の先に、エアポケット的に乗っていない線があった。

 函館本線から桑園で枝分かれして北方向に伸びる、学園都市線である。

 札幌の市街というのは、函館本線を目安に動けば事足りる。
 迷えば南か北、函館本線の線路のぶつかるまで進んで、後は線路沿いに行けば知った場所に出る。
 のだが、その法則をぶち壊す向きに伸びているのが、この学園都市線である。
 函館本線かと思ったら学園都市線で、西へ行ったつもりが北へ進んで、だんだんお家が遠くなってしまうのだ。
 それぐらいいつも乗る事がなく、影の薄い路線で、当企画には打って付けであろうと常々考えていたのである。
 交通費はそれなりかかるので、お得な切符合わせで日祝日合わせ、と、考えていたら、丁度文化の日に都合が付いた。
 ナイス、文化!

 当日。
 朝7時頃に起き、列車の時刻を確認する。
 行き先は終点の新十津川で……9:53発。
 んーー、本数少ない。
 途中駅の石狩当別まで行く列車はもう少しあるが、そこから先が極端に少ないんだな。よくある田舎列車シフト。
 身支度済ませ、時間を適度に調整して、いざ、琴似駅へ。
 ええと切符は……ああ、自動券売機で出た。
 「一日散歩切符」2,200円。日祝日の道央地域の普通列車が乗り放題。新十津川までが1,600円だから、往復で1,000円安くなる計算。
 まず函館本線で札幌方面にひと駅進み、桑園で乗り換え、学園都市線に乗る。

 いつもと違う急カーブの軌跡で、列車は北へ進み始めた。
 んー、しばらくは住宅地だな。
 学園都市線の名の通り、あいの里教育大とか、北海道医療大学とかの駅名がある。
 列車に揺られつつ、地下鉄の文庫で借りた『新宿鮫』を読む。
 んー、思ったより全然バイオレンス描写は少ないな。アレか、新宿って語句で、魔界都市とか、殺し屋イチとかのイメージが残っているからだ。
 桑園から40分ちょいで石狩当別に到着した。
 ここで新十津川行きの列車を30分以上待つ。
 このペースが、田舎の列車移動のネックだわなぁ。旅情と言えなくもないが。

 乗り放題切符なのを良い事に、外に出て駅周辺を眺める。
 ふむ、すぐ近くに公園と、これは……市民体育館か。割と立派な感じだ。駅に近い体育施設はちょっと良いなぁ。どうしたものか、体育館とかプールは駅から少し離れてるからな。後はローソンが一軒あるだけ。
 反対側は、と。
 薬局と、随分小綺麗な通りと、そっちには地元の物産品を売っている店があった。
 ちょいと入ってみる。
 野菜と米が売られ、食堂っぽいスペースもある。
 ブロッコリーとか良さそうだけど、荷物持って歩き回る気はないので冷やかすだけ。
 他に店らしい店はない。
 こういう所で暮らすとしたら、さぞかし買い物に苦労するだろうな。それとも、とこかにイオンでもあるのかな。

 ようやく来た列車に乗り、石狩当別から更に北へ進む。
 ディーゼル機関のワンマン車、最早珍しくない。
 ぼちぼち周囲の様子が変わって来た。
 だだっ広い農場にぽつぽつと家、遠くに低い山というか森というか。
 事前に地図で見た感じでは、建物がない森や山の印象だったのだが、思いの外明るく開けている。四国の真ん中を抜けたりとか、山陽から山陰に抜けたりとか、谷間の過疎地域をイメージしていたのだが、全く違った。石狩平野、平らだな。
 そうこうするうちに、終点、新十津川に到着した。
 んー、殺風景な駅だ。
 ワンマン車両からも推察出来る通り、改札はない。
 ノートやら熊の置物やらが置かれている待合室を通り、外に出た。

 1889年、奈良県十津川村が水害に遭った際、避難民が入植したのが新十津川町である。
 現在、その街並みは――ただの住宅地だ。
 なるほど、こんなか。
 特に観光でどうこう売りがある感じでもないし、何とも代わり映えしない。
 ぶらぶらと道を歩き、公のものと思われる大きな建物を見かける。
 名前は「ゆめりあ」んー、どっちが先やら。
 あ、なんかヘンな建物ある。

 クジラ?

 新十津川物産館、か。
 何か入りにくい入り口の狭さだけど、覗いてみよう。
 ふむ。
 蕎麦が売られていたり酒が売られていたり木工製品が売られていたり、よくある物産品な店だ。
 先客は二人とかそんなレベル。
 二階はレストランになっているらしいが、行く気にならない事甚だしいな。
 あ、ソバ粉売ってる。
 名産なのかしらん。
 少し前に買ったGAで蕎麦打ちの話があったので、ちょっと気にはなったが、結局買わずにスルー。
 蕎麦が名産って、土地が痩せてますって宣言してるようなもんだよなー。

 物産館を出て川を渡る。
 でっかい川に大きな橋だ。
 この先に滝川駅がある筈。
 滝川駅は函館本線なので、本数が多くて帰りやすいし、行きと違うルートで帰った方が良い感じなので、予定に組み込んでいた。
 歩く。
 歩く。
 歩く。
 酒蔵だ。
 へー。
 って、おろ?
 行き先にもう一つ橋が。
 んー? 二つも川ってあったかな。
 道は間違ってない筈なんだけど。
 ――後で調べた結果、一本目の川が水量の関係か「細く」描かれていて、自分の中で小川と認識していたのだった。土手の内側は水があるない関わらず分かりやすい色で着色してくれれば良いのに。
 橋の下には市民ゴルフ場が作られ、何組もの人々がゴルフに興じている。
 んー、しかし、打って、カートに乗って、移動して、打つ、っていう動きは、こう、スポーツ的に美しくないな。打って歩いてまた打って、ってのの方が良い。
 そんな事を考えながら橋を渡っていると。
 空を横切る飛行機が目に止まった。
 編隊飛行だな。かなり近くて、一緒に動いて……ん?
 なんか、あの飛行機、後ろの飛行機を牽引しているみたいだな。
 次に来た飛行機を更によく見ると、ワイヤーが見えた。

 本当に牽引してる!

 セスナがグライダーを引っぱってたのか。
 なるほど、地図を改めて見るとグライダーの滑空場ってのが載ってる。
 橋を渡り切ったところが町境で、滝川市の看板にグライダーが描かれていた。ちなみに札幌だと時計台が描かれている。
 橋を渡り切り、町の中を歩く間にも、切り離されたグライダーが滑空する姿が見られた。静かに空を飛ぶなぁ。
 何だかキレイだな。細い翼と胴体以外は何もない、真っ白で限りなくスマートだ。
 ガンシップは風を裂くけれど、グライダーは風に乗るからなぁ(ナウシカか <ツッコミ)。

 もう少し歩いた後、滝川駅に到着し、14:00発の列車で帰った。
 二時間ぐらいで帰り着いた。概ね、新十津川方向と変わらず。近いとも遠いとも取れない感じだなぁ。


<出費>
 交通費:2,200円(一日散歩きっぷ)



トップへ