思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2011/12/29 『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第32回 ふきっさらしの山頂だもんで:藻岩山ロープウェイ

 最早毎度お馴染みの感もあるが、地下鉄に乗っていた時、ふと、とある広告に目が留まった。
「もいわ山ロープウェイ リニューアルオープン!」
 あー、そっか。
 何度か乗ってみたいとちらと思いつつ、改装工事中で行けなかったヤツだ。
 営業再開は12月23日。ふむ、行ってみるべぇかなぁ。
 それは決まったとして、何か安く利用する方法はないかな?
 家に帰って調べてみると、オープン記念の乗車券がある事が分かった。
 1,300円で市電乗り放題、ロープウェイとケーブルカーの往復チケットが付く。通常、市電乗り放題のどさんこパスは300円で、ロープウェイは往復1,100円、ケーブルカーは600円だから、700円分安い計算だ。悪くない。

 当日、昼過ぎに家を出て、ドニチカキップで地下鉄に乗り大通り駅へ。
 ……大通りは市電の最寄りではないけれど、別に乗り過ごした訳ではなく。
 祝日なので大通駅以外の記念乗車券の売り場が軒並み休みなのだ。
 つつがなく記念乗車券の購入を完了する。
 片面が絵葉書になっていて、片面が市電のチケットになっている。日付部分が銀剥がし(スクラッチ?)になっていて、自分で使う日を決められるタイプだ。日付を間違えないように気を付けながら月と日を爪で削る。
 大通駅から地上に出て、市電の乗り場に行く。
 丁度良いタイミングで市電がやって来た。

 ……んー。

 ミク列車じゃなかったか(市電が、初音ミクとコラボした車両を走らせている時期だった)。

 せめてすれ違わないかな、と、思いながら窓の外に注意を払っていたが、それらしい車両は通らなかった。残念。

 市電は進み、ロープウェイ入口駅に到着。
 乗車券を見せて降りる。
 本来は170円定額の後払い形式で、共通ウィズユーカードも使用出来る。市電ってこっち戻って来て初めてじゃないかな、乗るのは。
 案内の看板が分かりやすく出ていたので、従って進む。
 と、警備員さんみたいな人が、プラカードを持って「ロープウェイ行きのシャトルバスが出ます」と、声をかけていた。
 へえ、至れり尽くせりだな。
 バスに書かれた無料の文字を確認しつつ、乗り込んだ。
 バスは3人ほど乗客を乗せ、出発し、到着した。
 ……バスに乗るって距離じゃない。近すぎるだろうに。
 混雑時の事故回避だったのかな?
 全く混雑してないけど。

 バスから降りて、よしよし、藻岩山山麓駅だ!
 リニューアルして、前よりもずっとキレイになった!
 らしい!
 初めて来るから分からんけど!

 中に入ると、職員やら警備員やらの人が「さあこちら、さあこちら」という風に案内してくれるので、ちっとも迷うとかはない。どころか、立ち止まる事が困難だ。
 窓口で乗車券の引き替え欄にスタンプが捺され、代わりにロープウェイとケーブルカーのチケットを貰った。
 乗り場前の待合いスペースは、一切冷気は入って来ない完全な屋内で、開業おめでとうの花がずらりと並んでいる。客はそれなりの人数がいるが、混雑とはほど遠い少なさだ。
 親子連れ、老夫婦、外国人と、客層にこれというばらつきはない。観光客が多めなのだろう。
 到着の音楽が流れ、乗車(?)時間になった。
 ガラス戸を抜け、案内されるままにロープウェイに乗り込む。
 うわー、なんかかなり広いぞ、このロープウェイ。
 4畳半ぐらいありそうな広さだ。
 こちとら世界中のロープウェイに乗りまくっているけど(例:熱海、大山)、ここまでのサイズは珍しい。
 吊革があるがバー型ではなく、吊り輪型でなく、グリップ型。握ってみると、当たり前だけど冷たい。
 ロープウェイが動きはじめた。
 ロープウェイアテンダント(というかどうかは知らない)が、見える景色やらロープウェイの説明やらをしてくれる。
 どんどん遠ざかっていく札幌の街。見晴らしいいな、そして平らだなぁ。
 元々、山麓駅の時点でかなり見晴らしが良かったが、ここまで来ると本当に良く見渡せる。そしてロープウェイがでかいから高さの怖さは特にない。
 中間まで進むと、下りのロープウェイとすれ違った。
 うわ、凄い速さだ。
 下りは速いんだな(ねーよ)!
 5分ほどで中腹駅に到着した。
 あら土産物屋だ。
 やはりここも職員さんのウェルカム攻め。
 ……客が少なくてヒマで仕方がない感じだな。
 レストランがあるが、ディナーは予約いっぱいにはなっているらしい。
 ええと、中腹から山頂に向かうのがケーブルカーか。なるほど。
 名前はもーりすカー。ACが上がりそうな名前だな。
 出発時間を待ち、乗り込む。ロープウェイ同様15分間隔で出てる。
 乗り込むと、対面シートになっていて、その間にも立ち乗り出来る、簡単に言うと電車の輪切りみたいな構造をしていた。って、シートは埋まってて、立ってるの自分だけなんですけど。
 微妙な居心地の悪さを感じつつ、もーりすカーは出発した。
 ケーブルカーだが、レール付きのロープウェイのような感じで、本来ケーブルカー向きではない急斜面を進んで行く。3分乗るか乗らないかのうちに、山頂駅に到着した。

 やっほう!
 山頂に到着した!
 藻岩山を踏破したぞ!
 まるっきり歩いてないけど!
 ……歩いて登ったらそうとう辛いよね、これ。何の誇張もなく雪山だし。登山者のスキー跡あるし、登山者用の休憩所とかも併設されてるし、駅部分は登山用スパイクで入るなとか注意書きあるし。
 さてさて、展望台へ上がろう。
 駅舎の屋上が展望台になっていて、望遠鏡があって、「ここからだと下界はこんな風に見えますよ図」が設置されていて、恋人達の聖地チックなモニュメントがあって、という、構造。ロードヒーティングが半端にあるのか、半分ぐらいは雪がなく、もう半分は雪が残っていて、道が出来ている部分と出来ていない部分がある。道のない方に入ろうとすると職員の人に注意される。
 おー、見晴らしが良いなぁ!
 良いけど!
 吹雪いててほとんど見えないね!
 それもそうだしメチャメチャ寒いね!
 山の上で風を遮る物がないせいで、吹き曝しだ。
 リンケ体感温度では風は1mで1度冷えるというが、プラス20度がプラス10度になるのと、0度がマイナス10度になるのとでは、危険度が違う感じするものなぁ。
 さっさと建物の中に戻った。
 ふぅ、寒かった。
 全体的に小綺麗だけど、狭くて見るべき物も特にない。これはそう、タワー系と近いかも知らんね。メダルの刻印機と90年代のSNKのアーケードゲームが足りないけど。

 その後、同じようにケーブルカーとロープウェイで降り、市電で中央図書館まで行ったところ、買おうか買うまいか迷い続けていた北大路魯山人の『春夏秋冬 料理王国』があったので借りた。更に、地下鉄では、琴似を通過して発寒南まで行き、安かろう悪かろうスーパー「北海市場」に行って買い物をした。
 乗り放題の切符は余計に使った方が得した気分になるよね。

 ちなみに『春夏秋冬 料理王国』は、『魯山人味道』と2、3割ぐらいは原稿がかぶっていたが、普通に楽しめた。旨い物の話系は少なめで、「料理とは」の方が強めだから、「お腹減る度」は味道が上、「ブレねぇな」感はこっちか。芸術家の心意気的なものが分かりやすく表現されている。実際には幸せではないとか、人当たりがどうとか、嫌われてたとか言われがちだが、それがどうした、であろう。
 芸術が扱う美は、本来実用や機能の副産物としての美を、単体で成立させようという、極めて不自然でむしろ有毒な代物である。海に塩分があるが故に生き物は生きられるが、食塩ならコップ一杯喰えば死ぬ。致死物質たる美を扱う者が、毒に当てられるのは当然だ。作品以外の部分の作者なんてのは、組み立て終わったプラモデルのランナーのようなもので、論ずるに値しないものだ。


<出費>
 交通費:500円(地下鉄:ドニチカキップ)
 交通費:1,300円(もいわ山ロープウェイリニューアルオープン記念共通乗車券)
 計:1,800円



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