思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2013/7/28 『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第51回 乏しい水源を持ちながら激しい出資によって目覚めた伝説の銭湯:湯処 花ゆづき

 札幌は、南部に定山渓温泉を持ち、平野の都市部でも天然温泉を掲げる浴場が散見されるなど、温泉場としての側面を持つ都市である。
 そんな中で、泉源を持たないいわゆる普通の銭湯が生き残る為にはどうすればいいのか?
 単なる風呂に付加価値を付けるスーパー銭湯、これが答えの一つである。
 だが、一言にスーパー銭湯と言っても、その定義は曖昧模糊としており、緑色なのかと思えばパツキンになったり、それで終わりかと思ったら2があったり、筋肉だけムキムキにして「父さんを超えてしまった」とか言ってみたり様々である。
 そんな曖昧なスーパー銭湯だか天然温泉だか判然としなかった微妙にご近所の「花ゆづき」に行く日が来るのは、必然であったろう(論理破綻)。

 会社からの帰り道、愛車ぽす太の生体ナビ(思考)をちょいと変更して、JR琴似駅から桑園駅方面へ数分走ったところで、宵闇に浮かぶ花ゆづきに到着ー。
 こんな場所にあるので、普段からよく見かけていたのだが、札幌に来て5年目でようやく入ったという辺り、自分の興味の薄さが伺える。
 さて、自転車置き場は……木造っぽい軒の更に奥か。
 蛍光灯がやたらチカチカしてるな。
 入り口から入る、と。
 下駄箱がずらりと並び「海水浴帰りの方は、ここで砂を落としてください」との掲示と共に、手箒が置かれている。
 海水浴帰りに寄る人もいるのか。まあいるのだろう。
 ちなみに、北海道の海水浴は、バーベキューやキャンプとセットになっているのが定番のようで、ビーチにテントが並ぶ。これは恐らく気候によるところが大きく、関東圏でそういう事をやったら多分、テントの中で蒸し焼きになるのがオチだ。
 コイン式ではない下足ロッカーに靴を入れてカギをかけ、階段を上がる。
 2階は駐車場からの入り口で、その上、3階が営業区画となる。
 入ってすぐのところに、理容室があり、その先に受付カウンタ……じゃないな、マッサージ店のカウンターだ。で、その更に奥に券売機があって、その先に受付カウンターがある。
 入り口から店員さんと顔を合わせるまでの距離が実に長い。電気店とか、1階に駐車場スペースが作られている店舗ってこういう感じはあるよな。

 入浴料、大人650円を支払い奥へ。
 タオル類もレンタルしているが、今回はフェイスタオルを一本持って来たので、これで全部済ませる。
 浴場前は食堂とくつろぎスペースになっていて、食堂の方は食券を買って窓口で品物を受け取る学食スタイル。
 メニューは蕎麦とか天丼とかで、特にこの地方、この店ならでは、ってものが見えなかったのでスルー確定。
 それでは大浴場へ。
 手前に、香蒸洞という別料金の岩盤浴みたいなのがあったが、マイナスイオンとか書いてあったので興味なし。まあそもそもこの店、「ナノテクで水に分子振動を加え」とかパンフに書いてあったりするので、健康効果には全く期待していないのだが。

 耳に馴染みのない方に一応補足しておくと、「マイナスイオン」は、マイナスの電荷を帯びたイオンの総称であって、範囲が広すぎて何も表していないのと変わらない。例えば塩水なら液中にナトリウムイオンと塩素イオンが存在し、この場合のマイナス側のイオンは「塩素イオン」だ。それが具体的に言えないというのは、
「あいつって嫌なヤツだよね」
「そうなんだ? なんかされたの?」
「すごく嫌なヤツで、みんな嫌ってるんだよ!」
 というレベル。
 根拠がないのだ。
 根拠があればそちらを声高に喧伝するに決まっているし。
 ナノテクも同根。「ナノテクノロジー」は、微細な物質を扱う技術の総称であってこれも幅広すぎて何も意味しない。「活版印刷法」とか「粗挽きネルドリップ方式」とか、最低限、何をやっているのかが想像出来る名前が存在して然るべきで、それがないというのは、要するに何もやっていないということか、さもなければ、具体的にやっているものを人に見せたら「効果がないんじゃないか?」と思われる程度の内容である、ということ。

 さて、とはいえ、湯に罪はない。
 脱衣室で用意して、入るべし入るべし。
 洗い場と浴槽は割とはっきり分かれているタイプで、シャワー型の洗い場も並んでいる。
 3、40センチぐらいの背の高い浴室椅子に座って身体を洗う。
 北のたまゆらでも椅子はこの高さだったけど、これが今のスタンダードなのかね。家庭用の二倍ぐらいあるよな。
 いや待て、家庭用ったって、今自分が家で使ってるものは、踏み台兼用の折りたたみ式で、椅子系では一番小さいのかも知れん。
 ちなみに桶はケロリンではない。
 ケロリンではございませんでした(嬉しそうなニュースキャスターの声で)。
 公式サイトで確認しておいた通り、リンスインシャンプーとボディーソープが備え付けられていたので、これで髪と身体を洗ってから湯船へ。

 そこそこ客がいるな。
 割と遅い時間だと思うけど、これ、一番混む時間ってどれぐらいなんだろう。
 こっちは泡風呂。水流に強弱あるらしい。
 それから大浴槽は……電気や低周波の流れるポイントが各所に付いてるのか。いわゆる完全に真っさらな普通の湯船がないんだな。
 まずは、弱電気とかのところに入ってみよう。
 ふむ。
 うむ。
 なるほど、なんか、腰をぎゅっと押さえられるような感覚が。面白いな。こういうのが面白い。
 低周波は……とん、とん、って感じ。
 電気の刺激で筋肉の方が勝手に動いてるだけなんだろうけど、衝撃として感じられるのが面白いねぇ。
 一日2、3回、3分以内とか書いてあるけど、守ってない人多そうだな。つか、守らせる気があるなら、タイマーとか付けているだろうから、まあ、あくまで目安なのか。
 こっちは……備長炭冷水……水風呂だ。身体を熱くしてから水風呂に入るってのをやる人いるけど、心臓とかに凄く悪いのに何でやるんだろ。それを無視してしまう程に気持ちいいのかな? その感覚はちょっと分からない。いきなり冷たいもの、って基本不快だと思うんだけどね。
 これはサウナか。
 ちょっとだけ覗いてみよう。
 テレビが置かれていて、温度は90度ぐらいか。
 んー、暑い。
 プールの採暖室と根本が違う事を思い知らされる暑さだな。
 息苦しさはないような気がするが、高濃度酸素発生器とやらの効果か? しかし、居心地が良かったらそれはそれでのぼせる率が上がりそうだ。
 とまれこうまれ長居せずに出よう。暑い。
 隣にあるここもサウナ系か。
 漢方薬炉。漢方薬が使われてるみたいだ。
 足元だけ湯があって、これは足湯っぽくするのか、それともここに座るのかよく分からないな。それから漢方薬のせいなのか目に染みる。出よう。
 身体をざっと流して、水流風呂。うん。泡のお風呂はバブルスターな感じ。
 炭酸風呂はなんか数名がずっと占領していて入れないから、露天風呂へ行こう。

 夜風が涼しいな。
 真冬だと雪見になるのだろう。
 足湯と乳白色の湯と石釜と、何種類かある。テレビが置かれているのでのんびり過ごすのには良いのだろう。
 でも、こんな時もテレビがないと過ごせないってのは現代人の病理がどーのこーの。
 多分、後10年ぐらいしたら、スマホが防水デフォルトになって、みんなでスマホいじりながら入るようになるんだろうな。盗撮対策はGPS機能を利用して「撮影禁止区域」を設定したりとか、出来るだろうな。いや、もっと考えれば、撮影した映像を行政が自動収集する事で盗撮の証拠として保存できるな。
 これは素敵な未来図。
 拝啓ビッグ・ブラザー


<出費>
入浴料:650円
計:650円


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