思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2014/4/26 『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第60回 みゅ? シャーー!! 勝俣じゃないよ(面白いヤツ)!:ミュシャ展 北海道立近代美術館

 自分の所属する合唱団「弥生奏幻舎“R”」は、主に札幌市の北区民センターを練習場所としている。
 公的な施設の常として、イベントの入場割引券が「ご自由にお取り下さい」になっていることがよくある。
 いつぞやの練習の後、ふとミュシャ展と篠山紀信の写真展の割引券があるのを見かけ、持ち帰った。
 ミュシャに何かしらの思い入れがあったワケではなく、2ちゃんのまとめサイトで、ミュシャが好きだとの記述があったのを何となく覚えていた程度であった。

 当日。
 社会福祉士の通信講座のレポートの資料探しに札幌市中央図書館に行った後、愛車ぽす太を走らせ北上する。
 雪はもうほとんどなく、見上げる山やたまに日陰になった土の上にある程度。これなら自転車も走りやすくなっている、訳でもない。
 この時期の路面は、冬の雪にまかれた滑り止め用の砂利がかなり残っている。
 砂利、と言っても、校庭に敷き詰められていたアレを考えるのは間違いである。あんなに優しい形をしていない。滑り止めの砂利は、スタッドレスタイヤで磨かれたミラーバーンに食い込んで靴を止める為のものであるから、大きさとしては一片3、4ミリぐらい、立方体かそれに近い形をしていて、その角は砕きたての鋭さを残している。つまり、自転車のタイヤを切り裂きそうな勢いだし、そこで転んで擦り剥いたりしたら、ちょっとモザイクが必要な画像になる可能性が高い。
 実に道路清掃車が待ち遠しくなる状況である。
 程なく、北海道立近代美術館に到着した。
 実際には、この時点まで行くか行かないか迷っていたのだが、目の前まで来たのだし、まあいっとくか、という感じで決定した。
 北海道近代美術館は、来るのが二度目である。
 勝手知ったるロビー内、真っ直ぐ特別展のブロックへ向かう。
 チケット販売のブースで割引券を使ってチケット購入、中へと入った。
 結構人が多いな。
 土曜の昼下がりという事もあるが、若い女性が多いような気もする。
 まあ、若い男性や、中年の男性が、美術館にどれだけ来るか、というのもあるが、作風からして女性受けはしやすい気はする。逆に男性受けする美術作品ったら何だろう。刀剣とかはそうだろうけれど、美術云々よりも「切れ味」という機能に興味の大半が向く気がする。機械類とか博物館系で、あんまり美術って感じではないのかも知れない。その違いは、生物的な云々を理屈づけるよりも、ジェンダーに拠るところが大きそうだ。

 展示は冒頭に今回の展示の説明があり、次に自画像があり、その先に進むと、どこかで見た印象の強い、円をモチーフにした背景に花と女性というレイアウトのイラストがいくつも並ぶ。様式としてはアール・ヌーヴォーというヤツで、美術に疎い身としては何となくほんわかした印象しかないが、装飾過剰なデザイン寄りの感じか。
 2ちゃんで出ていた事からも分かるように、女性の描き方にいささかのデフォルメがあり、分かりやすい美しさ、可愛らしさみたいなものがある。当時の萌え絵の類だったのか、それともまたなんか違う扱われ方だったのか。映画ポスターから売れ始めたところをみると、やはり芸術云々というよりも「このポスターの娘カワイイ!」みたいなのが原動力であったろうなぁ。

 萌え絵における「かわいい」「美しい」の表現と、絵画のそれとは似ているようで異なる。
 萌え絵は極めて大掴みに言えば、つまり漫画からの派生であるが、漫画における「かわいいキャラクタ」は、「かわいい」という記号を持ったキャラクタである。例えば、睫毛という記号が描かれていないキャラは不細工で、睫毛が描かれているキャラはかわいいというような、ルールによって決まる。「いや、睫毛のないキャラもかわいいぞ」と思っても、作中では不細工評価を受けるので「そういうもの」として受け入れざるを得ず、次第にそれが感覚として染み付く。萌え絵は、そこからある程度普遍性を持った記号を使用して、ストーリーと切り離してもかわいく見えるように工夫されているが、それでも記号の使用は行っている為、この漫画的な文化が染みこんでいないと、かわいいと感じられない。逆に、漫画的な文化がしみ込んでいると、強烈なかわいさを感じることになる。
 反面、絵画は漫画程には思い切った記号化はされていない為、文化的な背景が異なる相手にもかわいいと受け取られ易い。より本能に近い部分に訴えかけるのであろう。

 作品は、春夏秋冬の擬人化や、宝石の擬人化などが並んだ後、スラブ叙事詩なる連作の抜粋が大トリとなった。今までと異なる筆致で、これがライフワークとして描かれたものであるというような説明がついていたが、暗い感じだし、スラブの苦難というのは日本人の自分にはよく分からないし、最初からこれだと売れなかったろうなぁ、とは思う。

 すっかり見終わってから、おみやげでも買おうかな、と思ったが、お菓子4つ入りで千円とか、無茶な値段が付いていたのでやめた。
 その後、JR桑園駅まで足を伸ばし、回転寿司のとっぴ〜で食事をして帰った。
 ネタが適度に大きくてお得感があるのは、北海道の100円よりグレードの上の回転寿司のデフォルトであるが、油っこいネタが多かった気がする。店の雰囲気からしても、トリトンやなごやか亭には太刀打ち出来ない感じになってしまっているんだよなぁ。桑園駅というそもそも通過上等の寂れた駅なのも原因と言えば原因だろうけれど。


<出費>
入場料:1,200円(割引券100円分使用)
食費:1,674円(廻転寿司とっぴ〜)
計:2,874円


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