思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2014/6/28 『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第62回 研究機関のひ・み・つ:北農研公開デー

 クラーク像と言えば北海道大学だが、もう一つ、それを売りにしている場所がある。
 それが、羊ヶ丘展望台である。
 もっとも、羊ヶ丘展望台のクラーク像とは、手も足も付いており、胸像としての威厳もへったくれもないのだが、クラーク博士の偉大さが七難隠しているので否定はしない。
 この展望台からは、札幌の街が見渡せるが、その視界の多くを占めるのは市外ではなく緑の大地である。
 これは、タダの畑や野原ではなく、北海道農業研究センターなる施設で、農業の発展を目的とした研究機関であり、その役割は大きい。
 実験への影響や、情報の漏洩などを防ぐ為、通常は関係者以外の立ち入りは制限されているが、年に一回だけ一般市民にも門戸が開かれる時がある。それが、「北農研公開デー」である。
 取材班は、謎に包まれた先端研究機関の実体を暴くべく、潜入したのである。

 要するに、色々ぐぐっていたら、ヒットして、年に一度しかやっていないらしいので、これ幸いと行く事にしたのである。

 当日。
 9:30の開始時刻に合わせて、朝イチで行くぐらいのつもりだったが、日焼け止めを塗ったり何たりしているうちに、出発は少々遅れた。
 ドニチカキップを買って地下鉄へ。
 大通で地下鉄東豊線に乗り換えて、終点福住で下車する。
 福住は、札幌ドームの最寄り駅で、何度か来た事がある。
 さて、ここからなのだが。
 ウェブで確認した案内図がどうもはっきりせず、GoogleMapでもよく分からなかったが、ともかく羊ヶ丘展望台の下の方だろうという曖昧な位置関係のまま歩く。
 うむ、札幌ドームが見えて来た。
 手前にあるファイターズショップに行列が出来ている。
 日ハムの限定品でも出るのか、それとも試合の日なのか、当方、そういう事に興味がないので全然分からないな。
 札幌ドームの間近まで来てから曲がる。何だかんだで距離を歩く事になりそうだったので、自販機で爽健美茶を買う。少し見ないうちに、妙に細いボトルになってるな。お手軽っぽくて悪くはない。
 札幌ドームを左手に見ながら坂を上がる。羊ヶ丘展望台に向かう道だが、そこまでは上がらず、最初の交差点を左折する。これで、研究センターの敷地とぶつかる筈。
 筈――。
 歩道を歩くが、なんかこの道、下の方を通っていて、陸橋をいくつもくぐっていく。
 んー?
 一つ上に上がる階段でもあれば、と思うのだが、そういうものは何もない。一箇所、フェンスを越えられそうな場所があったが、そういう入り方をしてはアレなのは分かる。大人だから。結局、一本道が終わったのは清田区だった。
 ここではない、な。
 引き返したところで、間近をスピード上げた自動車がどんどん通るばかりの面白味もない道だし、バスとすれ違ったし、ジョージ・ジョースターの教えに則って、先へ進んでバス停を見つけよう。
 はあ、大学が見えるな。札幌国際大学。この辺りのランドマークになっていそうだ。
 反対車線にバス停が見えたが、こっちにはないな。まあ、進むうちに見つかるだろう。そもそも、福住から徒歩圏内、研究センターの敷地をまたいだ程度の距離しか離れていない。
 ああ、やっぱり見つかった。バス停だ。色々系統があるが、五分ぐらいで福住行きが来るようだ。
 待つこと暫し。
 やって来たバスに乗り込む。
 バス料金は、札幌市内の交通機関用ICカードのSAPICAが使えるので、使用する。
 今まで幾度もお世話になっていた共通ウィズユーカードは、5月末をもって販売終了となっており、使用期限は今年度中。SAPICAは地下鉄のみ10パーセントのポイント還元で、共通ウィズユーカードの1万円で15パーセントに劣るので、人によっては買い込んだりするのかも知れないが、自分はそれほど頻繁に使う予定もないので、流れに身を任せ余分に買う事はしなかった。そもそもこういうのって、あると思うと使ってしまうという傾向があらあね。カードの罠。
 バスは来た道をそのまま戻るのではなく、坂を上った分降りてから福住方面へ戻って行く。
 と。
 車窓から「北海道農業研究センター」の文字が。
 あ、ここか。
 降りますボタンを押し忘れたが、乗車する人の為に停車していた隙に、運転手さんに言って前ドアを開けて貰った。

 北海道農業研究センターへ到着ー。
 ええと?
 中に入ると、係員というか職員というかそういう人が、声をかけて来る「巡回バスは丁度今行ったところですけど、歩いても行けますよ」。
 微妙に不穏な響きがあった気がするが、歩く事にする。
 ひたすら真っ直ぐで長い落葉松並木を歩く。北大のポプラ並木より遙かに長い。まああれは基本立入禁止なので、全部歩いた事はないが。倒れたポプラでチェンバロが作られたんだったな。
 右手の方からしばしば開けた敷地が見え、覆いを掛けて何かを栽培している様子が伺える。けれど「大事な実験をしているので立入禁止」のプレートが立っているから、入ってはいけないようだ。
 落葉松の並木は更に続く。思った以上に距離があるな。あ、この辺の落葉松は、やたらと支えがしてある。この真っ直ぐで背の高い木というのは、やっぱり倒れやすいのかしらん。並木になっているところからしても、結構すぐに大きくなるタイプっぽいし。
 ようやく並木が終わったら、順路は曲がっていく。更に進んで、遠くに会場が見えてきた。なるほど巡回バスが必要な距離だこれは。
 会場は、センターの建物の周囲にテントが張られてブースが出ている感じで、ゲートらしいゲートがある訳ではない。でも、受付はあった。名前と大雑把な居住地域と来訪者種別を書く。自分は一般市民枠になるか。インクジェットプリンタで作ったようなパンフレットを受け取り、会場に入る。

 会場は建物内と建物外があって、建物外はテントが並ぶ。テントは、農産物を材料とした商品の販売が少しあって、他は研究内容の発表や、新しい品種の試食なんかを行っている。どれも、説明役の研究員の人が付いているようで、説明を求めたら色々教えてくれそうな感じだが、誰もがその手のものの素人なので、口頭の説明はたどたどしい。
 ブースの一つで勧められるままに、米粉の麺を食べてみる。ふむ、ビーフンとは違う感じ。
 あっちは精米の体験をやっている。あの、瓶に玄米を入れて棒で突くヤツ。しかし籾殻を取るまでは分かるが、その後にわざわざこういう行程を思い付くとか、昔の人は色々考えたものだ。アク抜きみたいなイメージだったのかな。手法が確立する前は、ゆでこぼしたりとかしてそうだ。
 こっちは衛生研究。乳房炎の診断とかで牛の乳房の模型が置かれていたりする。
 これは牛の食べる飼料に関するブース。結構な量だ。ビニールで巻かれたサイレージもそのまま置かれている。ビニールの破れ目を作ってあり、中身を見る事ができる。ほう、牧草の塊かと思ったけれど、トウモロコシの粒が見える。なるほど、ただの牧草ではなくて、この時点で色々混ぜ込んでるのか。パンフレットには、これを「人間の食べ物で言うと漬け物です」と補足がしてあった。そうそう、「動物のお医者さん」と「もやしもん」でサイレージの話が出ていたが、発酵を経るんだよな。
 牧草品種についての説明もパネル展示されている。牧草には稲科と豆科の草が混在しているが、豆科が大きくなりすぎると稲科の成長を阻害し、また、蛋白質を取り過ぎになるので、葉の小さい品種を作り――って、現代農業ってそんな事までやってんのか。物事というのは、想像以上に緻密に出来上がっているんだなぁ。

 建物の中の展示も眺める。
 子供を含め、客も結構いるせいで、あまりじっくり見られない。
 最大風速を出してみよう、とか、稲の葉の面積を測ろう、とか、DNAを抽出しよう、とか、要予約の子供対象のものが多い。
 農業害虫も展示されている。ゴミ虫や線虫の他に、シャーレに入ってる毛虫は、なんか、さっき歩いてた時に見かけたなぁ。

 一通り見た後、再び外に出る。
 と。
「日高晤郎ショー、もうすぐ収録です!」
 との声がかかった。
 さっきから気になっていたのだが、スタップらしき人たちが「日高晤郎ショー」の看板を掲げている。日高晤郎ショーは、北海道のラジオ番組で、日中一杯が放送時間の帯番組だ。日高晤郎というのは、芸人らしいが、ラジオで喋る人というのはコサキンと伊集院光と日高のりこぐらいしか知らないので、説明をする言葉を持ち合わせていない。
 興味はないけれどないなりに、ちょっと眺めてみるか。
 テントの一つでバターロールのような形の塩パンを買ってから、芝生に腰を落ちつける。
 パンは天然酵母を使っていることが売りの、こういうところで実に良くあるタイプだ。
 まず一口。
 ややパリッと感のある表面で、バターの味わい。
 原材料名を見ると、発酵バターとなっていた。乳酸発酵させる事で、酸味や香りに変化が現れるらしいが、まあ食べ比べでもやらない限りは分からない。
 バターが多いのか、こってりめ。
 うん、なかなかうまい。天然酵母とか発酵バターとかの効果は分からないが、うまい感じ。
 そうこうするうちに、収録が始まったようだが、メインは音楽のリクエストコーナーのようで、レポーターの人が少し喋ったら曲になってしまった。その間はインタビューをする訳でもなく、喋るでもなく、まばらな見物客も所在なさげだった。
 もう少し見ていようかとも思ったが、何だかぽつぽつと雨が降り始めたので、巡回バスに乗り込んで会場を後にした。
 福住駅の最寄りの降車場で降りてから、ドーム前を通って福住駅まで戻ったが、途中で多くの野球ファンらしき人々とすれ違った。デーゲームをやる日だったようだ。

 その後、大通で降りて、とらのあなで百合星人ナオコさんの最新刊の特典付きがないか眺めたが、既になくなっていたので、ブックオフに行ったら、○本の住人の5巻とデイドリームネイションが巻飛びで4冊あったので、株主優待券を全部使って購入した。2,100円のところ、1,100円。ブックオフの株式は、配当が2,000円ぐらい付いてたから、取得コスト7万円と比較するとかなり割が良い。
 古本屋というのは法令一つで合法性を揺るがされかねない商売なので、永遠に保有するような銘柄ではないかも知れず、含み益があるうちに売る方が利口なんだろうけども。まあ、もう少し保有していても良いか?


<出費>
交通費:710円(ドニチカキップ:500円、バス:210円)
飲み物:130円(爽健美茶)
食費:100円(塩パン)
計:940円


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