思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2014/9/20 『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第65回 このへんないきものは、あんまりとなりにはいないのです:登別マリンパークニクス「へんないきものMONSTER編」

 今月もどこに行こうか北海道の観光案内サイトなんかを眺めてところ、登別マリンパークニクスの「へんないきものMONSTER編」が見つかった。
 以前、登別伊達時代村に行った時、この水族館の存在とクマ牧場の存在は認識していた。
 もしも四泊五日の北海道旅行、とかなら、絶対に全部一日で回る事案だが、そこは北海道在住の強み、今度来る場所リストに追加して保留していた場所だ。まあ、仮に行っていたとしても、特別展という事で「初めて」要件は満たすのだが。
 しかしレジャー施設って、所用時間的にも費用的にも体力的にも、一日にハシゴするようには出来ていないのに、遠方への旅行だと思うとそこらの感覚が麻痺するよなぁ。行けなかった場所がある事にイライラするより、目の前のものをただ楽しむ事が出来ないものか……って、その域はもう割と冗談抜きで悟りとかそういう次元ではあるな。

 当日。
 一日散歩きっぷ道央版を買い、琴似6時19分発のJRに乗り込む。
 特急と比べると片道で50分ぐらい遅いし、本数もかなり少ないが、安さには代えがたいものがある。
 一日散歩きっぷが消費税で値上がりしたと言っても、2,260円で往復全て出る。特急の場合、往復割引のSきっぷで4,160円、4回の回数券であるSきっぷフォーでも8,120円。高速バスはマリンパーク入場券とのセットで5,000円で一応勝負にはなるが、JRのオプション割引をマリンパークに適用したら合計で4,460円で、はっきり安い。バスは座席が確保されている強みはあるが、カーブの角度が急であること、路面が平板でない事、車両に閉塞感がある事、など、自分の肌には合わない。そんな感じで、JRに乗るのである。
 札幌と北広島で乗り換えた後は一本。
 各駅停車で登別へ進む。
 土曜だが、部活だろうか、学生がちらほらと乗り込んでいる。
 車中、社会福祉士試験の参考書なんかを見ながら過ごす。本来、2年かそこら通学して受験資格になるものを通信教育で済ませているので、こう、知識の根の張り方が弱いんだよなぁ。太い根はともかく、その周りにびっしり生えている毛のような細かい根がない感じ。
 そうこうするうちに、登別駅に到着した。

 8時38分。開場が9時なので、ダラダラ行って少し待つぐらいで丁度だろう。
 まず、マリンパークのチケット引換券をみどりの窓口で買う。
 時代村の時には利用し損ねたが、JRの利用者は、クマ牧場、時代村、マリンパークの割引が受けられるのである。何となく一日散歩きっぷをチラチラ見せながら買ったが、「では乗車券をお見せ下さい」みたいなやり取りはなかったので、あんまり明確に確認はしていないのかも知れない。ちょっと分からない。
 クマの剥製と座れる像が飾られた出口から、駅の外に出ると、もう右手の方にマリンパークの建物が見える。
 この前来た時は割と遠く感じたが、改めて見ると結構近い。
 行く道はただの住宅地で、何というものもない。
 10分と歩かないうちに、敷地の入り口に辿り着いた。
 パークというだけあって、有料区画の前にも広々とした芝生がある。
 後、ギリシャ風か何かの列柱が正面の通路沿いに立っている。
 メインの建物はヨーロッパ風だからちぐはぐ? いや、中世以降にもこういう柱は作られてるから良いのか。
 あー、中に観覧車があるのが見えるな。観覧車って、ゴンドラがチャチだと、板一枚下は地獄感があって、結構怖い気がする。
 何をするでもなく待つうち、係員の人が入り口のドアを開いたので中に入る。チケット売り場が外にあったが、余程の繁忙期しか使わないようで、「チケットは中で買いな、HAHAHAHA!(意訳)」と、表示があった。
 中に入ると、こじんまりしたロビーがあって、ドア一つくぐると、目の前にお城風の建物と、周囲に細々と土産物屋やレストランなどが並ぶ、ヨーロッパの街並みと中央の広場といった雰囲気。
 ……って、待て。チケットを見せるなり何なり全然してないぞ。
 ロビーに戻って、窓口でJRのオプション券をチケットと引き替えて貰う。
 団体客が来ていたので、それと混同したか、単に見落としたか、ぬるい作りだ。

 改めて中に入る。
 ええと、最初に見るべきは……おっ、へんないきもの展の看板あった。
 入ろう。
 正面の城ではなく、右手の建物に入る。土産物屋と合併しており、暖簾を一つくぐると、さほど広くない展示スペースに水槽が並んでいた。
 ふむ、変なナマコだ。まあ、普通のナマコからして変な感じだが。
 おっ、今回の企画展のポスターの主役になっていたダイオウグソクムシさんじゃありませんか。
 世界最大のダンゴムシ、でかい。
 でかいが。
 ちっちゃいのもいる。
 30センチの大人サイズと、小判ぐらいの掌サイズ。
 ちっちゃいのかわいい。むしろ初めて見た気がする。
 大きいことが特徴なのに、小さいのが稀少とか、ワケの分からん逆転現象が発生しているな。これはつまり、雨の中で捨て犬に傘をさしかけず、ただ、そこらに落ちていた新聞紙をかぶせるだけでさっさと行ってしまった不良が、なんだかレアで酷い人みたいに見えるのと一緒だ(回りくどい)。
 他に、岩のようなオコゼとか、首や手足の長い亀とか、巨大な花咲ガニとか、クマムシ(肉眼では見えない)とか。
 常識を打ち破られる程のものはなかった。
 やっぱりちっちゃいダイオウグソクムシが一番印象に残ったな。向かいの土産物屋でも、完全にダイオウグソクムシを推している様子だったし。推すと言えば、「推しメン」という語句はどうなの? 一瞬MENを想像してから、「ああメンバーという語句を切り詰めたけか」と理解する。こう、省略すべき場所で省略していない、スパコンとかはがないとか、ブッチホンとかそういう語句の持つのと同じ居心地の悪さを感じる(ブッチホンは略語とはちょっと違うだろう)。メンとバーで区切るのは、男根の隠語として使う時だけにしておきたいものである。

 では、メインの水族館側に入ろう。
 ヨーロッパの城風の建物に、濠が作られており、跳ね橋風に橋が渡されている。
 中に入ると、見上げるほどの高さの水槽がお出迎え。
 幅や奥行きには欠けるけど、高さはなかなか良い感じ(新江ノ島や美ら海と比べない事)。
 順路はエスカレーターで上に行くんだな。
 と。
 おおお。
 エスカレーターが大水槽の上を通る。
 通常の手すりより高い仕切りや何かはなくて、ヤコブの梯子的に空中を横切るという趣向。
 これ、なかなか凄い。
 魚がうじゃうじゃいるのが上から見られる。
 うっかりカメラとか落としたら大変だ。ジャッキー・チェン辺りが映画の撮影に使うなら、昇りながらの乱闘シーンの舞台になって、ザコ2、ザコ3辺りがほとんど自滅で水槽に落ちて、サメのアップで次のカットに行くようなところだ。
 真上から大水槽を見られる水族館はそんなに多くはない気がする。美ら海では見られたが、あれもある程度限定的な展示という扱いだった。

 上がり切って少し進むと、タッチプールがあった。
 ヒトデやウニに触れるもので、まあ珍しいものでもないが――って、通路曲がったら第二弾のプールある!
 猫鮫と――エイ!
 エイは初めてだ。
 棘に注意とか注意書きがあるが、職員が貼り付いているワケでもない。
 子供が無茶をして怪我をして訴えられて、みたいな事を怖れない姿勢は昨今珍しい。
 人さし指でそっと触ってみる。
 柔らかくぬるりとした触感。
 鮫肌のざらりとしたイメージだったが、そうだよな生きてる魚ってこんなだったよな。
 いやぁ、稀有な経験だ。
 おや?
 まだ。
 タッチプールがあるぞ?

 生きている化石、カブトガニ先生!

 おお、すげえ。
 カブトガニだけのタッチプールがあるとは。
 記憶を辿ると、どこだかのタッチプールで見かけた気はするが、そうそうあるものではないし、数はダントツだ。
 触ってみる。
 硬い。亀の甲羅よりも鎧感が強い。
 触られても逃げるとか騒ぐとかなく、ただ僅かに動く感じ。
 この生き物、よく生き残れたな。
 しかしタッチプールの充実度高いな。
 ――後日、予約限定ながらダイオウグソクムシも触れる企画が始まったとの事。なんだこの充実度。

 タッチプールが終わり、通常の展示に移る。
 ふうむ、魚と――こっちは両生類か。
 おお、このヤドクガエルもの凄く綺麗だ。
 黄色と黒で、毛のないボディはいかにもメカっぽい。
 こっちの緑がかった水色の蛙は、モビルスーツのよう――って、あれ? こんな色のモビルスーツあった気がするけど、なかったかな。モビルスーツはアニメ色していて、こういう淡い色は少なかったか? ケンプファーは色が濃いし、ああそうだ、ハイゴッグだ。この蛙はハイゴッグっぽい。曲面の多さからしても。
 しかし、ハイゴッグとズゴックEを別々に開発する意図がさっぱり分からない。ゴッグの発想を進めたものがズゴックではないのか。ズゴックの発展としてハイゴッグのフォルムなら分かるような気がするんだけれど(注:ポケ戦のMSは、後継機としてデザインされたのではなく、既存のMSを現代風に書き直したというのが最初のコンセプトなので、本当はズゴックとゴッグのつもりで二種類出したのだという事は分かっているのです。分かっていて言いがかりを付けているのです)。
 水中トンネルもある。結構長い。これ、最初にエスカレーターで上がった時にも見えていたヤツだ。他のところよりも長いな。というか、二箇所ある。でも水中トンネルって、思った程には楽しくないんだよな。水中トンネルの本質は、「自分が水の中にいるみたい」と感じる部分にあると思うのだが、トンネル自体が広くて大きいと、それはもうただの水槽と距離感が変わらない。であれば、もっとずっと狭く、人が一人づつしか通れないようなものにすると良い感じになるかも知れない。客数さばけないし、圧迫感に楽しむどころじゃなくなるかも知れないけれど。

 メインの展示を見終えて、外に出た。
 イルカのショーが始まるとのアナウンスがあったので、見に行く。
 うん、イルカだ。
 飼育係の人の腰に付けた餌箱がよく見える。あれ、鯵かな、ホッケかな。
 しかし、知能が高く、人とコミュニケーションが取れる筈のイルカだけど、やっぱり餌をたんびにやらないと動かないんだろうか。犬みたいに褒められる事が嬉しくて芸をする、っていう風にはならないんだろうか。劣っているとか見苦しいとかではなく、ちょっと不思議だ。

 イルカのショーの後は、少し間を空けて別の会場でアシカのショーがあるらしいが、まあそれは別に見なくても良いかな。割と見飽きた感もあるし。
 爬虫類館をちらりと覗く。アナコンダでけぇ!
 それからぽつんと離れたところにある鰯水槽も見る。かなりでかいな。何かショーをやるらしく、椅子が並んでいる。イワシって飼育が難しいからなかなか水族館では見られない、というのが30年ほど前の常識だったが、時代も変わったよな。
 さて、これからどうするか。
 今が10:30過ぎぐらい。
 適当な間隔でショーが入るが、主たる展示は見たのでぼちぼち帰りを気にしながら動くかな。
 携帯電話で路線検索をしてみる。琴似までだと面倒そうだから、苫小牧まで行く列車で検索すると。
 ――12:13発。
 普通列車をないがしろにすると滅びるぞ。

 仕方がないので、時間までもう少しのんびり過ごす。外に出ても手近なところに何にもないし。
 まず、アザラシの餌やりを眺める。
 アシカショーに人が行っているので、こちらの観客は自分の他に二人しかいない。アザラシもリラックス出来て、陸に上がって来られていると、飼育係の人が説明していた。
 アザラシのプールには、輪が縦になったような通路が水面上に作られ、アザラシの宙返りのような泳ぎが見られる。
 通路の中の水は水面よりも上にあるのになんで落ちないんだっけ、と、しばらく考えてようやく、気圧の加減で保持されるという学研漫画的知識を思い出した。ついでに比重の大きい水銀を使って同じ事をやると、大気圧だけでは保持しきれず、少し真空の部分が出来るという、トリチェリの実験を思い出した。

 展示は大体見たし、遊園地側は子供だらけになりそうだし、昼食をとる事にした。
 まだ客の全然入っていないレストランで、鱈とチーズの焼きカレーを頼む。
 待つこと暫し。
 サラダと細長い皿に盛られたご飯と丸いオーブン皿に入ったカレーが出て来た。
 ん……。
 どうやって食べるんだ、これ。
 アラジンのランプみたいなアレに入っていないけれど、ご飯と別盛りなのか。
 スプーンで一口づつかけながら食べてみるが、カレーを飛び散らしそうでどうも上手くいかない。三分の一ぐらい食べたところで、ご飯の方を浸せば良いという事に気付く。
 ああ、そうか。
 面倒なだけじゃないかと言いたくはなるが、焼きカレーという形態からすると仕方がないか。
 味は飛び抜けてうまいとかマズいとかはなかった。鱈は元々クセも少ない魚だし邪魔はしていない。チーズが入る事を考えれば、それだけでは物足りない味になるという事かも知れない。
 付け合わせのサラダはフライドオニオンが散らしてあって、想像以上にサクサクしていた。

 その後、ペンギンのパレードを少し見てから、予定通りの列車で帰り、15時前には家に辿り着いた。
 明るいうちに帰られるとちょっと得した気分になるんだよなぁ。
<出費>
交通費:2,260円(一日散歩きっぷ)
入場料:2,200円(登別マリンパークニクス、JRオプション券使用)
昼食:990円
計:5,450円


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