思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2014/10/31 『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第66回 SAPICAデポジット分の消化:第9回札幌国際短編映画祭

 地方の大都市の常として、札幌では色々な芸術関係のイベントが行われることがある。
 札幌国際短編映画祭もその一つのようで、少なくとも映画の撮影所があるとか、発祥の地であるとかいう訳ではないが、それでも映画祭は開かれるのだ。
 何年か前から、中吊り広告や大通に作られた会場やらで、目には留めていたが、参加の仕方がよく分からないとか、そもそも映画自体をほとんど観ないとかでスルーしていたものである。
 期間が10月8日〜13日。丁度最終日が休みになったので、行ってみることにした。

 イマイチ見にくい公式サイトで会場を確認する。
 ええと、セレモニーが何? 主会場が? あれ? ええと、どこだ? ええと……ああ、狸小路の映画館か。
 プログラムは時間によって違うが、基本的に丸一日やっている。ガチガチに狙いを定めて吟味して観るようなものでもなかろうと思うので、あくまで時間の有効活用優先で、午前枠に行く事にした。

 当日、11時の開演に合わせて、10時頃に愛車ぽす太で出発した。
 来月には自転車が乗れるか乗れないかという季節になるんだよなぁ。
 札幌の雪景色は綺麗だけど、やっぱり移動のコストが増大するのが短所だ。
 勝手知ったる道を特に問題なく進み、とらのあなの向かいの市営駐輪場に自転車を停め、狸小路に向かう。
 狸小路は、大通公園とすすきのの中間にある東西に延びるアーケードで、土産物屋や飲食店、雑貨、衣料など、一通りの商業店舗が揃っている。地下街とも接続している為、冬であっても全く雪を踏まずに札幌駅から来る事が可能である。
 大学時代は、ゲームやらPCの周辺機器やらを買いに幾度となく来たものだ。擬似的な貧乏生活のせいで、地下鉄を使う事はほとんどなかったので、自転車か徒歩だったが、北15条の東4丁目から、よくわざわざ来たものだと思う。
 狸小路に入ると、ずらりと短編映画祭の黄色い旗が掲げられていた。けれど、それにあやかった商売をしているという訳でもない。大体ここは、いつもこういう温度の気がする。
 歩く事暫し、会場である映画館、札幌プラザ2・5に到着した。
 狸小路に面したチケット売り場の横に、タイムスケジュールが大きいボードで掲げられている。
 んだけど、値段設定が分かり難いな。
 1プログラム券と3プログラム券と、オールナイトパスとVIP回数券とアワードプレミアム券とアワードセレモニー券――で、アワードプレミアムは普通のプログラム券では見られなくて――。
 分かり難い。
 更に、高校生の割引だか無料だかもあるようで、混乱することしきりだ。
 フリーパスと各プログラム固定の1回分だけではいかんのか? 映画祭を謳うんだから、フリーパスへの敷居は低くても良いような。
 何プログラムも観る気はないので、1プログラム券だな。
「ああ、チミ、この1プログラム券というのを貰おう」
「SAPICAをご提示頂ければ、割引がございます」
 そういうのをやってるのか。
 偶然にも持っていたので割引を受けることができた。
 というか、札幌に住む人なら持っている率は凄く高いだろうけれど。
 一応言っておくと、SAPICAは地下鉄とバスに対応しているICカード。北海道のICカードというとKitacaで、地下鉄のも乗れるのだが、SAPICAの方が地下鉄とバス限定ながら1割のポイントが付くのでデポジット分を差っ引いてもお得なのだ。
 入り口でもぎりをしていた人が微妙に素人っぽかったが、主催運営が札幌市になるからか。
 では、館内へ。
 ふむ、スクリーン大きいな。
 広さはそれほどでもない。シネコンの一つぐらいか。
 ギリギリではないからか、空いている。
 前から5番目ぐらいを目安に腰を落ちつける。
 昔からある映画館だと思うけれど、シートは綺麗で豪華感がある。少し調べてみると、平成22年に改装を行っていて、平成23年に映画館としての営業を終了し、イベントスペースとしての営業に切り替わったということらしい。
 待つこと暫し、館内が暗転し、映画が始まった。

 この枠のプログラムは「イマジネーションの扉」と題されていて、7本の短編が上映される。
 パンフレットの他に、アンケート用紙と、投票用紙が渡されている。既に部門賞とかは付いてるから、この投票用紙は総合の何かを決めるぐらいに使うのだろうか。投票したい作品の番号部分を手で破って印を付けるというもので、とてもお手軽。
 最初は『森の向こう側』。モノクロのクレイアニメによる赤ずきんをモチーフにした話で、森が家の机だったり植木だったりするのだが、クレイアニメのクレイを本当に粘土っぽい粘土にしているのがちょっと面白かも知れない。筋自体は特に捻りはなくてつまらない。映像を楽しむタイプ。でもピングーの方が遙かに動く。比べるのが悪いか。
 次が『通りすがりの恋』。高層ビルから飛び降り自殺をしている最中の男が、途中の階から飛び降りた同じく自殺した女と、運命の出会いをして、落下中に逢瀬を繰り返し想いを成就させるというコメディ。地面に到達して死ぬオチは順当なんだけれど、後味はあまり宜しくない。奇跡を起こすのもご都合が過ぎるけれど、どうせなら、幸せな時を過ごして、共白髪となって、人生に満足して息を引き取るというタイミングまで時間を圧縮してやれば良かったような。でも悪くはない。
 3番目が『ローラーブレード』。ローラーブレードを買って欲しい子供が、ゴミ集めの爺さんが回収していた古いローラーブレードを盗みに行く話。結局、爺さんの家を全焼させてしまうのだけれど、これは何だろうなぁ。社会情勢への批判か何かなのだろうか。それとも、子供の頃の小さな後悔を懐かしく思い出して欲しいとかだろうか。こういう道具立てだったら、盗みに行って、爺さんにバレて、でも許して貰って、でも親達の誤解やら何やらで爺さんは追い出される事になって、爺さんごめんなさいからの、いいんじゃよに繋いで、ジジイかっけーで締めるというルートが期待されるものなのだが、その辺のラストが投げっぱなしの印象。現実はそんなものじゃない、ということであれば、じゃあお前なんで創作なんかしてるのって話だし。イマイチ。
 4番目『無限回廊』。右と左にドアがあって、片方を開けると片方に繋がるという道具立てで、修理に来た男が出られなくなる話。正直気持ち悪くなる。天丼は3回までだろうと思う。ドアを開けて、反対側に行ってしまうのが1番目、じゃあ、と、反対からドアを開けても戻ってくる。ボールを投げたら後頭部に当たる。そこから先は、外に出る為に色々積み上げて行かないと。リアクションを楽しむというのが多分見方なのだが、これ、一人芝居なのが致命的に問題だ。二人であれば、掛け合いでドラマの作りようもあるが、一人でドアのあっちとこっちがというだけでは、ラッキョウを剥いているようなもので、イライラするだけなのだ。オリジナリティだってないよね、これ。どっかで観たよ。媒体は知らんけど。これを楽しく魅せられるのなんか、全盛期の志村けん、しかも特撮やCGをつかわないパターンしかいないぞ。技術だの努力だのは知らんが、二度と見たくない。
 5番目『アイ・ラブ・ユー』。一台の車と一曲の音楽をキーに、男が妻との幸せだった思い出を思い起こす、ほとんどが回想の話。取り留めもない話なのだが、最終的に回想にあった車(多分同型の別機体)を中古で手に入れ、走り出すという形が、すっきり収まった感を出すのに成功している。
 6番目『やったね! ベルナール』。子役賞を取っていた作品だというのは、後から知った。ヒステリックなママの「はやく大きくなりなさい」との言葉に対抗するために、成長しないと決めた少年の話。それこそが思春期の反抗期の行動であり、成長そのものですよ、という辺りが笑いどころか。映像的には、成長抑制スーツというものがアホらしくて良い感じなのと、中性的な美少年の主人公が見どころか。話自体のオチはあまりキレはない。きっちりと作るのであれば、成長成長うるさい母親、成長抑制スーツで反抗する主人公、引っぺがされるスーツ、繰り返し×3、最後には自己防衛機構を付け母親を撃退。怒る母親を、父親が横目で見ながら「いや、アレ子供の技術力を超えて来てるだろ」みたいなツッコミからの「あなたは黙ってて」で首をすくめるところまで。
 最後が『サイの行進』。ボーイミーツガール。街と心を通わせているという妄想を持つ内向的な青年が、色々な街を転々としている外交官の娘に恋をして、言葉の代わりに一本のフィルムを作り想いを告げるという話、で良いかな。少々塔は立っているが。こういうのも悪くはない。もっとも、ガールの方が少々尻が軽い感じで、その後苦労しそうだけど。
 結局投票したのは『サイの行進』だった気がするが、「これ最高」みたいなものは特になかった。
 でも恐らく、そういうものに出会うためには、大好きなジャンルの中の、大好きな作品に、こちらが受容できる精神状態でいる、という三本立てで揃える必要があるので、なかなか難しい。
 例えば、思い起こす中で「これ最高」と思った事物は、アニメの『ゆゆ式』であるとか、ゲームなら『Fallout3』であるとか、結構前になってしまうのだ。

 アンケートまでは書く気がしなかったので、投票だけして会場を出てから、ブックオフやとらのあなを覗いて帰った。
<出費>
入場料:1,100円(SAPICA提示による200円割引済み)
計:1,100円


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