思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



 月記帳 バックナンバー

2006  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2007  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2008  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2009  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2010  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2011  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2012  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2013  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2014  1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月
2015  1月  2月
2015/3/28 『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第71回 どこ行く? どか行く? どかゆき!:IWAMIZAWAドカ雪まつり

 IWAMIZAWAは思うワケよ、札幌の雪MATURIは確かにナイスだけど、豪雪地帯の都市と言ったら、NAICHIの人はどうか知らないけど、DOーMINGにとっちゃ、IWAMIZAWA一択だってね。センキュゥ!
 確かキャロルのリーダーがこんな感じだった気がする(コロッケの十戒:元ネタ曖昧のままでパロディをやらないこと。それからキャベツを忘れないことナリ)。

 札幌駅と大通駅を繋ぐ「地下歩行空間」は、あの東北大震災の翌日に開通するというタイミングの悪さのせいで、開通記念式典も中止となり「いつの間にかあった」という扱いの広大な地下通路である。
 地下鉄ひと駅分を歩くというと結構な面倒さが感じられる表現であるが、時間で言えば10分かからない。大通駅と札幌駅は東西線を利用して来た場合には乗り換えが必要にもなり、待ち時間等考えると歩いた方が早くなる事が多い。
 この歩行空間は、北海道にありがちな、通路と呼ぶには広すぎる道幅を持っており、両側ではよくイベントごとが行われている。地域物産やイベントの紹介ポスターが貼られている事も多く、ある日、目にしたポスターもその一つだった。
「IWAMIZAWAドカ雪まつり」
 ふむ。
 雪祭りのパクリなので、とりあえずJASRACに通報したら、あいつらなんか音楽にこじつけて金をむしり取るかも知れない。実際、白い恋人達の中に、特定地名が出て来ていたら、間違いなく札幌市財政は傾きを強め、夕張に先駆けてアレな都市になっていたであろう(アレ言うな)。
 しかし、何かというと豪雪でJRが止まったり自家用車が埋まったりするする岩見沢の市民が、その風土を不便ではあるけれど不幸ではなくむしろ個性であると認識したような、別の言い方をすれば「魔法陣グルグル」で動き続ける呪いをかけられた中でダンスコンテストを行った村民のようなヤケクソポジティブ感のある響きだ。グルグルがその後、キタキタおやじのスピンオフと、第二部が始まっているという展開を、当時の読者である今のおっさん達はどれほど気付いているのだろうか。ちなみに、話はともかく、絵はなんかマズい方向に進んでいる。短絡的に劣化とは言わないけど。こういう場合、過去の絵と並べると、意外にも最近の絵の方がまだマシだったりする事があるから。

 当日。
 朝イチで行こうと思いながらもダラダラしながら、十時を過ぎてからJRに乗り込む。
 雪解け間近、というより、割と融けている。
 会場はどんなだろう。
 想定内とは思うが、少々不安にはなるな。
 札幌乗り換え後はいしかりライナーで一路岩見沢へ向かう。
 今年は少し雪が少なかった感じもする。
 社福の試験で通った大麻を抜け、列車はハッシシる。今のくだりの面白いところは、大麻(おおあさ)駅を、禁止薬物である大麻(たいま)の別名ハッシシにかけたところだけど、大麻に住んでいたり郷土愛を抱いていたりする人の前で言うと、凄く怒るような気がするから注意。

 小一時間ほどで、岩見沢駅へ到着した。
 岩見沢というと、合唱関係でちらちらと来た事がある程度だな。
 大体合唱絡みの時は、コンディションの維持が必要なのと、集団のペースで動くのとでスケジュールはぎっちりで、「行っただけ」になりがちだ。思い起こせば祖父母のところへ里帰り、なんて時も、往復は親に、現地では親戚なりに連れられて動くだけで、結局、点の思い出しかなかったりする。
 父の実家が福岡だが、自分で九州旅行をするまで、土地イメージがごく小さい田舎町一つ、歩いて三十分もない範囲で完結していた。
 土地を訪れる旅行は、白地図に色を塗っていくようなものだ。ペンを持つ時というのは、後ろに人が立たれるだけでも気が散るもの。手を添えられれば最早自分で塗ったとは言えない。ペンを使う事を覚えたならば、後は勝手に塗らせて貰いたい。一人旅の効用はこういう部分であろう。
 車窓から、既に会場がちらちらと見える。
 なんか、雪の塊に人だかりがしているな。
 どれどれ。

 改札を通り、長いエスカレーターを降りる。アホみたいに、と、言おうかと思ったが、りんかい線や大江戸線のそれよりはマシなのでとっておくことにする。
 勝手知ったる岩見沢駅、ロータリー側の出口から出て、真っ直ぐ進むとホールや官庁のある方に行き、会場は左だな。
 ああ、会場あった。駅前ロータリー直結だ。
 ゲートらしいゲートはないが、人だかりがしてテントと露店がいくらか。何だかんだで空気が冷たいこの季節、屋外で物を食べても味なんか分からないし、特に目新しいものもないしなぁ。数十メートルの露店ゾーンを抜けると奥には泥で汚れた土の匂いがしそうな雪像が建っている。
 微妙な手作り感と、微妙な商業主義感が混じっている(比較対象の為に言っておくと、札幌雪祭りは商業主義が九割ぐらい。起源が市民の自発的なボランティアだった事は知っていますー)。
 細長い会場には、雪像、というか、雪のすべり台が幾つか並び、正面というか中間というかにステージが設けられ、今は人形劇をやっている。なんか玉葱とか特産品を擬人化したヤツが、修行して悪と戦っている。脚本も演技も緩いなぁとか思うが、あんまりガチガチにやっても所詮キャラがゆるキャラっぽいからあれがバランスが取れているのだろう。
 美味しんぼにあった「安いハンバーグは安いパンの方がハンバーガーとしてまとまりが出る」の理論だ。もっとも、ちょっとお高めパティを使ったプレミアムバーガーみたいなのが発売されている昨今、その理屈が本当に正しかったかはアレだが、別にあれは漫画的演出だから良い。アレがダメなら、包丁人味平は営業停止だ(言う程読んでない)。でも富井副部長、お前はダメ――っていうか、既に明確なアルコール依存症なので、東西新聞の産業医はさっさと要入院の診断を出せば良いだけの事だ(だから、漫画的演出にリアルを持ち込む必要はないと)。

 雪が融けかけて、足元はぐずぐずだな。豪雪地帯だからと言ってもさして気温は変わらない。まあ、雪は一定気温以下なら発生する訳で、後は降水量の問題なのだから当たり前ではある。
 雪のすべり台は、雪像を兼ねた形で、二メートル程度のものから、四、五メートルはありそうな大きな物まであり、一番大きいものはチューブで滑る形式になっている。全部で10基ぐらいはあるか。
 滑っているのは子供ばかりなので、自分で滑る事や、カメラを向ける事は難しい。
 世知辛い世の中だ。むしろ、ダミーのデータで押し流してしまえば、個人情報は埋もれるような気がするが、それ程簡単でもないか。検索精度が上がるだけか。でも、情報を全くネットに流出させない、というのは、OSのセキュリティホールを完全に塞ぐようなもので、突き詰めればインターネットの独裁的運営、検閲になるだけで、それはつまり、「犯罪者が来ないように道路を通行止めにしました」というようなものだ。安全は求められて当然であるが、そこにはコストがあり、確率による不幸があり、そしてその不幸は相対で決まってしまう部分がある。日本人は曝し上げを不幸と見るが、明日の食事を手に入る事や、銃口が向いていない事を幸せと見る状況にある者もいる。
 確率で思い出したが、確率という語句を、何もボケるべき文脈でないところで、確立と書かれるとそれ以上読みたくなくなる。とか言っていると、自分でも過去にやっているぞとか突っ込まれそうだが。
 で、セイの格率って何なのさと思うんだよ。寄生獣にサブタイなんか付いてなかったろうと。セイのカタカナ表記に何の意味があるんだよ。分かるよ、生と性で、この場合の性は「サガ」とも読ませる、生物の性質、本質みたいな事をどーたら言いたいんだろうさ。格率がカントの提唱した理屈だっつーのもさっき知ったさ。だが、ダサイんだよ。セカイの中心でアイを叫ぶのパクリをしているかのようにダサイんだよ。子供を子どもって言うぐらい、本質を理解せずに日本語を使っている感覚があるんだよ。
 言葉がダサイというのはマズいんだよ。美しくないんだよ。思考の根幹に関わる部分が美しくないって事だよ。
 世界は基本的に美しく出来ていて、人間もその一端であるのだから、美しくないと機能不全を起こす。この場合の美は、合理的である、腑に落ちる、当たり前である、無理がない、そういう機能美が原点だと考えると良い。
 美醜は人の好みという理屈があるが、それは思考停止であって、究極的な美の形は存在する。現実の話をしているんじゃなくて、実験室的、論理的な理想状態の話をしている。数学や何かが到達する世界の話をしている。リンゴ二つを三人で分ける時に、「喧嘩をして奪い合う、アハハ」ではいかんのだ。いや、ジョークなら良い。だが、それを異常と気付かずに使ってしまう無神経、それを個人差として思考停止する姿勢、そういうのが結局、本質を隠す。訳が分からなくなる。無知を良しとする、醜を善とする、美醜が同一であるなら命と死も大して代わりはしない。
 ――さて。
 ミニ動物園もあるな。
 羊と……おお、犬だ!
 ハスキー犬(多分)。
 の。

 仔犬だああああああ(中型犬ぐらいには大きい)!

 かわいいなぁ、オイ、カワイイなぁ、ハァハァカワイイなぁ!

 足太いよ、でっかくなる証拠だよ。
 どうぶつのお医者さんで見たチョビのちょっと大きくなった頃合いだよ。

 んー。
 まあ、猫派なんだけど、ボサボサじゃなくてモフモフ系の大型犬は良いね。座り姿がサマになっている。猫の座り姿の背中のラインが立体芸術の目標点の一つである事はコーラを飲んだらゲップが出るぐらいの常識だけど、大型犬の座り姿の美しさは別の良さがある。がっしり力強く骨太で、工芸品的な美しさだ。猫がしなやかに風を受け流すとしたら、大型犬はブリザードに立ち向かう氷壁のようだ。
 写真をいっぱい撮りたいのだが、子供が群がってどうやってもフレームインするので、通報されないように一枚だけ撮っておしまいにしておく。

 会場の一番奥は体育館で、自衛隊の演奏会があるらしい。
 イマイチ音楽を聴く事へのモチベーションがないので、じっくり聴くつもりはないけれど、出入り自由なので、ちょっと入ってみる事にする。
 入り口で、自衛隊員の人にチラシを貰ってビニールの風除けをくぐる。
 パイプ椅子の並んだ体育館内に、ステージが設えられていて、演奏中。
 かと思ったら、リハーサル中だ。
 吹奏楽団だな。
 地元の学校とも一緒に演奏をするのかな。そんな事がチラシに書いてあった。
 音楽は上手いとか下手とかが、なんか分からなくなって来るのが困ってしまう。合唱絡みで音楽好きと過ごす事は多かったが、どうもピンと来ない。「良いな」と感じた時、それが音楽自体の力なのか、何らかの記憶と絡んでいるからなのか混乱する。
 それはつまり「あなたが私の作った唐揚げを良いねって言ったから、私は七月六日が好きなんだよ」みたいなもので、それ自体が好きでは全然ないって事になる。だが、本当に耳障りな音なら流石に思い出の力をもってしても補正出来ないだろうから、まあそれなりに好みではあるのか? と、でもそのレベルでは、音楽好きの人と会話は成立しなんだなぁ。

 演奏会場を出て、これで一応一通り会場を見た事になる。
 まあ、帰り時刻を見越してぶらぶらするか。
 岩見沢と琴似は乗車時間こそ一時間かからないが、普通列車の本数が少ない。一時間で特急含めて4本、普通列車だと2本だ。ド田舎ならこんなものではないのは知っているが、目の前で列車に行かれて三十分待つのは気持ちの良いものではない。
 んー、三十分にならない程度時間があるが、さてさて。
 よし、駅の中を見よう。
 岩見沢駅は地方なのに妙に立派なのが有名で、単なる改札やみどりの窓口の他に、観光センターや展示スペース、法律相談所なんかがくっついている。展示スペースは今は、芸術系の大学の卒業展示会のようだが、ちょっと入りにくいな。こっちは……お? 線路の資料展示がある。
 ぶつ切りにした線路と、説明が展示されている。
 ふむふむ、線路は昔は輸入でしか作れなくて、岩見沢には色々な種類の線路が集まっていた、と。
 え? 岩見沢駅の外観に線路が使われてるのか。あのシマシマ、線路なのか――(外に出てみる)――なるほど、線路が外壁に貼り付いている。役に立ってるかどうかは分からないが、正直に受け取るなら、鉄骨のようなものか。よく考えると、踏切装置の周辺に線路を使った囲いを見た記憶があったが、そういう鉄骨としての使い方はそれなりのノウハウがあるんだろうか。
 しかし、線路がしばらくの間輸入だったって、そんなに作るのが大変なものだったのかな。日本の鋳造技術というと、オーパーツ的に優れていそうなイメージがあるけれど、線路はタイプが違うのか、単にでか過ぎるのか。まあよく考えると、自分の手を使って刀を打つ事はイメージ出来るが、線路を作る事はイメージし難い。なんだあれ、押し出すのか、くっつけるのか? いや、くっつけたら首が折れそうだし。調べてみると、熱した材料をローラーで何度も圧延するらしい。
 展示を見終わって、線路をまたぐ連絡通路の方へ行ってみる。へえ、駅の中に駐輪場がある。なるほど、豪雪地帯だから……ってちょっと待て、そんなに雪の時期に乗らんだろう。保管も請け負ってるのか?
 線路の真上ぐらいの位置から、会場がよく見える。
 おや、裏手に当たる線路と挟まれたところで、スノーモービルの乗車(?)体験を行ってるな。
 興味は湧くけど、やっぱり子供が乗って喜ぶ系だから、大人はご遠慮下さい、ってヤツだ。
 実際のところ、スノーモービルってどこでどう乗るんだ? 軽く調べてみたら、現在はナンバーを取れるものは発売されておらず、公道をどうしても走りたいなら、古いナンバー付きを使うか自分で基準に合うように改造して登録しなければいけないらしい。基本的に公道走れないのか。確かにバイク屋の店先にはあっても、道を走っているのを見た事はないなぁ。
 その後ぼちぼち時間になったので、JRに乗って帰った。


<出費>
交通費:1,680円(琴似―840―岩見沢―840―琴似) 計:1,680円


思い立ったが随筆 トップへ トップへ