思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2015/11/28 『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第79回 ゆけむり温泉サババラバラ事件:新千歳空港温泉

 北海道の真ん中へんにある札幌市民にとって、新千歳空港は道外へ玄関口としてもっとも手軽なものと言える。
 北海道新幹線の開通によって、この図式が崩れる可能性はあるが、青森や仙台程度の距離ならともかく、関東から西へはやはり、空路が選ばれるのではなかろうか。
 この新千歳空港は、新と名前が付いているが、その開港は1988年であり、けんちゃんラーメン新発売とおおむね同じ意味の新である。
 そんな中、国際線就航に伴い増築が完了して、もうちょっと新しくなったんじゃよ、というのが2012年の出来事であった。

 空港内のじゃがポックルシアターで、国際アニメフェスティバルだかなんだかが行われるという情報を見かけた。
 日本の作品が弱虫ペダルと巨人中学とかだから食指は動かないし、ジ・オリジンの2話は混雑して多分無理だろうしとか色々思いながらも行ってみる事にする。
 巨人中学は知らないけど、弱虫ペダルはなぁ……最初は面白かったんだけども、インターハイの特別ルールで付いて行けなくなった。最初にゴールしたら勝ちというだけのルールなのに、途中の「賞」(副賞もポイントもなし)のためにスタミナ削るとか、勝負を舐めているとしか思えない。それが現実のルールと全く違うとなると、もうこの世界に入り込めない。独自の世界はその世界なりに筋の通った理屈で動かなけりゃ駄目だ。作り切れないなら、現実通りの世界でやれば良い。
 野球がバットではなく「手で打つ事もできるルール」という架空世界を作って、何故か手で打つ奴らばかりで「もう手の骨が限界だ」みたいな話を感動っぽい雰囲気でやるような滑稽さだ(例えとしてどうか)。

 一日散歩切符を買い、JRで琴似から札幌で乗り換え、快速エアポートで新千歳空港へ。
 旅行バッグ引いてる人結構いるなぁ。
 月曜日に休んで四連休とかにして旅行ってのはあるのか。
 つつがなく新千歳空港に到着ー。
 改札を出て、空港特有の長いエスカレーターを上ると、そこは土産物屋街になっている。ここは昔からそんなに変わってはいないな。
 エスカレーターで更に上に上がる。
 中央の広場では、ジ・オリジン、巨人中学校、それから初音ミクの展示がされている。後で覗いてみるかな。
 シャアザクの絵があるが、角度をずらしてモノアイがとんがって見えるように描かれている。そこまでやるとザクっぽさがなくなるな。まん丸お目々だと弱そうって事なんだろうけど、ザクはやっぱりモノアイ感が欲しい。ぎゅごぽーん。

 じゃがポックルシアターは四階だな。
 あ、初音ミクのスペースが出来てる。後で覗こう。
 んー、あった、シアター。じゃがぽっこー。
 特設の整理券配るところはあるようだが、上映スケジュールはどこだ?
 中か? なんか違う感じ。
 ええと……。
 ウロウロするうちに、ようやく上映スケジュールを発見した。受付の横にも貼っておけば良いのにな。
 今日は、特に目玉の作品をやっている訳ではない、と。なんか、国際的な短編的なアレをやる感じか? なんにせよ、微妙に案内がなぁ。
 んー、どうしたものか。

 と、シアターの向かいに新千歳空港温泉が目についた。

 ああ、あるんだよな、温泉。
 23時間営業で、ちょっとした宿泊施設代わりにもなるらしい。
 ええと、普通に風呂に入る分には、1,500円か。
 一度も入った事ないし、ここは一つ入ってみるか。
 入り口をくぐる。
「いらっしゃいませ、お風呂のご利用でしたら、靴はそちらの袋に入れてお持ち下さい」
 従業員さんに言われるまま、エコバッグ風の靴袋に靴を入れてカウンターへ行く。
 入り口から見て正面がカウンター、右手に食堂があり、左手の奥は浴室やマッサージ屋なんかがある。広々とまではいかないが、それなりの面積はありそうだ。
 カウンターで入浴の料金を支払うと、ロッカーの鍵を渡された。
 バーコードが付いていて、中で何か金を使う事があったらこれでツケ払い、出る時に精算という方式らしい。なるほど、考えたものだ。こういう所のでの財布の扱いはいつも何となく困るからなぁ。
「くつろげる作務衣か浴衣をお貸しできますが?」
「作務衣で」
 バッグにひとまとめになった作務衣とタオル二枚を持って、浴場へ行く。
 脱衣場で、鍵の番号のロッカーを見つけて開ける。
 上下二段の身長より少し高いぐらいのロッカーだが、バッグに着替えにタオルに、と入れると結構いっぱいになる。
 茶色いフェイスタオルと鍵だけ持って浴室へ。
 お、あかすり用のナイロンタオルと、シャンプーブラシがある。借りていこう。使い捨てのカミソリや歯ブラシもあるな。後で必要だと思ったら貰おう。

 浴室は、洗い場が何列か並び、大きな浴槽が一つと泡の浴槽と露天風呂、それからミストサウナに高温サウナ、内線で呼び出してあかすりを頼めるスペースもあり。まあ、この手の温泉施設としては普通の部類か。
 洗い場で身体を洗う。
 桶が木桶なんだな。風情はあるが、裏面がヌルつくし重いので善し悪しかも知れない。
 まず髪を洗ってー。シャンプーブラシっていつも使わないけど、使ってみよう。使った方が良い理由ってどっかにあるんだろうか。爪をガシガシ立てるタイプだと使った方が良いだろうけど、指の腹派だからな。
 リンスインシャンプーではなく、別々だ。ボディーソープも別。手間がかかってそうだな。
 洗い終わっていざ、温泉へ。
 うむ、ぬるめだが良い感じ。
 茶色い湯だな。タオルが茶色いの湯で染まるのを目立たせなくする為か。糸がほつれているけど、まあ気にしない気にしない。
 こっちは泡風呂。
 床がぎざぎざの石造りで滑りにくくしてある。
 水風呂があるが、これは無視して、露天風呂。
 うん、露天だ。
 飛行機のジェット音が聞こえる。空港、空港。
 スーパー銭湯系で露天風呂にテレビが設置されているパターンがあったが、あれは興醒めだよな。露天は空だのなんだの、見る事による楽しみが大きいのに、テレビって。きちんと甘いミカンに砂糖や香料をぶっかけるようなものだ。
 露天風呂の奥は寝湯。
 この石を枕にするのかしらん? 高すぎて身体が安定しないな。ひょっとしてうつぶせ用か?
 冬場だと雪見の露天になるかな。積雪するほどのスペースはなさそうだけど。
 中に戻って、今度はスチームサウナ。
 スチィイィーム。
 身体を軽く流して、汗を拭いてから今度は高温サウナ。
 あ、ここにはテレビあるんだな。
 あまり長居出来ない温度だ。温度計どこだ? まあいいや、出よう。
 浴室から出て、身体を拭き作務衣を着る。
 七分丈のズボンが足短く見えそうだ。
 さて、浴場の外をこっちに上がるとリラックスルーム……女性用マッサージチェア……このスペースが女性用なのか? そうでもないのか? よくわからないな。
 下へ降りて、ゲームコーナーを見る。テトリスとタイムクライシスあるな。タイムクライシスは何作目なんだろ。
 あとはメダルゲーム系と、ネットの麻雀。まあ、やる気にはならない物ばかりだな。
 こういう時に何があればやるだろうなぁ。
 1942とかあったらやってるかも。そういうレトロゲー系がまずは一つ。それから、ベルトスクロール系のアクションの、変に難しそうじゃないヤツ。それからそう……まあでも、あんまり浮かばないな。少なくともネットワーク対戦みたいなのは絶対やりたくないな。テレビゲームという遊戯はお手軽な達成感が良いのであって、全身全霊を込めて鎬を削るようなのは、一つの競技となり遊技の領域を超える。強くなった方が楽しい云々は、コスト意識のない発言だろうと思う。
 ゲームコーナーを出て……マッサージ系は受けるつもりはなし。興味なくはないが、何しろ高い。格安のてもみん系の評判なんかを聞くにつけ、それなら、なんか口実付けて、鍼灸院でも行った方が良いのだろうなと思う。
 土産物はほんの形ばかり。
 飲み物は売っているが、だったら食事をしてついでになんか飲む方が良いかな。

 この手の施設お馴染みの、食堂兼のんびりするスペースに入る。
 テーブルに座椅子でのんびり座れる。多少の居眠りは許される……と思う。多少は。本格的に眠りたい人には有料の個室がある。
 あ、ここ、席にボタン付いててセルフサービスじゃないんだ。
 メニューをぼんやりと開いてみる。
 色々あって、大体、7、800円とか1,000円のクラス。外の食堂が1,000円超えが標準だから、やや安いような気もする。
 斜め後ろから、食事だけの利用で来たと思しきサラリーマン風の二人のやりとりが聞こえる。
「――ここ結構良心的で穴場だよ」
「しめさば丼ってどうですか?」
「結構うまいよ、限定だし」
 何となくそんな感じだよなぁ。
 しめさば丼ねぇ……。
 秋限定、数量限定って感じだし、まあ、悪くはないか。
 店員さんに声をかける。
「注文を」
「まず、お先にバーコードを読み込ませていただいてよいですか?」
 ああ、そういうシステムだったっけ。
 ノンアルコールビールとしめさば丼を注文する。
「お待たせしました」
 一呼吸でノンアルコールビールが出た。
 空いているせいもあるだろうが早い。良いね。
 小瓶のノンアルコールビールをグラスに注いで飲み干す。
 端っこの方にあるテレビを見ながら、ぼんやりとする。
 半分ほど飲んだ辺りで、しめさば丼が来た。
 お。
 ばらばらに切り分けられたしめさばが、放射状に並んでご飯を覆っている。
 メニュー写真と同じだ。きれい。
 どれ、まずはしめさばを一切れ。
 うん、脂が乗ってて塩加減も良いぐらい。
 少しだけわさび醤油をかけて食べ始める。
 おや。
 鯖の下にガリがあった。
 これは不意打ちだな。
 鯖とガリの相性は、鯖ガリ巻きが回転寿司の定番になっている事からも明らかだ。
 ふむふむ。
 味噌汁は麩と刻みネギだけのシンプルなもの。
 後は、たまり漬けらしき大根の漬け物が少し。
 ふむなかなかうまい。
 野菜は足りないが、これで空港で900円なら上出来だろう。

 食べ終わった後、少しぼんやりしながら残りのノンアルコールビールを飲み、席を立つ。
 脱衣室に戻り、せっかくなので歯ブラシを一本貰って歯磨きをする。
 着替えてからカウンターへ鍵を返し、精算を済ませた。
「こちら、退場のカードです」
 そういうのがあるのか。
 ……ああ、そうか。
 ツケ払いになるから、カギ持って逃げると食い逃げ成立になるんだな。
 テレホンカード風のカードをゲートの機械に入れて、外に出た。
 なかなか良いな。
 良いが、実用として使うタイミングは恐らくほとんどないだろうな。
 敢えて言うなら、快速エアポートや連絡バスがない時間の便を使う時の暇つぶし用だけど、琴似住まいじゃそれもなかろう。

 こっちにあるのは、雪ミクスカイタウン?
 ほう、こういうのもあるのか。
 初音ミクの出自であるクリプトン・フューチャーメディア(システムはヤマハ)は北海道の会社で、その縁でミクは雪像になったり何たりしているが、雪ヴァージョンのコスプレ(または変身)をしたものを特に雪ミクと呼んでいる。
 ご当地性とデザイン性が良い感じに合致したせいで、雪祭りの時期は市電がえらいことになる。
 その雪ミクのショップが常設されてるんだな。
 カフェスペースは仕切りがなくて居心地が悪そうだな。物販はグッズ類で、おかきとかもある。
 こっちはミュージアムという事で、フィギュア類や説明がある。ふむ。
 やっぱり初代の雪ミクがデザイン的に優れている。
 これは当たり前の話で、最初にやりたい事をすっかりやってしまったから、後は付け足しで行くしかないのだ。でも、ここを上手いこと切り抜けると意外な展開を見せるのだろうな。
 奥には等身大の雪ミクフィギュアがある。
 等身大と言えば、最初に意識したのは綾波レイ等身大フィギュアの25万円だかだったが、当時と比べるとポーズも付いて来たし進歩しているのだろう。それでもちょっと造形にイマイチ感はあるのだけれど。顔がのっぺりしてしまう。

 その後、空港内の土産物屋などをちらりと見てから帰った。


<出費>
交通費:2,260円(一日散歩切符) 入浴料:1,500円(新千歳空港温泉丸得パック) 食費:1,300円(しめさば丼900 ノンアルコールビール400)
計:5,060円


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