思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2017/7/29 『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第99回 室蘭市立水族館

 月初、友人が来札したので、青塚食堂をリピートしてウニを食べたり何たりしたが、それは当企画とはずれるので多くを語らない。
 何か知らんけど、あんまり歩けなくなってるな。

 休みを取って、妙に早く目が覚めた。
 今から探したら、多少は遠出も可能だなぁと思いつつイベント情報を「ウォーカープラス北海道」で探る。
 札幌の場合は「大通情報ステーション」だが、北海道で区切るとそっちになる。
 しかし北海道のイベント情報というのは、意外とパッとしない。はるばる出かけても地元の人しか参加しないような自称のお祭りだったり、単なる紅葉だったり、クリスマスのイルミネーションだったり、楽しいかというとそうでもないものが多い。まあこれは当たり前の話で、元来人が楽しむ事だけを抽出して作り上げられたのが娯楽であり、これは文化と密接に繋がるから、自然を楽しむという比較的未加工なものは楽しみの純度が低く、つまり、娯楽ジャンキーにとってはラリれない粗悪なブツでしかない訳だ。少しクスリを抜けば良い訳だが、物書きとして作り手側にあろうとする限り、浴びるほど娯楽に浸り、その上で突出したものをひねり出す必要があるのだよな。
 そんな中、ようやく目に留まったもの、それは。

 室蘭市立水族館、海の日記念、入場無料

 時間を調べると結構ギリギリだったので、さっさとJR琴似駅に向かう。
 ええと、往復割引券……あれ? 特急券なしだな。Sきっぷってなかったっけ?
 まあいいや、窓口で。
「これの特急券と指定券を下さい。7時30分札幌発の分で」
「すずらんに乗られるのでしたら、特割がありますよ」
 てなやり取りを経たが、うっかり指定席のつもりで買ってしまった為、特割適用にならなかった、かな? 多分そう。
 まあ良い。
 自由席で色々気遣うよりはね。
 じゃあ札幌にまずは向かうか――。

 ぴんぽーん。
 改札機の扉が閉じた。

 札幌からの切符ダヨ!
 琴似――札幌間は、Kitaka利用で。待ってたドン。
 札幌到着ー。
 シームレスに乗れるかちょっと怪しいし、微妙に時間に余裕があったので、一度改札を出て土産物屋とかちらりと見てから改札を通り直した。
 特急すずらんで一路、東室蘭へ。指定席にはほとんど乗客はいなく、静か。自由席も空いてたけどもね。
 一番安く行く方法としては、一日散歩切符があるが、これは普通列車にしか使えず、かなり綿密な計画が必要になる為今回は使わない。北海道の郊外のJRは「特急含めて」一時間に一本とかで組まれてるから、選択の余地がほとんどなくなってしまう。

 さて無事に出発したところで。
 室蘭市立水族館は、前から何となく目に付いていたのだが、室蘭までは結構距離があるので思い切りが付かなかった場所である。
 目に付いていたというのは、元々博物館、資料館、美術館、水族館の類を選びがちな自分の好みという以外に、ユーザレビューみたいなもので高い点が付いていたからでもある。
 あの手のものは当てにならないだの、ステマだのあるが、まあ、完全に事実無根ではない場合もあるし、一応の目安にしても良いと考えている。
 実際、自分が通っている医者なんかはかなりの低い得点で、その理由も「そーだろーなぁ」という感じだし。あそこは、腕は良いっぽいのだが(自分に転院癖がないので、比較対象に乏しい)、受付の人の対応が厳しい感じ。適当に医者を渡り歩いたり、定期受診をすっぽかすみたいな患者にはかなり辛辣で、診療を断る事も稀ではない。そうやって門前払いされた人は、相当低い点を付ける事は想像に難くない。
 道中、渡辺淳一の『病める岸』を読んだり眠ったりしつつ過ごす。
 短編集で、ちょっとミステリーぽかったり何だったり。お、出て来た。ホルマリン漬けを漁る描写。以前も別作品で読んだ事あるけど、かなり印象の強い出来事だったのかな。
 オチもなるほどと思うが、これは勘の良い人なら割と早めに気付くだろうな。

 つつがなく東室蘭に到着ー。
 室蘭行きに乗り換え。
 ワンマン列車なので、前の方に乗っておこう。
 途中下車で乗り降り出来るとかいう事はない、途中下車前途無効。
 昔は乗り降り出来た気がしたんだけど、別のタイプの切符だったのかしらん。それとも時代的に、駅の中の設備などの問題で、どうしても改札から外に出る必要が多く、そうせざるを得なかったのだろうか。

 工業の町である室蘭、やっぱり工場が多数見える。
 お、のこぎり屋根の工場だ。略図とかに出そうなあの形だ。ああいう工場、実在するんだな。
 ちょっと調べてみると、のこぎり屋根は、採光や換気、加工の容易さからあのようになっているのだそうだ。窓は北向きの事がほとんどだが、これは直射日光を避けつつも安定した光を採り入れ、作業をし易くする為で、色合いの確認などが重要な繊維関連の工場などを中心に広く導入されたらしい。ん? 繊維? 室蘭は鉄や重化学だと思うけど。
 室蘭駅へ到着ー。
 あ、ドア全部開いた。
 前の方に乗る必要なかったな。

 ここからバスで行く事になるが、乗り場はどこだろう……ん、旧室蘭駅舎の方?
 どれどれ。
 駅前のロータリーを通過し、通りを少し進むと、旧駅舎が見えて来た。
 んー……こんなんだったっけ?
 大学時代、無闇に自転車で遠乗りした時に、駅泊した(正確にはしようとして寝付けなかったので出発した)のがここだった筈なのだが、どうも感じが違う。夜中に来て夜明け前に移動したからはっきり見ていないのも確かだが。で、後から調べてみると、ホーム部分の方がすっかりなくなっていて、その継ぎ目のようなところにいたからじゃないか、というのが推測。
 旧駅舎の中は観光案内所兼資料館という感じで、吹き抜けの室内に写真パネルなどが置かれていた。
 観光地図のうちのグルメマップを貰って、さて、ぼちぼち時間なのでバスに乗ろう。
 ふむ、水族館行き、間違いない。
 バスに揺られ、このまま海沿いをまっすぐ……ではないのか。坂を上がって、折り返してこっちへ曲がって、今度はこっち……なんか遠回り感があるな。
 ああようやく海辺にやって来た。ヨットハーバーに道の駅、あ、遠くに風力発電の風車あるな。それにでかい吊り橋、白鳥大橋か。
 白鳥大橋は半島の先と北海道の本体側とを繋いでいる訳だが……これ、作らなきゃならない程のもんだったんだろうか。
 元々陸路で繋がっている半島の先っぽ部分をショートカットするだけで、そりゃああった方が移動は早いけれど。何だかんだで室蘭の産業が元気だったつー事か。と、思いつつまた調べてみると、方針の変更などはあったものの、やはりかなり昔からのプロジェクトである事と、鳩山由紀夫を選出した土地である事が分かった。首相になるより前の話ではあるが、鳩山一郎自体もプロジェクト中に何かしら噛んでいそうだし、なるほど予算が傾けられるも道理だったか。

 ようやく水族館に到着ー。
 地名で言うと祝津(シュクヅ)。小樽にも祝津(シュクツ)があるが、語源は同様の「シクヅシ」らしい。のだが、あまり明確な資料が見つからなかった。意味も「ギョウジャニンニクが多い場所」というのと「大きな崖のふもと」というのが出て来て、どっちだか分からない。
 改めて水族館。壁にポンチ画の魚が書かれていて、あ、観覧車見える。
 そういうタイプのとこか。
 駐車場も結構埋まってる。
 入り口には、入場無料の表示が出ている。有料だったら300円なので、元々大した負担ではないが、こういうのがちょっとした思い切りになるものだ。
 敷地内は、水族館と遊園地が半々。遊園地は海獣の展示と混ざってもいる。乗り物類は観覧車、メリーゴーランド、ミニ列車、バッテリーカー。
 ほかに、ツブ焼きの店と、こちらは臨時のホタテとタコを焼いたのの販売がある。
 さて、まずは水族館に入ろう。
 開幕電気ウナギに、ドクターフィッシュ、こっちはクラゲ、それから鰊もいるなー。こっちはカレイで、二階に回ってふむ、ふむ。
 よし、おしまい。
 え。
 ほぼワンフロアか。
 ちっちゃいなー。
 直近で小樽水族館に行ってるから、余計にちっちゃさが際立つ。売りになる大水槽がある訳でもないし。
 でもまあ、泳いでる鰊とか見れたしな。
 そっちはペンギンで、こっちにはタッチプールだ。ヒトデが触られて迷惑そうにしている。いつもは触るんだが、なんか子供でごったがえしている感が強すぎるのでやめておこう。
 自販機で麦茶買って飲みつつ、アシカかなんかを眺める。
 と、館内アナウンスが入った。
 11時からペンギンの行進だとか。
 言われてみると緑の道が最初から据え付けてあり、飼育員の人が水をまいている。
 待つ事暫し。
 おお、ペンギンだ。
 歩いてる。
 登別でも見たな。
 人が多すぎないし、比較的見やすいな。近いし。
 しかしペンギンは近くで見るとやっぱり鳥の愛嬌のなさが見えてしまうよな。犬猫のようなアップに耐えられる存在ではない。
 行進は途中のところだが、せっかくだから観覧車を選ぶぜ!
 乗り物券をバラで200円分買って観覧車の乗り場へ行く。ペンギンに観客の大半が集まっているので、並ぶ事もなく乗れた。
 観覧車200円って割と安いな。
 一番高いメリーゴーランドで240円だしな。
 観覧車がゆっくり上がっていく。さほど大きくないし、高台に設置されている訳でもないから見下ろす感は少ないが、そこそこ良い眺め。やっぱり高いところには登っておかないとね。
 一周して終了ー。

 よし、じゃ、こんなもんで良いか。
 何というか、不思議な満足感があるな。
 一つ一つは古びてるし、規模も小さいんだけどもね。

 道の駅を覗いてみる、と。
 一階が土産物屋と食堂。二階は白鳥大橋の資料館か。ワイヤーをいっぱい束ねてるんだなぁという事がよく分かるケーブルの断面展示だ。
 食事は……んー、あんまりこれというものがない。
 確か屋台村っぽく並んでいるところがあったが……なんだ二軒しか開いてない。
 ウェルカム感が乏しくて、こういうのはちょっと入る気にならないな。
 やっぱり室蘭市街で食べるか。
 駅前に回転寿司屋があったっけ。
 バス停で次のバスを確認。本数少なめだな……ん。
 あれ? 行き先や経由に室蘭駅の名前がない。
 路線図もない。
 ええと? どこ行きに乗るのが正解だ? チキュウ岬ったらどっちだっけ? 逆? あれ?
 ええい、ダメだ、よく分からんうちに逃した。

 ん……。
 まあ、歩くか。
 少し歩いた方がバスの本数の多いバス停に着く気がするし。
 歩いて歩いて……あ、逆だ、こっちだ。
 南北逆な感じになるなぁ。
 歩く。
 歩く。
 歩く。
 歩く。
 晴れてるけど、結構風はひんやりしている。
 こういうのが北海道っぽいわな。
 バス停発見……次のバスはまだ先だな。
 と、歩くうちに、室蘭駅まで戻って来た。
 思った程には遠くなかった(一時間ぐらいは歩いている)。
 さて、回転寿司屋は……席一杯だ。
 待つほどでもないし、別の店を探すか。

 あれ、このホテル見覚えが、というかこっちの角度からの室蘭駅前に見覚えがある。
 そうか、以前合唱コンクールで来た時に泊まったホテルか。
 こういう位置関係だったか。
 誰かの車で行ったんだったっけ。
 自分の意思で動いていない旅行というのは、本当、土地感覚が身につかないものだ。

 駅の近くに商店街はあった。
 あったが、時間のせいか曜日のせいか知らんがウェルカム感に乏しかったり、なんか営業しているかどうか分からなかったりだ。
 中心地が東室蘭だからかな。寂れ感が少々。
 室蘭名物と言ったら室蘭やきとりとカレーラーメンらしいが、やきとりは食べた事があるし昼間はあんまりやってなかろうし、カレーラーメンは店を見かけない上に興味が非常に湧きにくい。なんていうか、カレー系の麺って惹かれないんだよな。熱さと辛さが過剰なイメージ。食べりゃ食べたなりなんだろうけど。
 ううむ、パン屋あるな。これ買って食べるのも別に悪くはないが……最後の保険程度に考えるか。
 それから他には「キッチン スワン」……ん、ここは喫茶店? ランチののぼり立ててるな。
 色々メニューは豊富そうだ。
 まあこういうのも悪くはないか。地元感あって。

 入ってみると、やっぱり喫茶店風。カウンターがあって、ややテーブルが多いか。
 カウンター席に座ってまずは注文。
 色々あるが、特別これという売りがある訳ではない感じ。全般的に少し高め。カレーやナポリタンってのもな。定食系で……んー、まあこれ、かつとじ定食1,100円。
 注文したので少し落ち着いた。
「お好きなところに座っていただいてかまいませんよ」
 言われたので、奥のテーブル席に移動する。
 喫茶店っぽいけど座席多めのこういう感じ、高校時代に部活の打ち上げでよく行ったココアハウスやら、OB会御用達のBONなんかを思い出す。
 他の客はいないが、平日は賑わうのだろうか。
 お勧めメニュー、ここにあったか。なんか勧めてくれれば乗っかったのに。
 やや待った後、かつとじ定食が来た。
 よしよし。
 トマトの一切れ入ったキャベツのサラダに、味噌汁、ご飯、つけもの、それからメインのかつとじ。要するにカツ丼の頭だが、汁気多め。
 サラダは、ふむ、ごま油系のドレッシング? で、かつとじは、と。ふむ。少しサクッと感が残っているな。揚げたてを使うタイプかな。ふむ、なかなかいいぞ。劇的ではないが、無難にうまい。ただ、汁気があるのに平皿だから、ちょっと食べにくいな。スプーンを付けるか口を付けられるタイプの器なら良かったんだけど。
 うむ、食べた。
 満腹という程でもないが、適量程度。
 この店は、近くの長崎屋中央店にあったのだけど、閉店で移転したのだそう。要は「デパートのレストラン」が移転して来た訳だ。地元じゃ親しみを持っている人も多そうだ。自分も横浜のジョイナスのレストランで、幾度かカレー食べたの覚えてるし。

 さて、これからどうしようか。
 文書系の博物館っぽいのも見えたけど……でもまずは帰りの足を確認しよう。
 東室蘭から特急が出ると思うが、そこまで行くのに本数が少ない気がするし。
 室蘭駅に戻り、時刻表を確認する。
 ほら、やっぱり一時間に一本しかない。
 一本しか……って。
 数分後に特急が出発するじゃないですか!
 これを逃すと二時間半待ち。
 乗るか!

 緑の窓口で列車と席を替えて貰い、一路札幌へと戻った。
 指定席は空いてて静か……だったのだが、途中親子連れの赤ちゃんが泣いてたのでそれほどでもなかった。しつけの出来る年齢の子供だったらアレだけど、それぐらいの年齢なら「泣くのは子供の仕事」で良い。
 行き帰りどっちも結構空いてたから、今度は来る事があったら自由席にしよう。すずらん特割がかなり安い事は理解したし。混むのはお祭り関係ある時とお盆、帰省時期ぐらいだろうか。


<出費>
交通費:9,220円 (琴似―210―札幌[往復]  札幌―8,550―室蘭 [乗車券3910:往復割引切符 指定席520[往復] 特急券1800[往復] 室蘭―250―みたら・水族館前 )
麦茶:130円
昼食:1,100円(かつとじ定食 キッチンスワン)
計:10,4500円


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