思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2018/5/31『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第109回 KY:札幌の焼肉屋三景

 日本の焼肉屋は大きく二つに分けられる。
 韓国風焼肉、略して「KY」。
 次に、和風つまり皇国風焼肉。略して「KY」。
 更に、価格帯で二つ。
 高級な焼肉、つまり「KY」。
 更に、廉価で言うなればカジュアルな焼肉。既にカジュアルは外来語として定着しているので、「KY」と書くのが適切であろう。

 さて、今回行った焼肉屋は上記の中で、「KY」に属するものと考えておけば良い。

 JRに乗った際、「白老牛肉まつり」を目にした。
 白老牛は……あの、念のため、「しらおい」である。
 白老牛は、北海道では割合にメジャーなブランド牛である。松阪牛とか神戸牛よりも見かける機会が遙かに多い。微妙に遠いが、一度行ってみようか、と、考えていたが、この遠さがやっぱり引っかかり、結局行くには遅いタイミングになっていた。他に食べられるところがないかなぁ、と、考えて、ぐーぐるマップ検索していたら、狸小路に白老牛を食べさせる店があるのを見つけた。ややお高いが、ランチならそれほどでもない。
 行こうかな――と、考えたが、その月は結局別のものが見つかってそちらでノルマを果たしてしまった。

 そして今月。
 人員欠の関係で、「誰でも出来るが、誰でも時間がかかる」タイプの仕事に忙殺されて、あまりじっくり休む事が出来ない。今日も今日とて、ねじ込んで取った半日休みである。
 昼食、何を食べるか。
 市役所の食堂は値段より良いものを出すが、仕事と切れない感じがして今日の気分ではない。
 牛丼屋やハンバーガーのようなファーストフード系は、特に理由がない限り選びたくなくなってきた。
 揚げ物という感じでもないし、蕎麦屋はどうも敷居が高い上に当たりを引ける自信が全くない。
 家に帰って食べると妙に大量に食べてしまうきらいがある。
 と、大体「孤独のグルメ」的なワードを頭の中に浮かべつつ、狸小路を歩く。こういう時の思考は袋小路に入りがちだが――。
 通りに出ているランチの看板に、「白老牛」の文字があった。
 ん。
 店は、徳寿しんら亭か。
 徳寿は札幌市内ではそれなりに目にする焼肉屋、入った事はないが、それなりにKYに属した筈だ。
 あの時見つけた店だろうか。
 ランチの値段が三千円未満程度のものが並んでいる。出せない額でもない。
 よし、入ってみるか。

 階段を上がり店内へ。
「お一人様でございますか?」
「左様」
「どうぞこちらへ」
 店の奥の方の席に案内される。
 ゆったりしたシートに、こぎれいな店内、落ち着いた照明。奥の壁は鏡張りで圧迫感を和らげている。
 やっぱりそれなりのKYなのか、ここ。
 ランチメニューの中の……。
 丼みたいな一品系は面白くないので、やはり焼肉の何かにしよう。
 よし、一番高めな価格帯の白老牛ランチ(2,200円)、いってみよう。
「200円でドリンクをお付けできますが、如何いたしましょうか」
「ウーロン茶を付けてくれたまえ」
 コンロに火を付け、店員さんが下がる。
 改めてメニューを眺めてみる。
 色々あるが、それなりの値段だ。
 考えてみると、こういうKYはあんまりないな。友人と行く時は、KYで食べ放題の事が多い。年齢的に肉を山ほど食べたい訳ではないのだが、この辺は好みの差もあるし、嫌という程でもないのでなんとも言い難い。
「お待たせしました」
 来た。
 見た。
 むむむ。
 わざとらしく霜の降られた肉の数々。イチボ、ロース、カルビ、モモ、各々2〜3枚。部位名の小さいプレート付き。彩り程度のカボチャとタマネギ。
 その他、ごはんとキムチとわかめの入ったスープ。
 ……このごはん、おかわりできるのだろうか。まあいいや。

 さて、焼こう。
 網ではなく、幅広の切れ目が入ったテフロンっぽいプレートだな、これは。
 牛脂を引いて、まずは一枚、ロースから。
 強すぎない火でじりじり焼けていく。
 焼きすぎなくても良いのだろうな。裏に返してもう一息で、どれ。
 ふむふむ。
 とけるというよりも、ざくりとした食感。肉をかみしめる感触はないが、歯切れが良くて心地よいというか。ふむ、やはり霜降り。
 もう一枚。
 のんびり焼く。
 これがまあ、中年の焼肉のペースだな。
 焼けていく様子をぼんやり眺める感じ。
 コチュジャンとニンニクも付けてもらったけど、特に使う気にならないな。いくら何でも味が強すぎる。
 こっちはモモ肉か。随分薄く切られている。
 こういうのは、わざわざひっくり返す事は想定していないと思われる。
 案の定、表まで火が通って、肉汁が浮いて来ている。
 うむ、うまい。
 このペースで一枚づつ焼いては食べ焼いては食べして、最後にデザートのゆずシャーベットを食べて店を出た。
 腹一杯というほどでもないが、それなりに満足感はあったな。


 某日。
 また、半休。
 今日はどこで昼食にしたものだろうか。
 と、迷ってはいない。
 決めていた。
 確か、創成川通沿いにあった筈だ。
 焼肉界、下の横綱、すたみな太郎が!
 ネットとかで「親子連れが多くてうるさく、質の良くないものばかり揃っている」みたいなKYの代表のような扱いだが、実際のところはどうなのか。評判だけ聞いて行かないというのは愚かな事だ。
 ええと、うろ覚えだったが場所は……よし、見つかった、すたみな太郎太平店。
 ちょっと小洒落た、洋館風の建物。
 安さで売る店にしては、金がかかってそうな気がするが。ネットですたみな太郎の外観を検索してみると、普通のビルのテナントみたいなのもあるから、空き店舗を流用したパターンだろうか。
 中に入る、と。
 ほどほど広いワンフロア構造。
 空いた受付に、すぐ店員の人がやって来る。
「お一人様ですか」
「左様」
「クーポンなどはお持ちですか」
「ありませんな」
「ドリンクバーはご利用ですか」
「必要ありませんぞ」
「では1,339円になります」
 ドリンクバーは少し気になったが、まあ水とお茶ぐらいはあるだろう。
 前払いで済ませ、座席に案内される。トングやらハサミやら入ったカゴを置かれ、コンロに火を点けて貰って、開始。
 平日の昼なので時間は無制限という事らしい。

 食べ放題のセオリーは、この前にも書いた気がするが、実に単純である。
・多くの種類を食べる。
 これに尽きる。
 原価の高い物を食べる系の発想は、「自分が得をする」のではなく「相手に損をさせる」だけの事で、貧しいというよりも品性に劣るものである。但しそれが、常日頃自分が好きで、たくさん食べたいけれど食べられない、というようなものと合致したのであれば、それは仕方がない。イクラかけ放題で、イクラに溺れるとかは、認める。
 種類を食べる事も、それが目的化しては仕方がないが、そこそこ興味を惹かれるものを満遍なく食べるのは良かろう。あまり好きではないけれど、この店のはどうだろう、とかは十分アリだと思う。
 と、どーでも良い能書きを垂れつつ、食べ物を取りに行く。
 品数多い、というか、焼肉をベースにしつつ、火を通した料理も同程度のスペース存在する。
 まずは肉だ。
 肉とー、肉とー、肉、それからレバー。
 後は、ごはん。
 ……お盆ないのかな。
 行ったり来たりが面倒なんだが。
 どこかにあるようだが、使った後の物を置く場所にしか見えない。
 はてさて。
 まあいい、まずは焼くべし。
 豚カルビ、牛カルビ、プルコギ、レバーと。
 みんな1、2枚づつ。薄く小さい。記念切手を二枚並べた程度?
 ふむ、肉だ。大きさはともかく、別にまずいとかそういうものでもない。レバーもきちんと食べられる。
 焼肉が好きな人だと物足りないのかも知れないが、ここの本領はこの後だからな。
 ただし、ごはんは妙に固くてイマイチ。
 からあげ、スパゲティ、焼きそばっぽい何か、筑前煮っぽい何か、炊き込みごはん、カレー、サラダ、スープ、湯でほぐすタイプの冷凍ラーメン。
 売りにしている寿司は、4種類ぐらいしかないので、サーモンぐらい貰っておく。
 からあげが油を染みこませたような衣だったのと、サーモンが油を塗ったような感じだったのの他は大体見たとおり、原寸大にうまい。
 よし、目を惹いたものは一通り食べた。
 スルーしたのは、焼くのが面倒になったので焼き野菜類と、肉類の半分以上、後はポテトの揚げ物。モツ煮については忘れていただけ。
 ではデザートを。
 嵐の如く。
 どれも当然小ぶり。プリン、白いケーキとチョコ色のケーキ、ワッフルも同様に二種、シュー・ア・ラ・クレーム、アイスクリームは何種類かあったけれど、チョコミントを敢えて。ソフトクリームもあるな。チョコとバニラを合わせたもの……混ざってないか? おっと、思ったより止まるのが遅くて多めに出た。綿菓子は何となくやらず。
 おや、コーヒーは無料枠なのか。
 エスプレッソ貰っておこう。
 ふむ、ちゃんとした店で買うものよりは落ちるが、そこらのスーパーの生菓子程度の味はある。
 というか、大体のものがそこらのスーパーのお総菜とか、安売りの商品とかそういうレベルに落ち着いている感じだな。
 まずいを連呼している人の求める品質がどれだけかは分からないが、値段を考えれば十分なところだ。

 アイスクリームの一角で「アレンジしてパフェを作ろう」とか書いてあったが、なるほど、そういう発想もあるわな。
 とすると、野菜類やら焼肉やらを足して、具だくさんカレーと、汁物、デザートプレート、みたいな食べ放題店で一品料理を食べている現象を生じさせる事も可能なのだな。次に来る事があったら試そうか。
 ソフトクリームまで食べて、腹一杯。
 全て一口づつ程度だったが、満足感はあるな。


 QBOOKSを覗く人は知っているだろうが、ごんぱちは短歌バトルや俳句バトルにも投稿している。
 その中で、牧場や牧草について詠む事があるが、それが何を指しているかというと、羊ヶ丘展望台と、通勤路沿いにある牧場である。見える箇所で牛が放牧されている訳ではないが、牧草地とサイロはしっかり確認できる。
 で、その牧場と道を隔てたところに、牧歌園なる焼肉屋がある。
 前から気にはなっていたが、隣接しているのが、北海道外食界の雄「なごやか亭」なので、本能に従えば決して焼肉屋に足が向かう事はないのであった。
 公式サイトを確認してみると、当然なごやか亭と会社は同一の「株式会社三ツ星レストランシステム」、他店舗は「ぼくぜん」という名だが、ここだけ「牧歌園」になっている。牧場にあやかっているのは間違いないが、関係性はどうなんだろ。観光牧場では全然ないし、全く関係ないのだとしたら、今後の牧場の経営状況が気になるところだ。

 で、半休後の今日。
 今月2回焼肉屋行ったから、こうなれば比較検討しよう、と、思い切って入ってみた。
 14時近く、客は誰も居ない。
「いらしゃいませ、こちらへどうぞ」
 店内はボックス席の構造。まっすぐ見通せない感じ。
 今回もランチを頼もう。
 焼肉だって大量に食べたい訳じゃないから、一通りまとまっているランチの方が具合が良い。青年時代とこの辺が違って来るよなぁ。二〇代、三〇代は、好きな物をたらふく、という風な直線的な食べ方になりがちだった。まあ、生活環境の違いもあるかも知れないけれど。
 ランチは何種類かあるが、値段がジンギスカン主体の1,000円を切るものと、牛肉の含まれる1,500円台を上限にしたものとに分かれる。どれが一番高級、というのはない感じ。まあでも、そこそこ高いものを選んでしまおう。
 この「和牛&じゅうじゅうカルビ定食」というのが良いか。
 ノンアルコールビールと一緒に頼む。
 最近はもう、ノンアルコールばっかしになっている。自転車移動である事と、アルコールを入れると鼻炎に悪影響があったり、後で眠くなってやりたい事が何も出来なかったり、と、マイナス要素が多い。マイナス要素を理解しながらも「飲みたい」ってのが要するに依存症な訳だ。
 まあノンアルコールビールも、代償行動に該当するので、これが飲みたい時点で依存症という意見もある訳だが。でも、甘いの飲んだら食事の邪魔になるし、お茶の類は味や喉越しに存在感が薄くて満足感が欠けるし、ビールテイストのものはそれ単体で価値があると思うのだけれどね。
 注文して落ち着いたので、改めてメニューを眺める。
 こういう事が出来る店の方が良い。選ぶ時しかメニューを出さないのは、そりゃテーブルの上が広くなる利点はあるが、リピーターをみすみす逃しているようなものだ。
 ふむ、メニューには冷麺やらずん豆腐やらが並ぶ、ここはいわゆるKY系列だな。
 ジンギスカン系もあるから、多国籍系なのかも知れないが。
 待つ事暫し、ランチ到着。
 サラダにカクテキに味噌汁にごはんに、肉、だった筈。
 じゅうじゅうカルビというのがどれなのかはよく分からないが、とりあえず皿にずらりと並んだ形。
 種類が少ないので、一つ一つかみしめるという感じにはならない。
 焼いて食べるべし。
 食べるべし。
 喰うべし、喰うべし。
 サラダはサニーレタスの小さい葉のひとつまみにドレッシングがかけてあるという、バランと大体変わらない彩りレベル。カクテキはカクテキ、味噌汁は印象が薄い。
 小さめな肉を二つ、三つ、三つ四つなど、焼けるところなどいとおかし。
 下味は付いている感じ。
 すたみな太郎よりもグレードは当然上だろうが、その違いとなるとよく分からない。薄切り肉にして目の前で焼いて、それっぽい味付けをされてしまえば判断し難い。
 一通り食べ終え、て店を後にした。


 さて、食べ比べた感じ、徳寿のそれはやはり高級な肉のイメージはあるが、脂身を食べているようでもある。すたみな太郎は、焼肉屋というより、別なものを食べに来るとか、アレンジしてオリジナルの一皿を作る、みたいな面白味がある。牧歌園は肉を食べた感じは一番したような気がするが、徳寿でも赤身寄りの物はあるだろう。
 という事で、焼肉屋としてリピートするなら、KYの徳寿という事で結論。
 何だかんだでKYは強かった。
 KYだと叙々苑が控えているが、ランチでもやってないとやっぱり入り辛そうだなぁ。


<出費>
交通費:0円 自転車移動
食費 :2,590円(白老牛ランチ2,200、ドリンク・デザート200、税)
食費 :1,339円(すたみな太郎、平日1,240、税)
食費 :2,084円(和牛カルビ&じゅうじゅうカルビ定食1,550、ノンアルコールビール380、税)
ツッコミ:0円(品切れ中)
計  :6,013園


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