思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2018/12/31『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第116回 洞穴の爺、大体巌窟王:洞爺 湖畔亭

 北海道は温泉地が多く存在する。
 ようなフリをしているが、多分、面積が広いから「北海道」という括りにしたら数が稼げるという意味で、実際の発生密度はさほどでもないような気がする。データ検証すればすぐに分かるが、面倒なので省略する。
 尚、「世の中には知らなくても良い事がある」という言い回しは、極稀なケースにのみ当てはまる事であって、一定の理解力と洞察力があれば概ね知った方が良いと考えられる。
 例えば、とある業界の舞台裏の話であったとしても、他の業界の舞台裏まで知る事が出来れば、比較によってそれがさほどのものでもないとの判断に至る事ができる。誰かが自分の悪口を言っていたという情報も、同様にその者が他の者に対する悪口を言っていたとすれば、その深刻さの程度も知れる。そして、科学的な知識において「夢は夢のままで」というような理由で知らなくて良いと言うに至っては噴飯ものであって、知って尚掘り尽くせぬ真実が埋まっている事も知らぬ、貧しい考えと言わざるを得ない。或いは、それらの知的成功体験の乏しさ故に、防衛機制としてそららに価値のないものとして合理化を行っている可能性もあるが、この場合は哀れみを覚えなくもない。

 温泉地の一つとして国際的に有名なのは、やはり洞爺湖である。
 元々有名だったのか、銀髪天パのせいかは分からないが、ともかく有名である。

 なぜごんぱちが洞爺湖に行くに至ったか。
 それは話せば長い訳がある。
 かつての職場の同僚と、時折飲んだりするのだが、「今回はどっか旅行行こうぜ、送迎付きの温泉で」という話になり、ほとんど任せるうちに、登別に決まった。と、思って当日行ってみたら洞爺湖だった、と、このように極めて複雑怪奇にして波瀾万丈な理由があったのであるサンアタック(注:破嵐万丈は、元々波瀾万丈のダジャレネームなので、これはダジャレとして体を為していません)。

 当日。
 13時札幌駅北口集合ということで、2連休を取って準備していたところ、午前中に要介護認定調査の対応が3件も入るという波乱の幕開け。しかもいつにも増して一件当たりが長く、2時間+α程度と見込んでいた調査が、2時間超となってしまった。
 むむむ、もう12時だ。むしろ半日出勤にしても良いレベルで働いてしまったが、まあ、朝10時に出て30分早く上がっているので、やっぱり勤務とはし辛い。請求したら出るんだろうけど、こういうのはあまり刻みすぎると、「業務中に気を抜いていた時間」の扱いが面倒になるので、ややこちらが損するぐらいでバランスを取っている(切れ者管理職の絶妙なバランス感覚)。
 札幌駅に到着したのが12時40分。
 最初の予定では市役所の食堂で幕の内弁当でも食べようと思っていたが仕方ない、車内で食べる事にして札幌駅の改札脇のパン屋でサンドイッチとグラタンサンドみたいなのと、四角いクリームパンとを買った。
 ほとんど入らない店なので食べてみたいものはもっとあったのだが、車内環境が不明である事や、夕食への影響等勘案し、軽めで手が汚れたりこぼれたりし難く、多少残っても慌てなくても済む物、場合によってはみんなも少しつまめるようなものも、という辺りで妥協したセレクト。
 時間10分前ぐらいに北口「鐘の広場」到着。友人I氏と合流した。尚、このIは、ムニの友であるところのIとは別のIである。そういえば、私の人生にはIと付く者からの影響が大きい。まず、「井の頭公園の老人」次に「イングリド先生」それから「飯野賢治」って、全部ゲームか(前二つだけ少し本当。イノケンのゲームはした事ない)!
 道中で一杯やる程度のビールを買って待つ事暫し。もう一名と合流し、送迎バスの受付を済ませる(札幌駅北口「鐘の広場」というのは、こういう団体バスツアー向けの集合場所。地元の人は、北口集合というと、大体ここの事だと気付く)。
 ではバスに乗り込もう。
 む、天井低い、通路狭め。
 後ろの席は空いているようだが、前から詰められたな。
「人数確認出来ましたので、後ろの空いた席はご自由にお使い下さい」
 なるほど、そういうシステムか。
 遠足時の例のカーストの奴らが如く、一番後ろの席を確保。棚はコートで塞がったので、荷物は足下に。これでもまあ狭いけど、許容範囲か。
 シートにはドリンクホルダーはあるが、テーブルは付いていないタイプ(付いていても開けられない程度にシート間隔は狭い)。

 さて出発。
 札幌駅前をくねくね進んで、豊平川沿いから南下していく。

 まずはビールを一口。定番のサッポロクラシック。

 バス内にトイレはないので、無茶に飲む事はさけ、気分程度。
 パンも食べるか。同行者は食事を済ませていたので、自分独りで食べるペースで。
 カツサンド入りのミックスサンド。
 年齢のせいか、揚げパン系よりもサンドイッチのようなさっぱりした系が良くなって来た。いや待てよ、昔からピロシキみたいな揚げパン系、さほど好きではなかったかも知れない。
 母がピロシキを作ってくれる事が幾度かあったが、どうも油っぽくてうまくないなぁと思ったものだ。まあ、幼稚園ぐらいの頃は好き嫌いが多めな子だったので、この評価はあまり信用は出来ないのだが。ああ、当時の我が家の台所事情から、油の使い回しもあったかも知れない。

 乗客は、バス内7割程度を埋めている。時折聞こえる会話が中国語っぽかったり、運転手の人のアナウンス時、英語で補足を付けたり、そこはかとない国際感がある。
 一時間程度走った後、中山峠のパーキングエリアでトイレ休憩となった。
 さほど行きたくはないが後に機会が限られるなら行っておくのが旅のセオリー。
 食べられる時に食べておけ、出せる時に出しておけ。出せないときに出したらロープ。
 車外に出る、と。
 風強い。雪分厚い。顔が上げていられない。
 ちょっとホワイトアウト的に吹雪いているな。
 済ませるべきは済ませた。
 そっちにあるのは「夜間用トイレ」らしいが、ドアに雪が積もっていて開けられそうにない。

 バスは再び走り出す。
 峠を越えた後は、天候も収まり難なくバスは進む。
 遠くの山まで雪がかかった針葉樹の森で、山肌が降る雪で白く煙って、白黒基調の水墨画のようである。
 進んだり雑談したり居眠りしたり、少しづつビールを飲んだりするうちに湖が見えて来た。
 おお!
 洞爺湖!
 広々として、真ん中に島があって、周囲に温泉街がある。
 温泉街はやはりコンパクトにまとまっているな。
 旅館系ではなく、ホテル系メイン。遠目には熱海辺りを少し思い出させる風景だ。

 バスは一軒別のホテルに泊まった後、目的の「湖畔亭」に到着した。

 ホテルの人が受け付けの場所の説明や、レストラン利用の説明などした後、バスから降り、湖畔亭のロビーへ入った。
 闇雲に広いロビーで、正面に洞爺湖の湖面が広がる。おう、見晴らしが良い。
 部屋は7階か。
 廊下はビジネスホテルっぽい間隔の詰んだ感じがあるが、ドアは古い旅館のドアだ。何と言っても、オートロックではない上に、鍵に例の大きな角柱のキーホルダーが付いている。
 中は半分洋室でベッドが二つ、奥が和室のハイブリッド型。ユニットバス付き。
 ここからの見晴らしも良いな。真正面に島が見える。ホテルがその名の通り湖畔で湖のギリギリにあるので、窓の下端がいきなり湖面に見え、高さを感じない。

 何はともあれ風呂。浴衣に着替え、三人して9階最上階の大浴場へ向かう。
 貴重品入れに部屋の鍵を入れ、カゴだけの脱衣室で脱ぎ、浴室へ。

 おお、広い。

 大きな浴槽が一つ、上流に熱い浴槽、それから露天風呂と、サウナ。壁一面ガラス張りなので、洞爺湖が目の前に広がる。望遠鏡でもあったら対岸から覗かれそうな勢いだ。尚、「ドローンなどが飛んでいたら連絡を」という注意書きがしてあった。いてもおかしくはないわな、この時代。
 浴槽は温泉が売りなので、水流とか電気とか、余計な手間はかけられていない。あっても良いんだよ?
 洗い場は一人づつで仕切りがある。気楽で良い。
 一通り洗って湯に入る。
 少しぬるめか。
 湯の色は大体透明。効能は知らない。そんなにしょっぱい感じはしない。
 温泉の効能を実感できた試しはないが、湯の差で温泉を好む層は一体どれだけいるのだろう。でっかいお風呂、とか、温泉施設の娯楽要素がメインな気がする。
 他の客はそんなに多くはないが、いくらかはいる。中国語が多い。
 北海道が中国人に人気なのか、日本に全般的に多いのか。

 一通り入ったので出る。
 何十分もも長湯するタイプの人ではないので(そこまで長湯する人は、そんなには多くないと思う)。

 部屋に戻った後、何だかんだで浴衣はくつろぎにくいので、Tシャツとズボンに戻る。
 土産物屋で職場への土産に団子と「星空ノムコウ」とかいうギリギリなのを買って戻ったら、夕食のレストランが開くぐらいの時間になった。
 レストランは地下だけど、完全に地下ではなくて窓はある。札幌市役所方式(分かりにくい)。
 ビュッフェスタイルか。
 ステーキとかあるな。後は、点心とか、ベトナムの春巻きとか、ホタテのカレーとか、刺身とか、ラーメンとか、卓上コンロでジンギスカンとか……品数結構多いな。
 品数が多いのは良い事だ。ビュッフェ形式は一つ一つの質はともかく、品数食べられるのがそれ自体価値があるので――。

 って、なんかうまいぞ、これ。
 ステーキも厚みがあるけど歯切れが良い。どれもきちんと手間がかかっている感じでうまいし、品数もたっぷりあって食べきれないレベルだ。
 飲み放題を付けたけれど、飲んでいる場合ではなかった。デザートもケーキ類とソフトクリーム完備。
 想定外に喰った。
 三人とも腹一杯なので、特に外出する気にもならず、土産物屋だけ見てから部屋でぐだぐだと過ごす。
 イメージとしては、部屋で第二弾の宴会になるところだが、その気にならないぐらいには食べてしまった。

 そうこうするうちに、20時になった。
 到着時にアナウンスがあったのだが、ビンゴ大会があるとの事。ビンゴのカードは有料だが、誕生月だと一枚タダでくれるらしいので、参加してみる事にする。
 1階のロビーに降りて来た。
 ロビーのカウンターでカードの販売をしているので、そこで身分証を見せて一枚カードを貰った。
 しかし結構ロビー寒いな。
 人の出入りがあるから当たり前だが、Tシャツ一枚には向かなかった。

 サンタ服の職員さんが司会でビンゴが始まった。
 数字はカラオケの機械のサブ機能みたいな奴で、数字がきちんと画面に残るので、途中参加もし易い。賞品は陳列されているものをどれでも選べるが、早い者勝ち。特別な当たりとして、最初の七つまででビンゴが出れば、宿泊券かプレステ4がプレゼント。
 数字が引かれる、引かれる、引かれる、引かれる!
 全然出ないなー、でもこういうのは、最初が良いからって揃うもんでもないしなー。
 あ、揃った人出た。参加者まばらだから、割とどんどん出る風ではないな。
 ファミコンの互換機とか当てられたな。欲しいようなそれほどでもないような、微妙なものだな。つか、あんまり欲しい物ってないよな。持ち帰るのも億劫だし――と、当たった。
 同着三名。
 残ったものは、カラムーチョの鍋つゆ、スヌーピーのマグカップのセット、ちっちゃい膝掛けとシャンプーボトル?のセット、お菓子の詰め合わせ、オモチャの?ギター。
 んー、スヌーピーのマグカップはちょっと食指が動くが、冷静に考えれば食器類なんか増やしても邪魔になる。他の賞品も大概邪魔になりそうという点では変わらないから、食べれば消える、お菓子の詰め合わせにしよう。
 キョロちゃんの絵の付いた袋の、お菓子の詰め合わせを貰った。百貨店の紙袋サイズ(それは十分邪魔なのでは)。
 その後、適当なところで部屋に戻った。残念賞は土産物屋で使える買い物券の2、300円ぐらいのものだったようだ。
 お菓子シェアするかー。
 チョコボールとチョコチップクッキーと、おっとっとと、ポテロングと、パックンチョと、それから。
 あんまりこういうの買わなくなったな。
 あれば食べてしまう習慣になるからな。食べ始めると歯止め効かないし。

 それから、ダラダラとテレビ観ながら過ごした後、もう一風呂浴びて寝た。

 翌朝、起き抜けに髭剃りがてらまた風呂へ。
 女湯と切り替わっているので少し形が違う。
 露天の壺湯に入って、両手両足を出す「ハンチョウのポーズ」を取ってみる。適度に冷めて長湯向き。天気は荒れなかったせいで、露天でもそんなに無茶な寒さはない。
 風呂を終えた後、朝食へ。

 昨晩の事を考えると、期待が出来る。
 そもそも、ホテルの朝食ビュッフェなんてのはうまいものだ。
 これをどう超えて来るか。
 と。
 粥からフォーから、パンはちゃんとしたフレンチトーストもある。
 ごはんのおかずには、鮭、サバ、塩辛にたらこ、おお、たらこあるぞ。新日本海フェリー以外では、ついぞ見かけた事がなかった、たらこありの朝食だ。スクランブルエッグもちゃんとした奴だ。少しづつ食べても全部が網羅出来ない品数、凄い。
 パンはデニッシュ生地の食パンがあったので、蜂蜜を――巣から直で出てる奴――付けたりして食べた。サクサク。
 うむむ、朝食も隙がなかった。
 家の近くにあって、二〇〇〇円ぐらいで食事を利用出来るのだったら、休みの日の度ぐらいには利用したいレベルだな(一〇〇〇円なら主食で)。大変に太りそうだが。

 朝食の後は、一息ついてからチェックアウト、そして帰りのバスへ。9時45分発(早い)。
 結局、ホテルから一歩も出なかったな。
 寝たり起きたりするうちに、バスは札幌駅に到着、解散となった。

 これは旅行と言うべきではないものだと思うが、それはそれで悪くないと思った次第。

 ちなみに、土産物屋には何故か木刀がなかった。
 理由は分からない。
 あれか、中山峠で吹雪いていたから、五里霧中ならぬゴリラ夢中で、足止めになったのか(意味がよく分からない)。


<出費>
13,000円(湖畔亭 夕朝付きプラン 夕食飲み放題2000円プラス)

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