思い立ったが随筆


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2019/1/31『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第117回 洪水予想は信じてる。天気予報ぐらいにね(意味近すぎ):江別河川防災ステーション

 北海道に移り住んでもう10年ぐらいになる。
 こういう企画をやっている時に思うのは、北海道というのは何処まで行っても北海道であって、どこでも海産物や乳製品の質が高く、牧歌的な風景があり、冬は雪に包まれる。資料館にはアイヌと開拓者の道具が飾られ、かつては炭鉱やニシンで栄えていた痕跡がある。ステロタイプではない見方をすれば、それぞれの違いはあるが、それはそのことにきちんと興味がある人にとってのものであって、半囓りの見切り発車で半日ぐらいで片付く程度の近場、となるともう枯渇へまっしぐらである。
 そうなるともう、検索の仕方でどう引っかけて来るか、という事になるのだが。
 見つけました。
 江別に。
 江別河川防災ステーション(入場無料)を。

 江別市とは、かのエベチュンラーメンで有名な土地。
 札幌市の北東に位置する、要するに「岩見沢に行くときに通過する駅」である。
 他に地理的特性として、千歳川が石狩川に流れ込む場所で、洪水が起こりやすかった、ともある。
 その対応資材の備蓄や、避難所、水害防災の啓蒙の為に作られたのが、江別河川防災ステーションである。
 ……こういう資料館系は、見るべきものがはっきりしているので良いな。

 当日。
 またJR琴似駅のヴィド・フランスで朝食を済ませてから出発。
 グラタンドックはこれ、12月限定じゃなかったんだな。ヴィド・フランスのパン類は、概ね色々な形でパサパサ感が解消されてしっとり感があって良い。
 JRに揺られて30分、40分、お手軽な距離だ。
 『鬼平犯科帳』なぞ読みつつ。
 最初の巻は、正直盗賊の話ばかり続くのかとうんざりしたが、2、3巻進んだ時点でなじんだ感じ。
 無敵の主人公が悪人とかをばっさりやったりやらなかったりするのは、剣客商売とそれなりに近い構造だが、鬼平は悪役側や同心や密偵視点がかなり多い気がする。それと短編集であるが、前の事件の盗賊が密偵になったり、メインで事件に関わっていた同心が引き続き脇役で出て来たり、「○○事件で忙しかった頃」など、連続性がより強く感じられ、キャラもかなり立てられている。剣客商売と同時期の連載という事もあって、差を付けようとしたのかも知れない。

 江別駅に到着。

 さて、と。
 防災ステーションは川の合流点の辺りにある筈だけど……方向的にはこっちかな。
 駅前らしい賑わいはない。商業ビルもない。
 寂れた町、という事でもなく、札幌から離れた北海道のJR駅はほとんどがこんなだ。
 例外は旭川、函館、小樽、苫小牧、ぐらいか?

 妙に寒い気がする(後から確認したら、この日、日中マイナス10度ぐらいだった。札幌付近の冬の通常の日中気温は、マイナス2、3度ぐらい)。
 線路から見て北方向だった筈だが、線路をくぐるな、この道は。
 『大雨時冠水注意』の文字が生々しい。
 確かに水が溜まりそうな道だ。
 ニュースとかの映像で車が水をかき分けて走るあの画が撮れそう。
 渡り切ると……あれ、江別駅に戻る道だな。
 ああ、こっちから橋がある。
 駅の出口が違ったのか。元々、駅の南側から始まるルートだったんだ。
 河川防災ステーションは、あの辺の筈だけど、煉瓦色の建物だな。
 公式サイトで見たのは、ガラス張りだったけど。
 でも多分アレの筈。
 雪の道を歩いて、歩いて、正面に回ると、ああ、ガラス張りだった。
 やれやれ到着、と言うほど遠くもないな。近場近場。
 中に入ると、ロビーにサークルの発表みたいなものの展示? それから奥は物産品を扱う売店。エベチュンラーメンも売られている。
 二階は?
 あ、防災の歴史の説明パネルだ。こっちは、渡しに使われていた外輪船の模型。外から見えた車輪は、これの外輪か。
 ふむふむ、石狩川と千歳川と夕張川の氾濫が起きやすかった土地だが、川のルートをいじることで洪水を防ごうとして、それでも起きたから、土手を作ったり川底を削ったり、色々やって今に至ると。
 明治時代からの大事業だったようだ。
 札幌市にも洪水のコントロールでまっすぐにした川や、名残の三日月湖、新たに作った川とか、いくつかあるな。
 平らな地面の多い北海道は、ぐにゃぐにゃした川が出来る余地があるという事なのだろう。
 展示はワンフロアなので、10分も経たずに見終えた。
 2階には食堂があるけれど、まだ昼食って感じじゃないし、まあ良いか。
 改めて売店を覗くが特に買いたくなるようなものはない。
 まあ札幌の隣町から土産になるものもなかろう。

 河川防災センターを後にした。
 来た時と同じルートも芸がないので、ぐるりと遠回りをしていく。千歳川をまたぐ、湾曲した大きな橋を渡る。
 遠くに工場がある。孤独のグルメで「巨人の腸がむき出しになったような」という表現があったと思うが、確かにそれは言い得て妙かも知れない。このパイプやら煙突やらの存在感のある工場の風景というのは、なんだか惹かれるものがあり、また、巨大すぎる物への恐怖心も湧く。
 千歳川の土手はしっかり背の高いコンクリート造りになっている。これなら相当な増水でも耐えられそうだ。
 もう少し緑の残された落としどころもあるのかも知れないけれど、市民を守る事を最優先にした決断だったのだろう。
 実際、明治時代の治水工事については、自然環境を出来るだけ守る手法と、人工的にコントロールをする(川の流れを大きく変えるなど)手法とで、意見が分かれたらしい。
 生き残りのいない程の昔の先人の努力と知恵が、現在の生活を直接守ってるというのは、趣深い話である。


<出費>
900円(琴似―450―江別 往復)


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