思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2021/6/30『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第146回 ぼちぼちか? :シネマ歌舞伎『鰯賣戀曳網』

 新型コロナも夏になって来たせいか感染者数が減っている。
 去年の事も考えれば、まあ外に出て駄目という事でもないだろう。
 大体、会食行かない、同居者いないという、二つの大きな感染源と分かれている自分は、大貢献している側ではないか。
 実際、一度も感染していないし。
 という事で、再び盛り返さないうちは、常識的な範囲で外出はする方向で。

 換気が何だかんだで良好と主張しているところの映画館に行く事にした。
 というと、行った事あるだろう、となるが、ここで目にしていて観ていないプログラムというものがある。
 すなわち、シネマ歌舞伎である。

 ――まあ、どう考えても、歌舞伎のビデオを映画館で流すだけのものだとは思うよ。

 行くと決めてから、ネットでチケット購入をする。演目は『鰯賣戀曳網』。座席指定をすると、一つおき座席がどこでも選べる形になっていた。
 ふうむ、やはりあまり客が入らないのかな。
 なら逆に好都合という事で購入確定。2200円。

 札幌駅にバスで向かう。
 マスクして自転車だと息が切れて仕方ないので、どうも自転車に乗れていない。自転車ですれ違う分には何という事もないのでマスクの意味も薄いのは確かだが、不特定多数の同調圧力には屈する方なので何ともかんとも。

 バスは札幌駅に滞りなく到着。地下鉄より安いし乗り換えがないから結構早い。更に、乗り継ぎ割引が適用されると地下鉄で帰っても安くなる。乗り継ぎであるかどうかがいつも見落とすのが玉に瑕なのだが。ICカードだとどうもね。

 さて、札幌駅の映画館は……あ、東西の連絡通路が封鎖されてる。映画館に行くエレベーターしか使えない状態だ。そういう温度感なんだなぁ。
 エレベーターで上がってロビーに到着。
 割と客いるな。
 まあ映画館というのは、話題作がある時とそうでない時で全然客数が違うものだから、何と比較して客がいるというのでもないが。
 ロビーの発券機で、ネット購入した時のQRコードをスマホから読み込ませ、無事チケットを受け取る。
 30分ほど前に着いていたので、突っ立ったままぼんやり時間を潰す。
 他の映画の受付時間が来て入場の声かけなんかもしていた。

 あー、映画大好きポンポさんというアニメ、意外と客が入ってるな。
 人気あるんだろうか。
 ネットで公開されている原作を読んだ感じ、大体ジェネリックキネ子さん(OYSTER)にしか見えないんだけど、テレビCMとか厚めにやってたんだろうか。絵柄はかわいい。
 程なく時間が来て、開場。
 やはり、熟年以上の女性が多いような?
 予約時点では座席がガラガラだったのだが、意外と客が入っている。ネット購入しないで当日券が多かったのかな。座席予約まで出来なかった? にしては、あの時ガラガラ過ぎだったが。
 座席最前列のブロックの一つ後ろの一番前席。前過ぎず邪魔になる前席が遠い。
 座席は一つ一つ両隣に「座らないで」という印が付いている。予約の時通りだな。前後で1席ズレになって、真後ろに人が座らない形になっているので、他の客はそこまで気にならない。

 プレシネがあって、映画泥棒があってから、宣伝が始まった。
 映画館ではあるが、映画の宣伝ではなく、シネマ歌舞伎関係の宣伝が少し流れて本編になった。

 最初、演者の中村勘三郎(多分)の解説というか、コメンタリーというかが入った。
 結構長々喋る。
 その内容は「この話は歌舞伎には珍しく明るく楽しいもので、これがやれて本当に嬉しい」みたいな感想というか宣伝文句で、解説とは言い難い。この手の解説、しかも冒頭に行うのであれば、設定された時代背景や、作者に関する予備知識、暗示されるものなど、作品の理解が進んだり興味を深めるようなものが良い気がするんだが。まあでも、アレか、この人のファンであれば、喋る姿も嬉しいか。我が身を省みても、伊集院が円楽と二人会をやった時の話とか、聴いてて面白いしな。

 喋りが終わってようやく演目が開始となった。
 固定カメラではなく、必要に応じてカット割りがある。
 考えてみると、歌舞伎を観たのは何だかんだで初めてだ。ワンカット何かで引用されているのはともかく、最初から最後までというのは間違いなく初めてだな。
 ミュージカル的に、普通に喋る部分と、調子を付けて唄うような部分とに分かれるのか。ふむ、事前にストーリーは読んでおいたので、どうにか分かるが、多少耳だけだと入らない感じ。

 
 この『鰯賣戀曳網』は、三島由紀夫の作となる。三島由紀夫は小説家と思っていたが、戯曲作家でもあって、歌舞伎もいくらか書いている。何となく古典芸能寄りのイメージだったが、新作もあるんだな。落語もそうだし、そういうものなのだろう。

 ストーリーは、
 大名も相手にする上級の花魁「蛍火」を五條橋で見かけて一目惚れをし、恋煩いで売り声がふにゃふにゃになったイワシ売りの主人公を父親が心配し、仲を取り持つ事にする。
 上級の花魁は金さえ出せば買えるという類のものではないので、父親はイワシ売りに大名のフリをして合わせようと根回しと画策する。
 大名を装う中で多少のハプニングはあったがごまかして、結局イワシ売りは蛍火と部屋に入る事が出来たが、緊張して酒を飲み過ぎ、寝入ってしまい、寝言でイワシの売り声を上げてしまう。
 それを聞いた蛍火は、イワシ売りが大名ではないのではないかと尋ねるが、イワシ売りは和歌とこじつけて何とかしらを切る。蛍火はそれを信じたが、何故か悲しみ始める。
 蛍火はイワシ売りに身の上を話す。彼女は元は一国の姫であったが、ある時に耳にしたイワシ売りの呼び声に惹かれて城から抜け出たところ、悪い者に騙されて売り飛ばされた。それでも、イワシ売りに惹かれてていた。諦めかけたところにようやく出会えたと思えば勘違いとなり、もう希望もなくなったので死のうと思う、と。
 イワシ売りは死のうとする蛍火を止め、自分も素性を明かし、相思相愛である事を確かめ合う。丁度その折、城から失踪した蛍火を探していた家臣が現れる。蛍火は身請け金は支払わせるが、家から出た女が再び家に戻る事はないと、イワシ売りの妻になる事を親に伝えるよう家臣に言い渡す。
 イワシ売りの妻として、売り声の練習をならい、場にいる皆にもやってみるよう言って、イワシ売りの売り声で幕。

 意外に長かった。三行で。
 大名ぐらいしか相手して貰えない上級の花魁に一目惚れしたイワシ売りは、大名のフリをして会えたが寝言で嘘がバレる。
 花魁はイワシ売りの声に惹かれ城を抜け出た折に人買いに売り飛ばされた一国の姫で、実際には相思相愛だった。
 花魁は彼女を探してやって来た家臣に身請けの金を支払わせたが、「一度家から出た女が戻る事はない」と城に戻る事は拒否し、晴れてイワシ売りの夫婦となり、皆も巻き込んで売り声の練習をするのだった。

 一行で。
 イワシ売りが、身分違いの花魁に一目惚れしたが、花魁の方もイワシ売りの声に惚れて城から抜け出て売られた姫という過去があり、相思相愛であった事が分かり、結ばれ、めでたしめでたし。

 これ人情話系の落語に翻案出来そうな話だとは思ったが、三島由紀夫作品というのは、権利の管理団体が三文オペラでやらかしている感じだな。
 コメディである事は分かるが、声を上げて笑う程ではなかった。
 くすぐりのポイントが、割と滑稽な動きや声みたいなところだったりするので、落語の言葉によるそれよりも笑い難い。

 観ていて思ったが、時代劇とかで女キャラが「あーれーー」という叫び声を上げるところ、これ、歌舞伎由来か、実は。
 あと、禿(かぶろ)が「あーいー」という声を上げる部分も、どこかで何となく聞き覚えがあったが、確かに歌舞伎的だったか。
 禿役は子役のようで、幼女だと認識していたのだが、よく考えると歌舞伎だからあれ、男児だったな。ありゃ何の見分けも付かないな。
 隈取りをしているキャラクタは、蛍火の家臣だけで、しかもかなりあっさり目だったが、どういうルールだろう。調べてみると、むきみ隈という、若く元気なキャラの記号っぽい。他のキャラは町人ばかりだから隈取りが発生しないということか。

 何かの加減でまた観る事があるかも知れないが、それなら生のものを観た方が発展性がありそうな気はするな。

<出費>
入場料:2,2000円(シネマ歌舞伎)
交通費:420円(琴似――札幌 :JR北海道バス)
計:2,620円


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