思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2021/7/31『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第147回 BA:ふらの方面

 オリンピックに合わせて、新型コロナの感染者の増加の話が出ている。
 ピーク時と同じぐらいに盛り返しているようだが、北海道の揺り戻しは僅かだ。
 今回の旅は、その話題が出る少し前、7月中旬の話である事を一応お断りしておく。

 北海道の初夏と言えば、富良野のラベンダーである。
 札幌市内も結構な数のラベンダーが植えられている。だからという事もないが、今まで富良野観光はした事がなかった。近場は行かない法則もそうだが、自動車が必要そうな印象もあったのだ。が、改めて調べると、ラベンダー畑駅で降りれば徒歩圏内でどうにかなりそうだった。
 シーズンは7月頃なので、大体その辺りにと考えていた。

 当日。
 ふらの・びえいきっぷでJR札幌駅から出発の特急に乗る。
 こいつは、旭川までの特急と、富良野周辺の普通列車に乗れる優れもの。旭川から富良野までは結構な料金がかかるので、これが最適解という感じ。
 席に座り、スマホでゲームなどやりつつ出発を待つ。
 待つ。
 待つ。
 車内放送がかかり「車両故障の為、当列車は運休となりました」。
 え。
 今日のところは勘弁しておいてやる。
 改札に戻って払い戻しをして貰った後、映画館でゴジラVSコングを観て帰った。地球空洞説はともかく、出入りの異世界っぽさの割に、放射熱線でも繋げられるのは何でじゃとか、敷島孫の扱いはモブと変わらないとか、あったが概ね楽しめた。

 別日、再挑戦。
 今回は出発した。
 やれやれ。
 運休が何度もあってたまるか。
 列車に揺られ、旭川に到着した。
 以前にも来た事があるが、木を使った駅舎だったっけ。そこは記憶が薄い。あのラーメン屋、他の駅でも見かけた気がするけど、どうだったろう。
 富良野方面の列車に乗り換える。
 ワンマン列車だが、車内での改札はなし。こういうのよくある。ワンマン車両の料金支払い機が使われているのを見た事がない。
 列車に揺られ進む。
 結構な距離を進んでいる感じだ。
 速度はゆっくりめか?
 ラベンダーは目に付かないが、田園風景が広々と続く。早苗は刈り入れ時なのか、美しく黄金色になっているところもある。低い山というか丘というかが手に届きそう。
 乗車すること暫し。
 ようやく到着した。

 駅前はオシャレ感がある。
 駅舎も石造りだ。
 街並みも、積み木の家みたいにとんがり屋根で統一された表面をしている。
 バス停に行くと、すぐにバスが到着した。
 バスは町内を抜けて、郊外に出る。
 広々した田園風景と、遠くに低い山というか森というか。
 北海道らしいと風景だ。
 札幌近辺でも見れない事はないけども。
 同じ停留所名の番地違いがしばらく続いてから、森の中の道に入る。
 調べた時に見かけていた道の駅があって、それから、一つ二つ停留所を挟んでから、目的地に到着した。
 停留所は無愛想なサインが立っているだけで、シェルターもベンチもない。
 観光で来る人が前提で、普段使いする人がいないだろうから仕方ないか。
 バス停から駐車場が見える。駐車場を横切る横断歩道があって、階段があり、上がると木々の間から、

 青い池だ!

 え? 富良野?
 美瑛ですが何か。

 いや、富良野のラベンダーファームは行こうと思っているけれど、美瑛の青い池も見てみたかったのだ。
 そして、青い池はバスの本数がかなり限られている上に、現地で時間を潰せるとは思えなかったので、朝イチ混雑前に見に行くルートにしていたのだ。
 最初の特急の運休で取りやめたのは、それを逃すと2時間ぐらい開いてしまい、予定がメチャメチャになってしまうからだったのだ。

 さて。
 池のほとりに行こう。ほとりって、畔って書くけど、全然ピンと来ないな。字面が全然ピンと来ない。湖畔で「はん」読みのイメージが強すぎるのかも知れない。同じように字面と合致しないのは、「美味しい」である。こんなにトゲトゲした文字は、口に入れるものには向かない。口内炎になる。「おいしい」こちらの丸っこさこそが、合う。
 美味という言葉は、多分に芸術寄りであって、日常の雑音をも内包した感情であるところの「おいしい」よりも遙かに研ぎ澄まされた言葉だと思う。何となく近い意味合いだから当ててしまったような当て字感、不自然さがあって好きになれない。「旨い」は良い。これは肉感を伴う。こういう違和感は無駄だが、物書きには多分不可欠なものである。

 ……順路は、ぐるりと回り込むのか。それほどの距離ではないが、真っ直ぐにほとりには行けないんだな。
 あ、土産物屋兼アイスクリームスタンドみたのがある。
 青い池にちなんだ青い饅頭とかだな。
 青が食欲減退という説があるが、言う程かな。
 元々青くないものの場合は気持ち悪いかも知れないが、ブルーベリーみたいな紫寄りのものは、十分おいしそうで、その流れかスイーツ系とか、冷ためなものとかは大丈夫な感じ。ああ、青い麺はちょっとか? でも、緑の茶そばとかはそこまで駄目感ないしな。

 順路通りに進むと、今度こそ池のほとりに来た。
 急角度になっていて、水に触れるところまでは降りられない。全てではないが、所々に落ちないように手すりがある。
 池は、青い水をたたえ、白い枯れ木が飛び出ている。
 この青は、水の成分に由来していて、南国の海の青とは仕組みが異なる。
 この池は、1988年の十勝岳の噴火後の洪水を防ぐ為に作られた堰堤で出来たもので、とあるカメラマンが青い池になっているのに気づき広めたとかで、自然物っぽい観光名所としては異様に歴史が浅い。
 青い水面に立ち枯れた白い木が飛び出した様子は、異様でありつつも一種の美しさを持っている。

 ふむ、青い。
 確かに青いが。
 なんか水に濁り感があって、写真で見るような真っ青な感は薄い。
 沖縄の空を撮った時に、目で見たよりもずっと鮮やかな青になっていた事があったが、そういう写真特有のクセかも知れないな。
 とは言え、それもまた持ち味なんだろう。
 幻想的な光景である。

 よし、見た。
 帰ろう。

 ……いつものヤツだ。

 いや、周りが森なので、バス一つ後にして2時間潰すっていうのは本当に辛そうだし。
 9:30ぐらいに到着して、帰りのバスが10:20ぐらいなので、それまで道を行ったり来たりした。
 車道沿いに苔の生えた土の道っぽい歩道が出来上がっていて、山歩き感は――うわ、なんかにょろっとしたものいた。蛇……の小さいののような、ミミズのでかいののような。蛇にしては横動きが少なかった気はするけど、じっくりは見てないので分からない。

 バス停は、路側帯しかない道なので、歩道のある反対側でしばらく待った。
 他にも何人かバス待ちの人もいたが、凄く事故になりそうな場所だな。
 後、クマの怖さもあるよな、ここ。ゲートなどはないが、夜の池はあまり見ようと思わない方が良い。

 11時前に美瑛駅に戻って来た。
 次はラベンダーを見に行く予定だが、列車が12時9分発の富良野行きしかない。
 本数少ないな。
 まあまとまった良い時間だし、ここで昼食にしよう。
 駅周辺を見たところ、平日のせいか開いている店も少なそうだったので、目に付いた蕎麦屋に入った。

 蕎麦屋に入ると、テーブル席に案内された。
 やれやれ、暑かったせいか疲れた感がある。
 注文について説明がなかったけど、タッチパネルがあるからこれで頼めという事だな。
 蕎麦屋というより、居酒屋兼用みたいだ。
 特天ざると、オールフリーを選んで発注。
 操作していたら、iPadのトップ画面らしきものになった。こういう操作はできないようにしとくものではないか。一瞬焦ったが、中のメニュー用っぽいアイコンをおしたら戻った。

 オールフリーで喉を潤してから、天ざるが来た。
 エビでかいな。
 まあ、美瑛って内陸なんだけどもね。
 流通が発達してきてはいるから、それはそれか。
 ふむ、天ぷら、サクサクしている。
 ちゃんとした天ぷらを食べるのは久し振りだ。
 前はいつだ?
 札幌駅の駅ビルに入っているハゲ天か。
 天ぷらって総菜類では食べるが、揚げたてのきちんとした天ぷらはほとんど食べてないんだな。
 ふむふむ、なかなかおいしい。
 ざるそばのつゆに油が浮くのはちょっと嫌なので、天つゆが他に欲しくなるが、天ざるはそういうものなのでまあ。衣がぶよぶよになって、油の膜が出来る温かい天ぷら蕎麦よりはマシ。好みの問題なのは分かった上での事よ?
 エビプリプリ……というか、固いとも言う。
 ホタテ、ナス、穴子? レンコン、と。
 撮影しとけば良かったか。
 でもまあ、蕎麦だしな。

 蕎麦を目の前にして悠長に写真を撮るのは、江戸っ子の最も嫌うところだ。
 当世はやりの天ぷら蕎麦を食わせる店に来て、モタモタ写真を撮っている部下に対し、長谷川平蔵が、
「忠吾(うさぎ)よ、蕎麦食いのいんすた(おつとめ)は食い終わりの器を上げるものだ」
 と叱ったシーンがあるが、正しくその通りだと思う。
 うろおぼえだから、どこか違うかも知れない。

 蕎麦は引っかかるところは何もない。多分うまい部類。
 後はそば湯でおしまい。
 「あれぇー? 開店から間がないのにそば湯が」とか無粋な事は言わない。
 むしろ、それでも出すサービス精神を大事にしたい派。

 しかし他の客いないな。
 曜日と時間と時期と、色々あるんだろうけど。
 でもそれにしては、バイトの数が多すぎる。
 とすると、時間によってはもっと来るのかな。
 支払いをして店を出た。2500円ぐらい。そこそこ豪華な天ぷらだったし、観光地価格乗ってるとすると、まあこんなところだろう。いや、安いとまでは言わないが。

 列車が来るまで少々あったので、駅前通りを横切って、橋の方まで行って戻った。
 途中、銭湯があったが、看板の「ゆ」の文字は、最初の一瞬以外はずっと何の文字だか分からない謎の構造だった。

 美瑛駅に戻り、列車を待って乗り込む。
 乗車中寝落ちし、気が付くとラベンダー畑駅を通り過ぎていたので、富良野で降りる。
 ひとまず改札を出る。
 この辺でもラベンダーの一つも見られるだろう。
 と、駅から出ると。

「へその町ふらの」

 あー、そっち推しか。
 確か日本のんびり旅行でもへその町ってのは見た覚えがあるなぁ。あのシリーズ、小学生の頃に図書館で読みあさった覚えがある。漫画のお陰か旅行への没頭感があった。のんちゃんとせかちゃんの旅行費用については結構謎で、途中で「5000円」を親にねだる手紙を書くシーンがあったが、それは流石に足りな過ぎるだろうと心配したものだ。或いは、交通費と宿代は親が振り込みかなんかしていて、あれは本当に単なる小遣いだったのかも知れないが。

 一応補足しておくと、北海道の位置的な中心にあるのが富良野なので「へその町」という事。その他、沖縄を除く日本のへそが渋川市、緯度経度でみたいなのが西脇市。
 へそ祭も名物になっていて、駅の前にも、祭の時に演じられるへそダンサーを模した人形が立っている。
 ラベンダーでオシャレなイメージを期待していたら、完全にぶちこわされるデザインだ。
 大体、このへそ踊り人形、乳部分は作られているが、腕は腹の横から生えてるな。へそ踊りでは、腕パーツもくっつけるのか? 調べたところ、腕が付くタイプもあった。なるほど。

 少し待ってから折り返しの列車が来たが、ラベンダー畑通過だとか。
 ならまあいいやと乗り込む。
 車窓から、ラベンダー畑駅周辺のラベンダー畑が目に入る。
 色の付いた部分と、文字にしたラベンダー。
 あー、このノリのものは別に良いかな。
 観光地化され過ぎだ。

 その後、旭川まで戻り、特急カムイで帰った。ほとんどが自由席の列車で、隣りに人が座る程度には混雑していた。
 指定席が普通列車でも見かけるUシート扱いだったから、本当に特急なのか疑問があるが。

<出費>
交通費: 500円(琴似―250―札幌:JR)
交通費:7400円(ふらの・びえいきっぷ:JR)
交通費:1100円(美瑛―550―白金青い池:道北バス)
食費 :2500円(特天ざる:そば天):
計:11,500円


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