思い立ったが随筆


 日々思う由無事を書き連ねています。



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2021/9/30『思えば遠くへ来た……のかなぁ』第149回 臀部を揺らして女王が踊る:網走監獄


 新型コロナの新規感染者数が急激に減少した。
 調査してない系陰謀論とかもあるが、なんやかんや言って、かかりそうな行動をしている人はかかって、そうでない人もワクチンが行き渡り始めたからと考えるのが順当だろう。
 完全に安心とまでは言えないが、マスクを外して密な場所で人と過ごすという辺りをポイントで避けて行けばまあまあ安心な部類だろう。そこから先は、宣言があるからないからというより、感染者数を見ながら自分で調整するべきだ。

 で、こういう流れもあろうかと、網走行きの航空券を買ってあった。
 こういうローカル路線はなかなかLCCの参入がなく基本は高いのだが、8月頃に超早割で注文したので、割引無しで片道25000円ぐらいするところ、8000円だった。尚、キャンセルの可能性が高かったので、帰りは鉄道想定で予約しなかった。

 という事で、行くぜ、網走。
 日帰りで!

 宿泊しないのかと思うかも知れないが、札幌在住で片道をショートカットすると、結構日帰り出来るのだ。これが地元の強みである。

 尚、「道内なら日帰り出来て当たり前じゃん」と思う人。
 お前は分かってない。
 お前のようなヤツは、一日散歩きっぷの圏内だからと言って、富良野とのぼりべつクマ牧場と旭山動物園をハシゴしようと思って、最初の苫小牧辺りでうんざりして、特急切符を買う羽目になってしまえ(残酷過ぎる呪詛)。

 基本的には無駄で馬鹿な事をやっているので、そう認識して読む事。


 朝、7時35分発の飛行機に合わせ、6時ぐらいのJRに乗る。
 新千歳空港に到着。
 勝手知ったる空港のカウンター階まで上がると、丁度のタイミングなのか、スタッフが挨拶の一礼をしていた。始発だとそういうのやってるんだな。
 外で何かをするというタイミングでもないし、あまり混雑されても嫌なので、保安検査場を通る。

 出発ロビーで割と長めに歩いて、女満別空港行きの乗り場に到着。
 女満別ってめまんべつって読み方なのか、と再認識した。なんでだかぬまんべつって思ってて、変換出来ないと思ってた。耳で聞いただけだと結構間違えるのだ。
 ロビー待合のコンセント付きのカウンターで時間まで、スマホのゲームなどしつつ時間を潰す。
 時間になり、優先搭乗の案内があって、先の搭乗呼び出しがあって、その後順番になった。グループは4だったが、小さいからそこまで細かく分けなかったようだ。
 飛行機に乗り込む。道内線だからプロペラ機かと思ったら、ジェット機だった。丘珠がプロペラ機とか分かれてるのかな。滑走路の長さとか違いそうだし。と、調べてみたら、一応丘珠も不定期なジェット機の発着はあるらしい。
 時期のものか、この行き先だからか、乗客は少ない。前後には客がいるが、横は空いていて、隣の列も空いている。
 飛行機は滑走路に出て、出発の加速が始まる。何となく、大きい旅客機よりも勢いがある感じ。気のせいかも知れないけど。
 かなり急な角度で上昇して、雲を抜けた。
 いきなり青空になる程ではないが、やはり雲の上は晴れ気味だな。
 機内モードにしたスマホで、漫画『ねこようかい』を読む。
 これは妖怪を擬人化ならぬ擬猫化した4コマ漫画で、まんがタイムだかライフだかそっち系に掲載されていたもの。ろくろ首がクビを伸ばして猫缶を盗み食いしたり、飼い主に巻き付いてゴロゴロ言ったりするような話。ねこようかい達が大体例外なく飼い主を好きすぎるのでほっこりする。猫のあるべき描き方に関する趣味が一致している感じ。

 動物の漫画的デフォルメは、
1.人間の顔をはめ込んだような流れ星銀タイプ
2.目や口で笑顔が作れるチーズ・スイートホームタイプ
3.動物的無表情を点目などの漫画の記号表現するタイプ
 がある。
 ちなみに、動物のお医者さんはリアル寄りの絵に書き文字で感情表現しているタイプで、写実ではないが一応デフォルメ枠に入らない。武者小路実篤のカボチャ級。
 ピーナッツのスヌーピーは、2の事もあるが、基本的には3に属する。人間達も同じ目鼻で表現されているが、明らかに表情の使用量に差がある。似た表情タイプはマーシーとシュローダー辺りで、彼らはキャラクタとしてもちょっと感情表現が独特な変わり者枠になっているので、意図的なものだろう。
 キティさんなんかは、ピーナッツをオマージュしたものだから、3と解釈すべき。アニメで口やニコ目表現はあったが、あれはアニメという表現方法の必要悪だろう。尚、これを排除したアニメを知っているが、特定作品の批判みたいになるので、一応伏せておく。全く動かない横顔(しかも形がなんか変)で数分の長台詞って一体なんなの? 音楽で金を使ったとか言うなら、ラジオドラマで良くない?
 で、自分としては3が好きで、ねこようかいの解釈も基本的に3で行われているから、猫感が良い。
 ただ、1ページ1本というエコでないデザインをしているので、コスパは大変悪い。

 ぼちぼち着陸態勢になった。
 7時35分発の8時20分着で、離着陸の分は長距離のものとそんなに変わらないとすると、本当に短い。
 だんだん地上が近づいてくる。道のない森が広がる。あそこに一人残されたらやっぱり生き残れない気がするな。徐々に畑が増えて来た。
 高度が下がるが、人家も結構ある。大丈夫かな、という低さになってようやく滑走路が見えた。
 大都市の空港は海上だし、新千歳は森の中だから、案外見慣れない光景だったな。

 到着ロビーから外に出る。
 連絡バスが出る筈と探すと、すぐのところに乗り場があった。サイズが根本的に小さい。
 バス用の切符売り場があったので買おうとするが、網走ターミナルのボタンが他と違い過ぎて目に付かず迷う。手前で降りるつもりだが、発車間近のようだし、後にも人がいそうだしで、結局終点920円のものを買う。
 外に出ると、目当てのバスは停車中だったので、そのまま乗り込んだ。全然客が乗り込まないまま、出発。マイカー文化圏だよな。北海道は。
 バスは森を抜けてからちょっとした市街へ、それから湖畔にさしかかる。目的地の網走監獄の最寄りはもうそろそろ。料金表示が700円台だな。思ったより損した感じだが、まあ折り返すより安いし時間も丁度良いので、気にするほどでもない。
 天都山停留所到着。

 少し戻ってから山方向に行くんだな。
 と、交差点ぐらいの位置に来たら、車道が区切られて渡れなくなっていた。手前で渡っておくべきだったか。
 遠回りして道を渡ってから、その先の線路を渡る。網走監獄や流氷館の案内表示が出に従い、山方向の上り坂へ。網走監獄以外はお休み。
 グーグルマップで調べた感じと大体印象は近い。まあ山や森に半分突っ込んだ道だな。
 進むうち、ぐいと道の先が曲がるところでぱっと網走監獄が見えて来た。
 ふむふむ、分かりやすいな。

 レンガのイメージの入り口から駐車場の脇を抜けて入り口のチケット売り場へ。
 ネット割引を使おうと思ってチケット売り場に行ったら、ノーチェックで割り引きしていた。割とそういうとこあるよな、ネット割引って。しっかり用意して行ったけど、駅にご自由にお取り下さいになってる感じ。
 では中へ。

 まずは庭園になっていて、いくつかかつての監獄を模したり実物だったりの建物が建っている。
 正面にはレンガの壁に門がついていて、警備の人が一人。あ、ん? これ、人形か? マスクがかけられているので、結局よく分からなかったが、多分人形。実際、衣類に覆われると人形って人間と区別付かないよな。これにマスクをかけたら本当分からない。当たり前と言えばそうだけど、これはつまり、我々は既に衣類を人間の身体の一部と認識しているって事なんだよ。

 正門をくぐると、建物が一つある。管理の為の庁舎のようなもののようだ。中は吹き抜けで軽食の食堂と、半分は北海道の労役に当たった囚人の歴史のパネル。
 なるほど、網走開拓の先遣隊としての意味合いもあったのか。
 昔、小学校か中学校の社会で「屯田兵は囚人の集まりで、死んでもそのまま埋められた鎖塚がある」という風に聞かされた覚えがあった。その後、屯田兵の資料館で屯田兵は武士を中心とした開拓者兼防人であるという資料を見て「囚人労働はなかったのか」と混乱したが、そうか、別々に実在したという事か。多分これあの時の教師がごっちゃにしていたか、軍事的な事を嫌うタイプだったか、だな。

 じゃ、実際の監獄を見るべし。
 上がっていくと、中央の建物に放射状にくっつく棟が並ぶ網走監獄があった。
 これは確かに「刑務所造り」と揶揄される北大惠迪寮と同じだ。
 惠迪寮は4階立てぐらいだったと思うが、網走監獄は平屋なんだな。
 床は煉瓦敷きだが、復刻版なのでかなりキレイだ。
 いくつかの資料展示があってから、監獄の並ぶ廊下を歩く。思ったよりもずっと幅広の通路だ。あまり狭いと向かいの囚人同士でコミュニケートが取れてしまうからか。斜め格子なので、向かい合わせの部屋の開いては見えないが、廊下を歩く獄吏には部屋の中が見える構造。ただ、ドアの裏側はあんまり見えにくいので、そこにしゃがんでおびき寄せる手は有効だったかも知れない。
 ああ、脱走しようとして壁に登っている囚人のマネキンがある。白石じゃないヤツ。あれは架空の人物だ。
 他にも、室内で労務をしている囚人や、懲罰で正座させられている囚人なんかも展示されている。
 相部屋はガラス窓で仕切られたトイレがあるが、兇器にならないのかな。まあ、もしもガラスを壊したら他の囚人が困るだろうから、相互監視はされていたのか。
 別の棟は一人部屋で集められている。なるほど、部屋の広さで勘違いしたが、一人部屋の方が扱いが良いのか。獄吏からも見えにくいくさび形格子だそうな。
 寒さをしのぐ暖房は、廊下の真ん中にストーブを置く構造になっているが、一つのストーブから煙突で熱を引っ張っているだけ。手をかざせばともかく、この幅広い廊下にこの程度の熱源では監獄の中まで温まらんだろ。

 監獄を一通り見た後、他の展示も見る。
 なんかカラフルなものが見える。子供向け遊具のようなと思って近づいたら――農作業をする囚人の図でした。
 オレンジ色で派手だから、遊具に見えたのか。

 更に、農場の名の付いた、農作業用の監獄が建っていた。
 これは本来の場所から移設したという認識で良いのかな。ちょっと分からないが、農場らしい面積のある場所がないから多分移設だろう。
 さっきの監獄と違って、食事や仕事の場としても作られているのが分かる。思い返せば、さっきの監獄は部屋と見張りの詰め所以外何もなかったな。

 順路が分からなくなって来たので、場当たりにぶらぶら歩き、資料展示してある建物に入る。ああ、色々監獄関係の小物類。中央の吹き抜けで開拓作業のイメージ映像が流れていた。四方に映像が流れ、VR的な効果を狙ったっぽいが、遮光がされていないので映像が薄くて没入感は特になかった。
 ここには、今の網走刑務所の部屋の見本もあった。監獄と比べてやたら生活感がある内装だったが、結構私物を持っていられるって事か。

 ここらで11時を回ったぐらい。
 網走駅まで4キロだかある目安で、施設まで来るバスが休止中なので、徒歩だと1時間かもう少し早いか。12時35分発の列車を考えると、今からなら間に合うかな、と思いつつ、有料区域から出る。
 土産物屋をちらりと覗いたが、特にめぼしいものはなしで、最初に通ったチケット売り場を通過して、と、視界に「監獄食堂」の文字が入った。
 あ、こんなところにレストランあった。
 ネットとかでよく流れている刑務所の食事が食べられる場所ってのが、こういうとこだな。
 でも新型コロナで休みだったり……は、しないやってる。
 まあ、列車ずらしてもいいや。こういうところは入っておこう。

 中に入ると、小綺麗でログハウス風の高い天井。
 食券の自動販売機で、監獄定食の秋刀魚の塩焼きが主菜のを購入。900円。割と良い値段するが、コラボカフェみたいなもんだと思えば、充分良心的な値段だ。ゴールデンカムイコラボだったら、リスの脳がついて3000円になりそう。
 カウンターに食券を出すのかと思ったら、オーダーは通っているから席で待ってて、との事。
 そういうものらしいな。にしても、結構小綺麗だな。やはり日本でも有数の観光地だろうし、本来金回りも良いんだろう。
 待つ事暫し。
 食券番号で呼ばれ、定食を受け取る。別に監獄風に呼ぶって意味ではない。

 お盆に、給食で見たような樹脂の椀などが並ぶ。端が切りっぱなしのようなとんがった感じがある器だ。盆に結構ぎっしり入っていて窮屈そう。
 大麦の混ざったごはんに、大根? の味噌汁、外側の赤いハムが入った春雨サラダ、ほぼ切り干し大根だけの切り干し大根煮、それから頭を落とした秋刀魚の塩焼きに大根おろし付き。
 狭い盆だがテーブルに置きたくないな。でもそうすると、秋刀魚の扱いが少々難しい。手拭きがないから、ちょっとつまむというのを出来ればしたくない。
 ともかくも食べよう。
 味噌汁に、ふむ、春雨、うん。切り干し大根はめんみか何かで味付けた感じかな。秋刀魚はきちんと焼きたて感があって、骨はある。久し振りだな、焼いた秋刀魚。ご飯は麦が入っているが、いつもビタバァレーを入れているから、さほどの違和感はない。
 うん、とびきりうまい訳ではないが、普通にうまい。野菜の分量は物足りないが、ちゃんとした食事感はある。実際の刑務所と同じ物というが、ご飯の量は少ないかも知れない。
 よし喰った。年齢的な事もあって、大体満足した。
 下膳スペースまで持っていって、食堂を出た。

 じゃ、網走駅へ向かおう。
 坂を下りバス停まで戻って来た。
 あれ、あるな、バス。
 行きは見飛ばしていたけど、丁度間に合いそうな時間にある。
 良かった。長々歩かずに済む。
 空港の連絡バスだから、飛行機の具合で遅れる事もあるようだが、まあそれはその時で。
 待つ、待つ、待つ。
 予定を10分も過ぎてるが。
 12時過ぎた。歩いた方が早いか? いやいや、そういうものでもないんだ。
 と、やや焦りが出たぐらいの時に、やっとバスが来た。
 乗り込んで、少しスマホをいじっているぐらいの間に網走駅に到着した。
 思ったより近かったな。本当に歩ける程度の距離だったかな。

 網走駅は、山沿いにあるこぢんまりとした駅だった。
 こんなに小さい駅なのか。臨時改札口はあるし、駅前にホテルは多いから、スキー時期だか流氷時期だかには混雑していたのかも知れないけど。
 駅に入ると、かに飯を売っている弁当屋とレストランはあるが、売店らしい売店はない。
 おやつなり土産物屋なりを覗きたかったんだがなあ。
 ともかくも券売機で帰りの切符を買う。自動券売機だと、クレカ限定だったが、そこにさしたる抵抗はなし。
 ほんの少し周りを見るうちに、特急がやって来た。
 よし、12時35分の乗車に成功。

 こうして、いかにも北海道な風景を見たり、漫画『大家さんは思春期』を読んだり、居眠りしたりしながら帰った。チエちゃんのなろう的オレTUEEE感が増している。ぼちぼち「オレなんかまたやっちゃいました?」では済まないのではないか。ひょっとすると、それを自覚して覚醒してしまったのが母親なのかも知れない。
 その後、旭川で乗り換え、札幌で乗り換え。
 旭川からの特急の静かさに驚く。
 車両のせいか線路のせいか。

<出費>
交通費:1,310円(琴似――新千歳空港:JR 交通費:8,370円(新千歳空港――女満別:JAL) 交通費:920円(女満別――天都山:網走バス) 入場料:990円(網走監獄) 昼食 :900円(監獄定食A) 交通費:180円(天都山――網走駅:網走バス) 交通費:10,540円(網走―旭川―琴似:JR 特急大雪、ライラック) 計  :23,210円

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